ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

バート・バカラックの音楽

2023年05月07日 | ミュージック

 バート・バカラックがこの2月に亡くなった。94歳だったというから大往生と言って良かったのではと思う。が、大好きだったフランシス・レイ、ミシェル・ルグランら往年の映画音楽作曲家がここ数年で次々亡くなってしまったのはとても残念である。レイの時もルグランの時も特にこのブログでは取り上げなかったのだが、今回はバカラックにちなんだ思い出を記したい。

 私にとってバカラックは前述の二人の作曲家と違う存在だった。好きだったバカラック・ソングを当初は彼の作曲だとは知らずにいたからである。中学生の時にFM放送で聴いて録音していたあるお気に入りの曲が、その筋に詳しい友人が「恋よ、さよなら」というタイトルだと教えてくれた。作曲家のことは知らないまま愛聴した。ヒット・チャートにランクインした「雨に濡れても」はB. J. トーマスという人の曲だと思いながらレコードを買った。もう1曲、やはりヒット・チャートで聴いた「サン・ホセへの道」も大好きでこちらもレコードを購入。私にとってこれはボサ・リオというグループの曲だった。

 だが、それらは全てバート・バカラックの音楽である。ついでに言うと、映画音楽の好きな私は映画「幸せはパリで」のテーマ曲「エイプリル・フール」(パーシーフェイス楽団)を当時のラジオで知り、特にカトリーヌ・ドヌーヴのセリフの入るサントラ音源が大好きでエアチェックした音源を何度も聴いたものだ。バカラックの作曲ということは随分後で知った。「遙かなる影(Close To You)」もカーペンターズのオリジナルだと思っていた。そして徐々にバート・バカラックの存在を知り、その偉大さを知ったのである。

 バカラック・ソングはお洒落な曲調が多いと思う。April Fools、This Guy's In Love With You、Alfie(これはシンガーRumerが2010年にリリースしたヴァージョンが絶品!)など好きな曲はたくさんあるが、中でも一番のお気に入りは A House Is Not A Homeである。本当に良い曲だと思う。最近はTHE SONGS OF BACHARACH & COSTELLOのCD2枚組ヴァージョンと「カジノ・ロワイアル」サントラ完全版を購入。後者にはThe Look of Loveが含まれているが、これも名曲中の名曲である。

 では、追悼の意味も込めて久しぶりにシングル盤に針を落としてみよう。

   

    

 ↑ 両シングルジャケット解説には作曲者バカラックのことはあまり触れられていない。

   

  ↑ 札幌の映画専門店で見つけた「幸せはパリで」アナログ盤サントラ。

   

  ↑ 意外と手元のバカラックCDは少なかった。


「ヨルガオ殺人事件」/アンソニー・ホロヴィッツ

2023年04月30日 | ミステリー小説

「ヨルガオ殺人事件/アンソニー・ホロヴィッツ」(山田 蘭・訳)創元推理文庫

 21年9月に文庫版で出版された本作品をようやく読んだ。一粒で3度おいしい、探偵小説としては極上の作品であった。

    

 ホロヴィッツの「カササギ殺人事件」は出版と同時に購入し、すぐに読み始めたものだが本作品については遅れを取ってしまった。スーザン・ライランドが主役の本シリーズは本格推理小説として読み応えがあると思っているが、もう一つ創元社から出版されている元刑事ホーソーンとアンソニー・ホロヴィッツが登場するシリーズ(「メインテーマは殺人」など)の方は自分の感性に合わず好き嫌いがはっきりしてしまった。そんな経緯で「ヨルガオ〜」も手にするのが遅くなってしまったのだが、もっと早くに読むべきであった。それほど面白い作品だった。

 冒頭でも言ったように、ひとつの作品だが3回の謎解きが楽しめる。前作同様、本編(現実世界)のストーリーの中に名探偵アティカス・ピントが登場する作中劇が盛り込まれ、それは本編と大きく関連性がある。しかし、独立した作品として読むこともでき、私はその作中劇の意外な犯人には衝撃を覚えた。

 また、この作中劇には冒頭のアティカス・ピント登場のシーンにおいて、宝石盗難事件のエピソードが語られるのだが、ちゃんとした長編小説にしても良いほどの不可能犯罪とそのトリック解明であった。

 ということで、本編と合わせて3つの謎解きが用意されている(帯には「謎解きが2度も味わえる」とあるが)。それが「一粒で3度おいしい」の意味である。ただひとつ難点を上げるなら、2つの作品がミックスされているため登場人物が多すぎて名前を覚えられないことである。(ただ、この名前にもトリックが隠されているのだが、、、。)

 ところで、前作「カササギ殺人事件」は6話のドラマ形式で映像化された。脚本にはアンソニー・ホロヴィッツ自身が関わっているという。WOWOWで見ることができ、私も視聴した。原作では劇中作が独立して語られていたが、この映像作品では本編と劇中作が交互に、時にはオーバーラップして進行する。その意味では原作を知っていてもストーリーに引き込まれた。そして、イギリスの風景や登場人物達のイメージがより明確になり、大変見応えのある作品だった。

    


札幌雪まつり開催!そしてエラリイ・クイーンのシリーズ物と言えば、…さらに一冊

2023年02月04日 | ミステリー小説

 まずは今日から「さっぽろ雪まつり」が開催。会場を設けての実施は3年ぶりとのことで札幌市中央区の大通公園とすすきのの2カ所で始まった。写真は大通り会場昨日の準備の模様。札幌駅から大通公園まで歩いてみたが、とてもたくさんの人が。今年は賑わいを見せてくれるだろう。

   

 さて、本日のお題。エラリイ・クイーンのシリーズ物と言えば、「国名シリーズ」と「ドルリー・レーン4部作」となるだろう。だが、実際にはもう一つのシリーズ物が存在する。それは架空の町ライツヴィルを舞台とした「ライツヴィル4部作」である。

 クイーン・ミステリが大好きな私も、このことを認識したのは最近のことである。それはハヤカワ文庫から越前敏弥氏による新訳版の作品が次々と刊行されているおかげだ。2014年の暮れに「災厄の町」が出て本ブログでも触れた(ここ)。その後「九尾の猫」(2015年、この作品はライツヴィルとは関係なし)、「フォックス家の殺人」(2020年)、「十日間の不思議」(2021年)、そして昨年2022年「ダブル・ダブル」と新訳が刊行され「災厄」「フォックス家」「十日間」「ダブル」の4作がライツヴィル作品となる。

    

 殺人事件を論理的に解決する「国名シリーズ」のパズル性と違って、「災厄の町」は人間ドラマが重視され、より「文学」的要素が加味されたとエラリイ・クイーン研究家飯城勇三氏はその解説で述べている。私は現在「ダブル・ダブル」のみ未読なのだが、確かに3作とも密室、首なし殺人、アリバイ・トリックなど本格推理ものでは定番の「謎」は登場せず、人物達の動きや言葉、環境などの描写に重きがなされている。その中でもスリルやサスペンスはあるし、最後に大逆転的構成も整えられているから、パズル的要素も皆無ではない。だが、明らかに国名シリーズとは趣が違う。そして、「十日間」は、いわゆる「後期クイーン的問題」が話題となった作品である。この言葉は聞いたことがあったが、どのような意味なのかはこの本の解説を読んでわかった次第である。これを詳しく論ずるのはネタバレ的になるので控えておくが、このような視点が生じることも後期のクイーン作品が従来とは違うことの証なのであろう。

 ということで、4部作最後の「ダブル・ダブル」を読むのが楽しみだ。その中、昨年12月にさらにハヤカワ文庫から「靴に住む老婆」(新訳版)が刊行された。これは、あかね書房少年少女世界推理文学全集No.8「エジプト十字架の秘密」の中で「十四のピストルのなぞ」という題名で併載された作品だ。はっきり言って内容はすっかり忘れている。従ってこちらも早く読みたい。飯城氏によると、この作品は「災厄の町」に続いての発表だったが、「ファンが期待する内容」、つまりパズル的作品に戻っているとのこと。たしかマザーグースが引き合いに出されていたはず。

   

 ちなみに、「災厄の町」は「配達されない三通の手紙」として79年に野村芳太郎監督により、舞台を日本に置き換えた設定で映画化されている。(松竹映画)

 

<追記>

 「ダブル・ダブル」読了。飯城勇三氏による解説を読んで知ったのだが、架空の町「ライツヴィル」はこの後刊行された「帝王死す」「最後の女」そしていくつかの短編作品にも登場するそうだ。従って「ライツヴィル4部作」という表現は間違いなのかも。未読なので断定できないが、ネットでの検索ではこれら6作をライツヴィル作品とされている向きもある。自ら確かめるためにも今後の新訳刊行に期待したい。


この期に及んでSONY WalkmanのNW-A55HNを購入:その2〜使い勝手はどうか?

2023年01月26日 | 音響製品

 さて、A55の使い勝手はどうか。55HNはノイズキャンセル機能付きハイレゾ対応専用ヘッドホン(イヤホン)が付属するタイプである。

 まずは良い点。

・タッチパネル。私のWalkmanとしては初めてだが反応は良い。今までは「戻す(back)」ボタンを繰り返し押す必要があったがタッチ式は手順が効率的で便利だ。(ただし、A16のようなボタン式は暗闇の中でも操作しやすいというメリットはあった。)

・音質処理。A16同様ノイズ除去性能を高めたフルデジタルアンプS-Master HXを載せ、「mp3やCD音源もハイレゾ相当にアップスケールする」DSEE HX機能も搭載。これはA16にも全く同じ機能があったのだが、音の良さはここにあるとも言えるほど大変重宝した。この機種では新たにAI技術を搭載しているそうだ。曲のタイプをAIが自動で判別し高音域の補完性能を向上させているとのこと。そして低域をアナログアンプのような特性に近づけるというDCフェーズリニアライザー機能、アナログレコードによる豊かな再生音を再現するバイナルプロセッサーなどが加わったが、これらについては今後検証していきたいが、多機能を使うほどバッテリーの消耗も大きいのではと懸念もする。

・AIFFファイルの再生。A16では再生できなかったが可能になっている。これも大変便利。

・microSDカードの使用。これもA16と同じだが、本器は内蔵16GBなのでカードの増設は特にハイレゾ・ファイル再生には必須だろう。今回はトランセンド製の128Gを別途購入したが問題なく使用できている。

・ノイズキャンセル機能。進化しているらしい。専用イヤホン付きを購入したので、早速JR列車で試してみた。列車の音がほとんど意識されず音楽に集中して聞くことができたのには驚いた。以前のウォークマンではここまでではなかった気がする。(このことを息子に伝えたら、知るの遅いね、と言われてしまった。今はこの程度は当たり前?)

 ついでにイヤホンについて言うと、本体と同色のこの専用イヤホンは低音から高音までしっかりカバーしている優れものと感じた。A16には自分好みのいろいろなものを探して使用していたが、ノイキャンのことも考えるとこれで決まりかなと思う。また、最近はBluetoothのコードレスイヤホンを使用している人をよく見かけるが、ラジオを聞くためにはイヤホンのコードがアンテナになる。従って有線のイヤホンは必須。何より、耳元にバッテリーがあるのはちょっと怖い気がするので私はもっぱら有線イヤホンを使っている。

 次にマイナス面。

・筐体。NW-505はスティックタイプ、NW-A16は薄型軽量で持ち運び易かったが、本器はさすがに大きめで重さも99g。それでもスマホよりははるかに小さいので許容範囲か。

・起動時間。A16はiPodと違って長いのが欠点だったがこの機種も電源OFF状態から再生画面表示まで28秒かかった。あまり改善されていない。ついでに言うと、電源オンには電源ボタンを4秒、オフのためには2秒長押しする。これは極めて不便。新しい機種では改善されているのだろうか。

 以上、思いつくだけの観点だが圧倒的にメリットの方が多い。元々私はAppleのiPod Classicを長年愛用してきた。80GBの容量があったので車のロングドライブには重宝していた。だが、今はmicroSDのおかげで128GBを有し容量的には問題はないし、総じてWalkmanの方が断然音が良いと思う。ハイレゾのサウンドは細かいところまでよく聞こえて、「違いのわからない男」である私でも実感できている。

 ということで、Walkman NW-A55HNの使い勝手は良し!と結論。今後も3台のWalkmanを使い分けながら活用していこう。

    


この期に及んでSONY WalkmanのNW-A55HNを購入:その1〜今なぜ旧型を選んだか?

2023年01月25日 | 音響製品

 本日は全国的に10年に一度の大寒波の日となっているが私の地元(札幌市近郊)も風が強くかなり寒く感じる。列車運休や高速道路の閉鎖が生じているが、朝起きたら雪はそれほど積もっていなかった。だが、だんだんと吹雪模様になってきている。明日は朝一番に出勤予定だがどうなることか、、、

 さて。本日のお題。昨年の年明け第1回目の本ブログは、「この期に及んでM1 MacBook Airを購入」という記事だった。新型発売後に旧型を整備品で購入したのだが、その後の円安影響によるApple製品の値上げのことを考えると、あの時に買ったのは良いタイミングだったと思う。そして、2023年の年明けも「この期に及んでSONY WalkmanのNW-A55HNを購入」というタイトルである。この製品は2018年10月発売であり、その後新機種が出ているにもかかわらずあえてこれを購入した。今回はその理由を記しておこうと思う。

   

 学生の時に購入したカセットテープ式の初代ウオークマンと90年代のMDウオークマンは別にして、ファイル形式携帯音楽プレーヤーとしてのWalkmanは4台目である。本ブログでも最初のNW-E063はこちらに、次のNW-505はこちらに記載している。3台目のNW-A16が2015年の購入以来日常的に今も使っているがこれまでに紹介の機会を逸していた。ハイレゾ音源対応かつコンパクト・軽量で大変重宝している。だが、徐々にバッテリーの減り方が早くなってきており今後に対する不安が増大した。調べるとメーカーでは電池交換(修理)はすでに対象外。スマホ修理を扱う店で対応できる所はあるようだがあまり安心感は持てない。そこで新機種への買い換えが頭をよぎっていたのだが、今ひとつ決断に至らないでいた。

 実はNW-A16の特色としてFMラジオが受信できること、そして語学学習用に再生スピードをスローにできる機能がある。これらがなかなか捨てがたいのである。そして、2019年以降発売のWalkmanはAndroidが搭載されたせいなのか、そうした機能がなくなってしまった。今年になってさらに新機種Walkmanが発売されたから、今後NW-55を新品で購入することが難しくなるかもしれない!これが旧機種NW-55を買いたいと思った大きな理由である。かろうじて16GBヴァージョンが現行品として発売中なので不安に駆られて購入に至ってしまった。だが、1年前だったらもっと安く購入できたかもしれない。それが残念、、、(その2へつづく。次回は使い勝手について)


「増補改訂版 山下達郎のBrutus Songbook特別編集号」

2022年12月24日 | ミュージック

 私は山下達郎の熱狂的なファンというわけではない。が、日曜日の午後2時から東京FM系列で放送される「サンデー・ソングブック」には毎週耳を傾けている。自分の知らない曲のかかることがほとんどだが、知っている懐かしい曲も聴かれる。そして達郎氏の説得力のある曲のウンチク・解説になるほどと思う。先日発売された「増補改訂版山下達郎のBrutus Songbook特別編集号」((株)マガジンハウス)は同番組の30周年を記念した一冊で、番組内のトークをアーティストやジャンルごとに書き起こしたものである。増補改訂版と謳っているのは実は番組25周年に一度発行されたそうだが、今回新たな記事が加えられたアップデイト版であるとのことだ。

    

 こうして文字で読むと、番組内での達郎氏の話・解説はとても丁寧なものであることがわかる。豊富な知識とサウンドへのこだわりは番組を聴いていて楽しく伝わるけれど、このような冊子になるとオールディズの貴重な資料だとも言える。いや、オールディズのみならず、私の好きなイージーリスニングやギブソン/フェンダーによるギタリスト、さらには小説家レイ・ブラッドベリについても言及されていて、その関連でチラッとだがプログレの話題もある。そして番組のスタッフや裏話、超常連と言われる人達の投稿など、読みどころ満載である。

 そういえば、はるか昔この番組内で紹介されたクロディーヌ・ロンジェの「恋の面影」に感動してCDを買ったことを思い出した。そして小学生の頃初めて自分で買ったシングル盤「グッドナイト・ベイビー」のザ・キングトーンズの紹介もあるのだから、「サンソン」はやはり自分にとっては波長の合う番組であり、そしてこれは読むべき一冊だと改めて実感したところである。

 今年もあと1週間。年末にじっくり目を通していこう。


YAMAHA FG-150の謎

2022年12月15日 | ギター

 2014 年に入手した68年製YAMAHA FG-150について本ブログ3度目の登場である。

 傷が多くて見かけは良くないが、相変わらず良く鳴ってくれるギターである。音の余韻の豊かさはMartinの方が勝るが音量的には素晴らしいものがある。それに何と言っても小ぶりで軽くて抱えやすい。従って持ち運びも楽。トラスロッドの調整後、現在 extra lightゲージ弦を張っていて弦高は6弦12フレットで約2.5mm。弾く分には全く問題がない状態。

    

 ところで、この54年前のギターだがいくつか気になる点がある。1点目はナットの切り込み位置の不揃い。これは以前にも書いた(ここのページ)のだが3弦と4弦の間が7.5mmあり、7mm弱の他弦の間隔よりわずかに広い。ナットがオリジナルなのか付け替えられたものなのかは不明。見た目の古さは新しく換えられたようには見えないのだが。FG-150を紹介している動画サイトなどで確認してみたのだが、この部分をズームしている人はいないので相変わらず謎のままである。

 2点目はヘッドのペグの位置。写真のようにYAMAHAと刻まれている(写真小さくて見えませんね)ことからこれはオリジナルのペグだと思うのだが、3弦のもの(左上)が左に傾いて取り付けられている。4弦(右上)と比べても傾きが違って不自然。これは他の動画で見たら縦にまっすぐ並んでいる個体があったので、意図的にそうしているのだろうか。何らかの不具合があって、問題にならない程度にネジの位置を変えたのかもしれない。これまた謎である。

 だが、私としては大きな支障はない。今までたくさん弾かれてきたのだろうな。50年以上もちゃんと鳴ってくれる楽器をつくり出すYAMAHAの凄さを改めて感じつつ、脳の活性化のため今日も弾いていこう。

<追記>

 FG-150とMartin M36をメインに演奏した安全地帯のカバー「悲しみにさようなら」をYouTubeにアップしました。限定公開ですが、ギターの音色をぜひお聴きください。下の画像からどうぞ。

   


「レコードの日」にちなみ P.F.M. イタリア盤ファースト・アルバム Storia Di Un Minuto 「1分間の物語」

2022年11月03日 | プログレ

 11月3日はレコードの日である。アナログ盤の魅力を多くの人に知ってもらいたいという目的で8年前から開催されているイベントだ。今年は12月3日にも設定されているとのこと。それにちなみ、今回はイタリアのプログレ・バンドP.F.M.(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ)の72年リリース、イタリア盤ファースト・アルバム LP、Storia Di Un Minuto(1分間の物語)〜邦題「幻想物語」について。

  

 PFMは日本で紹介された時から大好きなバンドで、日本でのファースト「幻の映像」(こちらで紹介済み)はもちろん、その後も立て続けに買い続け、一度も期待を裏切られたことのない素晴らしいバンドであった。本国イタリアでの2枚目オリジナル・アルバム Per Un Amico (友のために)は高校生の頃に購入したのだが、1枚目の方はCDの紙ジャケ盤などは別にしてLPはとうとう買う機会がないまま今に至ってしまった。そんな時見つけたのがこの復刻「赤盤」である。これは珍しい、これを買うために今まで待ち続けたのだ!と勝手に理由を付け購入してしまった。シリアルナンバー(手書きだが)もついていて、なかなか希少価値があるのではないか(700枚らしい)。それに、何よりもファーストは曲が良い。サウンドもメロトロンが多用されていてプログレの王道を行く内容だ。これを針をとおして改めてじっと聴く。久しぶりに至福の時となった。

 ちなみに76年発売のChocolate Kings も発売当時イタリア盤で購入した。ヴォーカル担当の新メンバーが加入し、サウンドが少しフュージュン的になった印象で、この辺から私のPFM熱は冷めていったと思う。だが、高校時代の我がバンドでは彼らの曲をたくさんコピーして演奏した熱い思い出がある。このアナログ盤を聞きながら、またあの頃のことを思い出してしまった。青春だった、、、。

   イタリア盤セカンド・アルバム PER UN AMICO(72年)

   Per un amicoの内ジャケット

   イタリア盤 Chocolate Kings (76年)

    国内盤3枚のLP(幻の映像〜甦る世界〜クック)


YouTubeチャンネルの "hirohiko archives" について

2022年10月24日 | ミュージック

 学生時代からFMで放送されたライヴ音源等をエアチェックしたカセットテープがミカン箱2箱分くらいある。転勤族であったにもかかわらず捨てずに持ち歩いてきた。自分にとっては懐かしく、かつ貴重な音源として大切にしてきたものだ。特に東京に住んでいた学生時代は、北海道にはない民放のFM局がたくさんのライブ音源を放送していたので、夢中になって聴いていたものだ。そして今、思い立ってYouTubeのチャンネルにアップしてみた。それが"hirohiko archives"である。思いがけず現在チャンネル登録数が300を超えた。自分のオリジナル曲のチャンネルが十数名なので破格の数字である。ありがとうございます。

 カセットテープは意外と長持ちする。だいたいのメーカーは今も安定して再生できるのだが、Sc…製だけはテープがよれてきちんとは再生できないことがある。まあ、40年以上経つのだから仕方ないのかもしれない。

 一番最初にアップしたのが、75年8月にNHK-FMで放送された弘田三枝子と四人囃子がコラボしたスタジオ・ライヴの1曲「空と雲」だった。これは、上京前の時にラジカセで録ったもの。音質もあまり良くないのだが、当時弘田三枝子さんが亡くなった直後のアップだったのでたくさんの方に聴いていただいた。

 (以下、画像にリンクを貼っています。)

   

 現在の一番人気はユーミンの78年10月のスタジオ・ライヴだ。「流線型 '80」をリリースする直前のもので、一桁違う視聴回数になっている。次点がサザンオールスターズの78年スタジオ・ライヴで、デビューした年の勢いある演奏が聴かれる。ユーミンとサザンの人気はさすがだが、これらの音源は他の方のアップがなかったためたくさん聴かれていると思われる。そして、それに続くのが吉田美奈子や八神純子のライヴ。70年代に活躍したアーティストの人気は今も根強いと感じる。私自身も、良いものは良い!と思う。

  

  

  

 

 ところで、サザンと言えば、78年11月(だと思うが)に私の通っていた大学の学祭で大学生協主催のコンサートがあった。所属していた軽音サークル内でも先輩から青学にとてもうまいバンドがある、と聴いていたのだが、プロのバンドではあったがまだ学生臭さも残っていてとても親近感が沸いたことを覚えている。「勝手にシンドバッド」のようなノリの良い曲のみならず、メロディの美しい曲もたくさんあって、俄然ファンになったものだ。(その翌年、「愛しのエリー」が生まれることとなる。)先述の音源はその生協ライヴの1ヶ月後に収録のものであった。

 このように私のチャンネルは他人のふんどしで相撲を取るような試みをしていることになるが、私の思いは公共放送を通じて人々に楽しみを与えてくれた過去の娯楽を記録として残したい、そして聞き逃した人達に改めて聞いてもらいたいということだ。ただ、心配なのは楽曲に対する著作権である。これについては、アップロードする際にYouTube側が内容を判断し、大方は「著作権の申し立て」があり制限される。しかし、だいたいの曲はYouTube側で著作権の対応を関係方面に行っているため、制限されるのはチャンネル公開者に広告収入が得られないことで、アップロード自体は可能だ。ただ、著作主や放送局などから削除要請が来たらそれに従う必要はある。個人的には、オフィシャルのソフトとして発売されている場合はアップしないことにしている。

 さて、hirohiko archivesについてはリンクを貼ったので、もしよろしければ聴いてみてください。他にサントリーオールドが当時のTVアニメとコラボしたCM集や、パット・メセニーのライブ音源などもあります。願わくば、オリジナルの楽曲チャンネルの方がもう少し伸びてくれると良いのだが、、、(笑)。

hirohiko archives  ← チャンネルのリンク


祝50周年!YESの「危機 / Close To The Edge」

2022年09月24日 | プログレ

 昨日9月23日の夜、NHK-FMにて「プ」はプログレの「プ」という番組が放送された。「今日はプログレ三昧」以来の長時間プログレ特集番組でそれなりに楽しめたのだが、番組中でイエスのアルバム「危機」がイギリスでリリースされたのが1972年9月13日だった、今年で50周年です、と説明されていた。そうだ、すっかり失念していた。72年というのは私にとっても重要な年で、キング・クリムゾンの「宮殿」を聞き衝撃を受け、イエスの「危機」に熱中した年であった。中3の頃である。それから50年が経ってしまったのだ。このブログでも「危機」については10年前に詳しく記載していた(ここ)のだが、改めて思うところを述べてみたい。

 恐らく複数枚持っているひとつのアルバムとしては「危機」が一番多いと思う。確認してみたらLPが4枚(米国盤2枚、英国盤日本盤各1枚)、CDが6枚(6種類)あった。次点のクリムゾンの「宮殿」がLP1枚、CD5枚なので圧倒的である。「危機」の発売はリアルタイムで経験していてよく覚えている。魅力的な緑色のジャケットで音楽雑誌の広告には「イエスはメリハリの音楽である」のようなコピーが見られた。ラジオでも18分強の「危機」がノーカットで放送されていた(確かNHK-FM)。その後自分もLPを購入して何度も何度も聴いていた。(A面のみならずB面の2曲も素晴らしいのである。)難解な歌詞(もちろん和訳の方)に感動して自分でもそのような詩を書いてみた。中3だったから高校受験の勉強もあったはずだが、歌詞の中の英語を調べて記憶したことはあまり役には立たなかったと思う。(余談だがシンセサイザーやメロトロンにも多大な興味が沸いていた。将来はそれらの楽器を全て所有する人になりたい、と思ったことを覚えているが今それはソフトシンセの形で実現している。)こうしていくつかを羅列してみると、思春期の青春の1コマは、このアルバムの緑色で染められていたのだなと思う。

 A面全体を構成する組曲「危機」について、「1970年代のプログレ」著者の馬庭教二氏はその本の中で、5人のメンバーがああでもないこうでもないとスタジオに籠もって演奏を繰り返し、プロデューサーのエディ・オフォードが録音した数多くのテープの中から良い出来のものを編集し、自然に聞こえるようにつなぎ合わせたものだ、ということを記している(ワニブックス p.86)。全く信じられない話だが、もし本当だとしたらロック・ミュージック名盤誕生の陰には名プロデューサーありの秘話として語り繋がれていくべきだろう。

 「プ」はプログレの…でも番組最後に「危機」がオンエアされた。それも英国オリジナルアナログ盤を再生しての放送である。プログレッシブ・ロックの一つの典型がこの曲なのだ。50周年おめでとう、Close To The Edge!

   

   (国内盤。帯も解説も緑で統一されていた。)

   

    (USA盤裏ジャケット。上に曲目がクレジットされている。)

   

   (UK盤の裏ジャケット。日本盤もこちらと同じで曲目表示はない。)


iPod mini 4GBのバッテリー交換に挑戦

2022年08月04日 | 音響製品

 前々回、シンセサイザーの電池交換についての顛末を記載したのだが、同じようなバッテリー問題が他のアイテムにも存在する。Apple製品大好き人間の私は過去いくつかの商品を購入してきたものだが、パソコン以外で一番古いのはiPod miniである。当時は画期的なポータブル音楽プレイヤー製品として食指が動き、写真のものを購入した。珍しさもあって自分の名前を刻印してもらうサービスも受けた。わずか4GBの容量だが当時は充分な気がした。その後iPod classic 80GBに持ち替え、さらにiPod TouchやiPhoneなどを経てあまり使われなくなった結果、バッテリーの持ちが悪くなっていた。最近は1日持たない状況である。だが、音楽ファイルの再生は問題なくされるし、何と言っても懐かしい外観から愛着を捨てられず、今回バッテリーの交換をしてみようと思い立ち実践してみた次第である。

  

  (本体と交換用に購入したバッテリー。ヘラのような器具が付属していた。)

 先駆的にやられた先輩達の動画やサイトを参考に行ってみた。一番大変だったのは上下の白いカバーを外す作業である。細いマイナスドライバーや薄いギターのピック等を使い挑戦したが若干筐体を痛めてしまった。だがその後は諸先輩のやられた作業どおりに進めることができ、無事に交換が完了した。現在、一度の充電でどの程度バッテリーが持続するのか検証中だが以前よりは減り方が遅くなっているのは実感している。ということでレトロな外観を眺めながらの音楽鑑賞を、またしばらくは楽しめそうである。

  

  (上下のフタを開ける。これが一番大変だった。)

  

  (中の青い色をしたバッテリーを交換。白いコネクタを外してはめるだけなのでこれは簡単。右は復活した状態。)


今日の1枚:ポーキュパイン・ツリー『クロージャー/コンティニュエイション』

2022年07月17日 | プログレ

 久しぶりにアルバムの紹介を。スティーヴン・ウィルソン率いるポーキュパイン・ツリーの13年ぶりの新作アルバムが6月に発売された。私は輸入盤のCDと前作(ウィルソンのソロ作THE FUTURE BITES)同様カセットテープの2種類のメディアを購入した。

    

 スティーヴン・ウィルソンについてはここ数年のソロ作は必ず購入してきたし、ポーキュパイン・ツリーのアルバムも数枚持っている。プログレファンの私としては目の離せない存在である。ということで今回も楽しみにしていた。一聴して思ったのは、バンド作品ではあるが、彼のソロ作とあまり違いが感じられなかったということ。これは良い意味で言うのであるが、安定した裏切らないサウンドを聞かしてくれている。彼の音楽はとてもメロディアスな部分と、まるでホラー映画のサントラのような緊張感を感じさせる展開が絶妙にミックスされているように感じるのだが、今回もまさにそのような雰囲気。特に、4曲目のDignityは2013年ソロ作 The Raven that Refused to Sing (And Other Stories) に収録されていたもの悲しい名曲 Drive Homeを彷彿させる名曲だ。あるいは最終のChimera’s Wreckはエスニックなメロディの繰り返しが頭に突き刺さるような印象的な曲である。その他も長めの曲が多く、久しぶりにロックバンドのアルバムに没頭することができた。

 今回の新作は6月下旬の発売であったがそれまでにかなり待たされ、実は忘れかけていた(笑)。CDの予約をしたのが昨年の11月頃で、カセットテープの方は国内のストアで扱っていなかったためPorcupine Treeのサイト・ショップへ1月に注文。価格は10ポンド+送料3ポンド(追跡なし)。こちらはCDに遅れること2週間後の到着だった。どちらも通常盤7曲の構成で時間としては約47分。だからカセット版もリリースできるのかなと思うのだが、私としてはテープで聴くのが実は楽しみ。ウィルソン氏には今後もカセットでの作品リリースを続けてほしいと願っている。


祝!JUNO-106 復活の時

2022年07月14日 | シンセサイザー

 ローランドのシンセJUNO-106については、2019年3月の当ブログでメモリ用の内蔵電池不調で音色の保存ができなくなった旨記載した(こちら)。恐る恐るハンダ付けを試み何とか自分で補修できた!はずだったのだが少し時間を置いたら何と再び音色が消えてしまっていた。もう世の中に報告する気力も失せその後3年ほど放置することとなった。

 先日思い立って再度電源を入れてみたのだが、変わらず音色メモリは飛んだままであった。データをロードすると正常に音は鳴ったので、やはり内蔵電池の不備がどこかで生じているらしい。改めて修理対応してくれそうな所を探した。そして、結果として無事復活して戻ってきた。数日経つが、今のところ電源を切っても音色は保存されている状況だ。久しぶりの完動状態に感動!とついダジャレを言ってしまった、、、。

    

 今回お願いしたのは「楽器ソムリエ」さんという東京の会社である。そこによると、この度の修理は基板に「グランドジャンプ処理」をしたとのこと。初期の JUNO-106 には設計不良で電池の消耗が激しくなるものがあり、私のものもそれに該当したらしい。具体的にはpin4, 5 がグランドに接続されていない個体があり、その場合、バッテリーが直ぐに切れるということであった。電子や基板に全く疎い私はよくは理解できなかったが、結局はハード的な初期不良があったということなのだろう。今回はその修理のために改造し、さらにバッテリー用のソケット取り付けも行ってくれた。これで今後の電池交換がしやすくなる。ということで、今度こそ無事に復活したわがJUNO-106である。

    

 古いシンセは本当に手間がかかる。ここまで一難去ってまた一難である。でもこうして弾いてみるとやはり良い音がする。このストリングスやブラスの音は大好きだ。アナログ的なレバー操作や押しボタンも実にわかりやすい。好みの薄いパッド系の音もFREQとRES、ENVのADSRのツマミを触るだけでできてしまう。今のところ、ボリュームに少しガリが出るだけで、どのレバーも正常に反応していると思われる。ただ、6個ある発信器の調子が悪くなりやすいという話もよく聞くので、大切に使いたいものだがいつ不調が生じるか、ちょっと怖い気もしている。

 その中、ローランドからJUNO-XというJUNO-106が超進化したシンセが登場した。ルックスは106と似ているのだが、新たな機能が満載のようで何とも食指を動かされる存在である。私はこの10年間でコルグのmicroKORGとbehringerのDeepMind12という2台のシンセを購入し、ソフトシンセは十数種類入手し(正直使いこなせていない!)ので金銭的にも物理的にも所有することは叶わないが、このようなJUNO-106を彷彿させる楽器が登場し続けるということは初期のこのシリーズがいかに素晴らしいか、そして人気が続いていることの証であると理解する。よって自分のJUNOを大事にしていこうと思う。

<追伸>たまにはαJUNO2も弾いてあげねば、、、。


8トラック・オープンリール・テープレコーダー "Fostex R8"

2022年05月21日 | 音楽制作

 アナログ・サウンドが再人気のこの頃だが、私の持つオープンリール・テープデッキはフォステクスのR8である。8チャンネル・マルチトラック・レコーダーとしてデモテープ作りに貢献してくれたことはかつてここで紹介した。

 だが、その後数十年ぶりに電源を入れテープの再生を図ったところでリールが回らなくなるという不調を起こし、長らく放置することになってしまった。その故障に関してはコメントもいただいたのだが、私自身ではどうすることも出来ず、後年購入した専用のミキサーも手放す事態に。そしてさらに数年が過ぎたのだが、ここに来て個人的にデッキの修理を生業にされている方に修理の依頼をした。結果、いろいろ試行錯誤されたようだが見事復活してここに戻って来たのである。

   

 再び故障しないうちにと、テープ内のデモ曲をCubaseに移行する作業を敢行した。我が家の機材では直接の音源移行が出来ないため、一度ZOOMのR16にダビングし、そこからiMac上のCubaseにデータを移植する。その結果無事に音源移行は完了したのだが、気になる現象が。

 まずは、オープンのテープが経年劣化のためかテープ表面の剥がれを起こし、ヘッドやピンチローラーなどテープに接触する部分がすぐに汚れてしまうこと。これはその都度クリーニングすることで何とかしのげるのだが、テープの磁性体が剥がれると音源の再生に悪影響があるはずだ。

 もう一点は、アナログテープからデジタル化した音源では、特にヴォーカルのカキクケコの発音が異常に強調されること。ダビングした事による音質の変化なのか、アナログ・サウンドがデジタル化されることで生じる現象なのかは不明だが、この音は明らかに耳につく。シンセサイザーのベル系のサウンドも鳴り始めにそのような傾向が感じられた。これについてはできるだけ修正するよう努めたが、ヴォーカルについては難しかった。まあ、あくまで自分の趣味の範疇なので良しとしたい。

 ということで、R8から移植して仕上げた曲で94年録音「夜空の近くで」をYouTubeに上げた。本来はデモ曲だったが、30年前の声が今は出るはずもなく、加えて意外に聴けるかもしれない(?)と自己満足できたのでアップしてみた。

   

 もう一曲は、私の高校教師時代に某勤務校の生徒達の間で最大のヒット曲となった「黄昏のシルエット」。今もクラス会の時に話題にしてくれる曲である。こちらはR8ではなくTEAC ポータスタジオ244カセット4チャンネルからの音源移植。最後のギターソロのみ新たに差し替えた。エレキギター練習中の私としては、その演奏もまだまだではあるが、教え子達が聞いてくれればと思い公開した。

   

 (どちらも画像がYouTube とリンクしています。)

 こうした作業は自分の楽曲が徐々にアーカイブ化されているということだが、今後も楽しみたいと思う。


大学時代のバンドLamb(ラム) について〜曲のリミックス・ヴァージョンをアップしました。

2022年03月28日 | 音楽制作

 東京での学生時代の最大の思い出はバンド活動である。2年生から軽音楽同好会に所属した私は3年生の頃、その後も縁を持ち続けることとなったメンバーとバンドを結成した。本来プログレ好きの自分だが、まさにその手のコピーバンドとして活動を開始。当初はイエスやジェネシスなどのコピーだったが、その後オリジナルにも着手して、集大成として卒業までにアルバムを作ろうということになった。それが写真にある「招待夢」(しょうたいむ)である。主たる録音が1980年3月と記載されているので、42年前の今頃頑張って制作していたことになる。

    

 バンドのメンバーはドラムのYくん、キーボードのKさん、そしてヴォーカル担当の私の3人。ギター・メンバーがなかなか定着せず、結局私が高校時代に一緒にやっていた他大学のTくんにお願いした。これが見事にマッチング。そしてベースは飛び入りで練習に参加してくれたベーシストSくんを皆がとても気に入り、口説いて何とか加入してもらった。

 その他このアルバムには多くの人達の協力を頂いた。今考えると皆さんよくぞそこまで力を注いでくれたと感謝に堪えない。まずは録音にエンジニアとして携わってくれたMさん。当時某レコード会社の社員で、個人的に4チャンネルのオープンテープ・デッキを所有しておりそれを惜しげも無く使用させてくれた。三田にあったMusic Studio OUR HOUSEのYさんも、趣味だからということで無償で8チャンネルのテープレコーダーで演奏を録音してくれた。この方々の協力がレコードのベーシック・トラック音源になっている。さらに、「晩秋」という曲ではヴァイブラフォンのソロを入れたのだが、その奏者は、これまた高校時代のドラム担当メンバーだった他大学のAくん。そのヴァイブラフォン自体は楽器店から無償で貸してもらい、彼の自宅で録音した。ベースのS君が加入する前に暫定的にベースで参加してくれたTくんも彼の友人。さらに、アルバムジャケットや各楽曲をイメージしたイラストの数々。これらは当時の女子高校生達の手によるものだ。

 アルバムの制作はその後、オーバーダビングやマスタリングなどの処理があり、結局卒業までには完成しなかった。バンド・メンバーも社会人としてそれぞれの道に進んだ。私は北海道立の高校教員となり某地域に赴任。そこで出会った生徒達にイラストや歌詞のタイピングなどをお願いした。これは決して教師としての立場を利用したのではない、と釈明させて頂く。明らかに才能のある美術部員の生徒2名、そして商業科の生徒にレコード制作の話をしたら、とても興味を持ってくれたのである。特に、当時はワープロやパソコンなどない時代だから、和文をタイプするのは「和文タイプライター」という特殊な機器と技術が必要だった。商業科の生徒はそれが当たり前のようにできた。Fさんは一生懸命歌詞を打ってくれ、そしてSさんとKさんの手によるイラストと共に立派な歌詞カードが完成した。アルバムジャケットのイラストも、「招待夢」という言葉からの連想をイメージ化したものだが、全体の楽曲が持つトーンを端的に表した秀作だと思う。本当に感謝である。

 さて、前置きが長くなったが、この度このアルバムのリミックスに着手した。最初に仕上げたのがA面3曲目の「晩秋」である。これは私の曲であるが、主な編曲も自分で行った。学生最後、バンド活動最後だからという思いで、やりたいこと全てをつぎ込み、とても過重なアレンジとなっている。だが、それらを見事に演奏しているメンバーの力量が凄い。この曲では、大学のサークルで女の子バンドのヴォーカルをしていたRさんにソプラノボイスでの参加を依頼。彼女も無償で協力してくれた。YouTubeにアップしたので、ぜひお聴きください。

    

    「晩秋」はこちらから。

 続いて、「真夏のかげろう」。ギターのT君の曲に私が作詞した作品。実はこの曲はアルバム未収録。私が北海道に戻ってしまったなか、東京在住の残りのメンバーで伴奏パートを録音。その後私の歌を仮に入れたがそのまま放置されていた。今回、そのヴォーカル・パートはそのまま使い、ハモりや12弦ギターなどを加えて形にしてみた。40年ぶりの完成である。

    

    「真夏のかげろう」はこちらから。

 他の楽曲も暇を見つけてリミックスに取り組む予定である。今回、40年ぶりに自分たちの作品、アルバムを見つめ直し、当時のメンバーの意気込み、努力、そしてその成果である演奏力を思い出すことができた。何よりも、繰り返しになるが、周りの皆さんの多大な協力があったことを改めて実感。もう連絡も取れない人も多いが、この場を借りて心から感謝申し上げたい。ありがとうございました。