三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

融雪溝

2008年03月30日 06時30分08秒 | 住宅性能・設備

写真は今年度東北住宅大賞受賞の家。
秋田県湯沢市近郊に建つ古民家改修事例です。
周辺は秋田県でも有数の豪雪地帯。
毎年、建物が雪で長く覆われてしまう冬が暮らしを襲います。
ことしは小雪でしたが、とはいえ、周囲には雪に覆われた住宅も多かったとか。
そんななかで、この家では大きな傾斜屋根の落ちてくる
建物両端に、ごらんのような「融雪溝」を工夫してありました。
周辺では、屋根はどこの家でも雪を落としやすい切妻を採用。
道路に面した側は、雪を落とさないワケですが、
このように大屋根が降りてくる側は
どんどこと雪が屋根から供給されてきます。
それに対して、この地下水をくみ上げた融雪溝で雪を受け止め、
順次、融かしていくのですね。
手前側には下水への排水が工夫されていますので、
常時、少しずつ雪を梳かしていくようになっています。
話では聞いていましたが、同じ雪国人として、
大変親近感を感じるような光景です。
雪はもちろん氷点下の温度ですが、地下水はその土地の
年平均気温程度で安定している。
秋田だと、たぶん、10度以上だと思われます。
まぁ、低温水と呼べるような温度の水が地下から供給されるんですね。
あとは雪の降り方とのバランスの問題で、
経験的にこうした融雪溝の幅や、深さなどが工夫されるのでしょう。
今年の場合は、実にスムーズに雪が処理されていった、ということ。

こうした融雪の工夫は、利用土地が狭くなってきた都市部では
やはり少なくなってきていますね。
第一、都市部では「雪を落とす屋根」自体が少なくなってきていると思います。
北海道では無落雪屋根の需要が高く、
冬の間は、雪を載せたままにするほうが一般的。
そうしたなかで、わたしの事務所前の道路では
道路脇に「流雪溝」が公共によって設置されていて、
市民が自分たちで運んできた除雪の雪を
溝に投げ込んで融雪・流雪させています。
このような工夫も、日本旗側地帯で長い伝統を持っていたもの。
そうしたものがわたしたち、北海道に伝播してきたのですね。
そう考えたら、やっぱり秋田に北海道のマザーを感じる部分。
こういうの、ちょっと変な感覚なんですが、
同じ雪国で、しかもひとびとが色白。
そして雪国としての暮らしの経験値がある豊かさのレベルまで達している。
そんな思いがしてきます。
一度、秋田の女性3代を描いた絵を見たことがあります。
無心に遊ぶ少女、冬場の農作業をしながら気遣っている母。
その少女と会話しているような祖母、という構図。
背景は雪に閉ざされたようなくらい印象の室内。
というような情景でしたが、そんな光景が、
幼い頃に触れた母や、祖母の印象と深くシンクロして、
強い印象を抱いた次第。ある共感の思いが募ってきますね。
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