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川村貞行先生の講演録(1981年)

2025-01-27 08:08:47 | Weblog

川村邦雄先生からとても大切な資料をいただいた。
川村貞行先生が1981年に行った講演会の録音資料を
田中文彦先生が忠実に文面化した冊子である。
冊子を拝読させていただくと、とても引き込まれる内容であった。
平生から私が考え、私自身が行っていたことが間違っていなかったことに、
私は非常に勇気をもらい、また
自分にまだ足りなかった心構えとフィロソフィーを知ることができた。

この冊子の中身は、哲学的、心理学的な内容というよりも、歯科医師としての美徳を諭す内容であるが
それだけでなく、ちょっとした史実も知ることができる。たとえば、
「インプラントはブローネマルクが世界で最初に実用化また論文としてあげた」
と云われているが、実はインプラントは古代から金やサファイヤなどを顎骨に埋め込むことがされおり、
またインプラントを臨床に用いたことを最初に論文として叙述していたのはWG,Bonwillだったことは、
多くの歯科医が知らなかったように(歯学史研究家・永田和弘先生引用)、
ポーセレン補綴も我々の多くは、通称PMFは1964年に桑田正博先生によって
日本で広められたものという認識であるが、
実はボストンで開業されていた真鍋先生が、1940年に日本戻られたときに
それ以前からアメリカで行っていたポーセレンによる補綴をすでに行っていたという。
その当時のポーセレンは単体であったが、真鍋先生のポーセレンの技術は高いものであったらしい。
昨今の多くの歯科医にとっては杞憂のことかもしれないが、少なくとも私にとっては
とても興味深い内容である。

なによりも川村貞行先生が述べる歯科医師としての在り方の話は、
1981年の講演でも、医療の本質については現在の我々に内省を起こさせるものである。
ふと思う、、、私の師匠である西川洋二の師匠・寿谷一の理論や哲学と同様に、
川村貞行先生の医療の核心をついた内容が、何故現在に至るまで
多くの歯科医師に周知されてこなかったか…
簡潔的にいえば資本主義経済の歯科医療界に阻碍されているからであろう。
他の職種で例えるなら、「無線送電」の仕組みを1890年代に研究開発し、
実際にシステムを作り上げ実用化をめざしたニコラ・テスラが、
資本主義権力によって闇に追いやられたようなものである。
権力基盤が瓦解されるようなものは封印される、いつの時代でもどんな職種でも同じである。

「職」とは何か、歯科医師としての活き方とは、
患者との関わりについて、治療に松竹梅のランクをつけて患者に選ばせる愚行、などなど
どれをとっても理路整然としている。
ちなみに「金儲けしたいなら歯科医より他の仕事をしろ」、この言葉を目にしたとき
私が昔からいつも皆に言っていることと全く同じことを述べてることに驚いた。
貞行先生の弟の川村泰雄先生が行っておられたホリスティックデンティストリーを学んだ歯科医は
何人か知っているが、この概念を忠実に遵守している歯科医はどれほどいるだろうか、、
生意気をいうようで申し訳なく思うが、私の知る限りではほぼいない… 

この冊子をいくら多くの歯科医が読んでも、「職業」としての歯科医師について
現代の歯科医が襟を正そうと実際行動に移すものは極めて少ないだろう。
理由は簡単である。結局のところ利潤に固執しているからだ。
しかし、心の片隅に置くだけでも、何かきっかけでその歯科医が変われることを願い
私はこの冊子の内容を要約して、また現在の歯科事情の問題提起を行ったスライドを作製した。
今年のPGI名古屋の月例会のどこかのタイミングで提示したい。



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