リキデンタルオフィス 医療関係者向けブログ

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昨今の歯科医療に思うところ

2020-12-06 08:19:14 | Weblog

先だって、使用している総義歯の安定が悪く、新製する必要があった患者に
総義歯を作成するため、前回筋圧形成後のチェックバイトを行っているときに、
突然患者から「保険の義歯ですよね?」と尋ねられた。 
もちろんそのつもりで作成していたのだが、なぜそのようなことを尋ねるのか問うてみると、
以前他院で保険義歯と自費義歯の説明をうけ、適合精度と製作過程の違いによる費用の差が
あったため、費用の面で保険で義歯作成をおこなったらしい。
当院では保険診療で義歯を作製すると初診時に話をしていたのに、
当院の行う製作過程から高額な費用がいるのではと不安になったとのこと。。。

通常、総義歯治療を行う時は、個人トレーの作成、個人トレーにて筋圧形成を行い
無圧印象により作業用模型にて咬合床作成、咬合採得(必要に応じてGOAなどの
顎機能を採得)、試適(必要に応じてリマウント)、完成義歯装着、というステップが
普通である。これは大学で教わった基本中の基本の手技であり、また全ての内容が
保険診療における算定できる項目である。巷ではこのステップが、簡略化されたものが
保険で、精密な作業行程を行うものが保険外診療とされていることが多いみたいだ。。。
精密な作業をしなければならないから、手間暇・時間がかかるから
「この治療は保険外診療」というのはいかがなものだろう。
総義歯治療だけでなく、修復・補綴治療、欠損補綴治療において保険または保険外の
内容というものは使用する材質の違いであって、行う内容は殆ど同じである。
患者側の、歯科治療に対する思い入れ、こだわりで良質なものを求めるとき、
または保険適応外とされている治療を要する場合に自由診療を行うものである。
保険診療・自由診療どうこうという問題に関係なく、目の前の病態に真摯に向き合い、
結果、最終的な修復物補綴物を、何を選択するかは患者の意思を尊重するべきである。
本来の医療の姿はこうでなければならないのでは?
自分を大きく見せる宣伝や、ビジネス化したサービスに特化しても、
自分の技術を過信し高額な治療を患者に勧めて行っても、
メッキはすぐにはがれるものである。どんな些細な治療でも確実に結果をだすことにこだわること。
世間様にアピールするならこっちの方が大事であろう。
誤解しないでほしいことは保険診療にするべきということを述べているわけではない。
医療を行う者のフィロソフィー、医療人としての姿勢を我々は見つめ直すべきであろう。

保険診療を丁寧に行えなければ、まともな自費診療は行えるわけがない。
これは私の確固たる信念だ。