さて、きのうの続きであります。
東日本大震災からの住宅復興は、いよいよステージが住宅建設段階。
津波被害の甚大さから、建築用地の整備が遅れ続けてきた。
ようやく、その状況にメドがついてきて、
仮設住宅から、そろそろ新築したり、災害公営住宅への移行を
本格的に考えはじめたところなのです。
もちろん、これまでにも自力で用地を確保し、自力再建された方も多いのですが
多くのみなさんは、公的な用地整備の進捗を待ってきた。
そういった段階で、さて、建築設計のプロたちは、
どのようにこうしたユーザーニーズに「寄り添った」提案ができるのか、
そういったことが問われていると言えるのでしょう。
より具体的な、「シアワセな暮らしのかたち」が求められているということ。
そんなテーマ意識の中で
JIA東北支部・宮城のメンバーの提案のなかから、
いくつかの設計プランに目が向かっていました。
「よく建売住宅のプランを相談される」という吉田裕一さんの
提案が、これです。コンセプトは
「住まい手の視点を重視したプラン設計。デザイン性にこだわらず、
限られた規模でも不便を感じることなく
使いやすさを追求した「住まう」ことのできる家」。
サブタイトルに「住まうという現実に寄り添った家」とあるけれど、
まさにそういった考え方に貫かれている。
それぞれはごく当たり前の生活上の使い勝手のことだけれど、
それらを透徹して見つめて、
限られたスペースの中に、上手に過不足なく落とし込むというのは
かんたんなプランニング作業とは絶対に言えない。
いわば生活合理性を突き詰めて、コンパクトに実現する、
そんな意識を感じさせてくれる、説得力のあるプランだと思いました。
そして震災以降のひとびとの欲求の根源に
こういった意識が芽生え、そしていま、
それが大きな流れになって来ているようにも感じています。
目を驚かすのがデザインではない。
ひとびとの暮らしの背景装置として、要所を押さえたプロとしての配慮。
そういったものこそが、真のデザインではないのだろうか
そんなふうな思いをしながら、この提案を見つめていました。