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私の日常臨床 Vol,54

2021-11-09 08:17:58 | Weblog

気が付けばもう11月 
今回はいつものように当院の臨床症例を提示しよう。

症例は初診時22歳女性 
主訴は、他院で歯冠崩壊した左上7とその後ろの智歯を抜歯して
7部にインプラント治療を提案されたが、何か納得ができなく、
当院ならどうしますか、ということ。

口腔内を観察したところ、カリエスによるダメージを受けた歯が多くみられ
ハイジーンも悪い。確かに左上7の保存は厳しい。
抜歯してインプラントという治療も選択肢として有りと考えるが
その前に必要な最も重要な課題があると思う。
その課題をクリアーし基本治療を行い、欠損補綴を行うことを考えた場合、
私は年齢的にインプラント治療はあまり勧めたくない。
本人がインプラント治療を希望したとしても同じである。
せっかく智歯が残っているなら、これを活用する術を行うべきである。
この症例の場合、移植ではなくMTM(LOT)が良い。
この術式によって保険診療で審美的に行える補綴(CADCAM)の箇所が広がるメリットもある。

私のこの治療方針を話したところ、患者は当院での治療を希望したため処置を行った。
術前、術後の口腔内所見とレントゲンから、どこに何をやったかは分かると思う。

私はいつも言っていることだが、
欠損があればなんでもかんでもインプラントという考えは好きではない。
出来る限り患者に経済的負担をかけさせないで、快適な環境にすることが
我々の当たり前の責務と思っている。
また、欠損補綴を行う場合、患者の年代を考える必要はあり
伊藤雄策先生の提唱される「デンタルタイムライン」のことも考察すれば、
インプラント治療の適応性は慎重に判断するべきである。