ごらんの写真、きのうご紹介した会津山義さんの手がけた家。
導かれるままに足を踏み込んでみた和室の様子です。
床の間、書院といった随所に見どころもあります。
しかし、なんといっても、左側の拡大写真の建具・障子の仕事にうっとり。
紙を貼った部分は、雪見障子になっていて上下開閉もするのですが、
葦のような細かく繊細な自然素材を編んで(!)、
目透かしの軽快感を表現しています。
繊維の一本一本を束ねて、ひもで刺し貫いているんですね。
それを障子の杉の桟の枠に丹念にはめ込んである、という仕事です。
ときどき、古民家の上級のもの、たとえば大名屋敷とか、
貴族の家とかでは、こういう造作を目にすることがありますが、
まさか、こんにち一般に流通している一般民家で
こういう造作仕事に出会うということは想定していませんでした。
まず、第一印象として、その仕事ぶりにまさに脱帽。
それから、こういう仕事を、手業を、きちんと継承してきているという
地域の文化性に対して、敬意の念を抱きました。
そして、こういう仕事を組み込んで、なお、一般住宅のコスト範囲に
納めているということにも、驚愕いたしました。
こういう仕事を見れば、それでもローコスト住宅屋さんの
大量生産品の寄せ集め住宅を選択するっていうことは考えられない。
って、心底思ってしまうのは、わたしひとりでしょうか。
こういう素材と手業で形作られている住宅って、
おのずと、雰囲気が違います。
ようするに、たたずまい、っていうような凛とした空間美があるんですね。
自然と対話するような暮らしに大きな価値観を
認識してきた日本の住宅らしい、空間構成デザインなのだと思います。
こういうデザインが、いまの多くのユーザーに伝わっていくのは
けっこう、やはりたいへんであるかも知れません。
こういう空間の、癒しの力というのは、
その空間に、まどろみ、たたずんで、無に近い時間の経過という
プロセスを経て、初めて伝わってくるような部分なのだと思うのです。
残念ながら、希有な施主さんしか、こういう空間教育を
認識しているとは言えないのが現実です。
しかし、やはりこうして現実に存在しているわけですから、
こういう実物、現物での現実伝播力のようなものもまた、期待できるのかも知れません。
会津の地域文化の奥深い部分の一端を
かいま見せてもらったような気分がして、
すごく満ち足りた気分で、いっときの時間を過ごさせてもらいました。