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私の日常臨床 Vol.73

2024-09-23 07:42:48 | Weblog

症例は初診時76歳女性 主訴は差し歯がとれた。
所見としては左上3の補綴物がコアごと脱離している状態であった。
全体的な口腔内所見から左上3の問題は局所的な問題ではないと判断して
前医では1週間ほど前に治療が終わったとされていたが
全体的な基本治療と咬合治療が必要な状態であった。

本症例の課題としては、パノラマレントゲンからも分かるように
咬合力が強く、力のコントロールに十分に配慮しなければならない事例である。
上顎の欠損補綴治療を計画するとき、補綴設計は色々考えられると思う。
患者は部分義歯は避けたいらしい、しかし、保険治療ではブリッジができない歯式である。
患者側からは自費治療でもいいから最善と思われる方法を というが
インプラントは論外として、コーヌスは着脱を本人や家族ができるかが心配で勧めたくないし、
ブリッジを考えても、ジルコニアBrは私なりの理由があり選択肢としてはない。
結局、担当する技工士さんと討論を重ね、PMFブリッジにて補綴治療を行った。
このブリッジ設計において本来であれば、Key and Wayを付与することが望ましいが
あえてこれを付与しなかったことにも理由がある。
またこのような症例は、上下顎の安定した咬合を獲得するには、非常に難易度が高い。
治療後、患者さんから非常に高い満足を得られたが、
経過を注視しなければならない症例である。

所感としては、安易な思考のもとで咬合高径を挙げることや
強度ばかりに注目した補綴を行うことはリスクを必ず伴う。
この理由は初診時の口腔内をじっくりみれば理解できると思う。