上砂理佳のうぐいす日記

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大困惑からGPFへ

2005-12-05 | 05-06 コンペとショー
★大ちゃん
私はオープニングでラフマニノフの音楽が始まった瞬間、「これ、テープのびてるんちゃうの?」と愕然とせざるを得なかった。
いやほんま。重い。遅い。たるい。音響割れてる。
東伏見ではまったくそう思わなかったのに何故だ。この現象は!?(と、お隣のHさんに訴えたら“うぐいすさん、CDだからのびないってば”と諭される。そーよね。そのはずだ)
…重い始まりに合わせて跳んできたのは、私には4回転トゥに見えた。でもスケアメの時より大きくステップアウト。ところが帰宅後ディテールを見たらこれ、3フリップに変えてきてるのね。あれー。大ちゃん、なぜ「引く」のか。リスクを避けて他の要素で高得点を…という作戦は、私には消極的に思えてならない。
ここでコンボにする予定が大きく狂い、結局後半の3フリップを予定通りの単独ジャンプで降りてしまったから、こっち(後半のほう)がノーカウント(0点)になってしまうという…これが致命的なミス(同じ種類の3回転ジャンプは、単独では2回跳んではいけない。コンビネーションにしないと)。
次のアクセルは綺麗なランディングだったのに、「3回転をくっつけるぞ!」という気迫がなく、あっさり2トゥにしてしまった…ので神様が罰を下されたのか(この辺、WFS最新号のジョニーの言葉を拝借)着地で大きくトゥをつっかける。
冒頭のこの連続ミスで、少々場内ムードは固まる気配。アップの6分間で感じた、私の「ほんの数ミリ」の嫌な予感はますます膨れあがっていく。
ルッツは綺麗だけど、ここでも3-3にならず。
2個目のアクセルが一番心配だったけど、これは成功。ホッ。
ここで持ち直すかな~と思いきや、ループの着氷でまたも「つっかけ」。ジャンプに気を取られて、他の要素を楽しむ余裕が、観客にも大ちゃんにもないのが、ヒシヒシ伝わる。
3ルッツ、フリップ(ノーカウントのね)、サルコゥと決めて、後半がガタ崩れにならなかったのは前よりも成長した証しとは思うけど、何より今日は、踊りに気持ちがこもっていない。サーキュラーもストレートも、スピンも「こなすだけで一杯」になってしまい、あのスケアメ(+東伏見)で見せた怒涛の気迫と美しい表現は、まったく弾けることなく終わってしまった。
「のびたテープ」の印象は最後まで払拭されることはなく、私的にはこのFSは「のびたうどん」だ。スケアメは「アツアツ・茹でたて」だったわ。

終了後、下を向いて息をととのえる間「アカンかったな~」という気持ちで充満してたみたい。なかなかお客さんに挨拶をしないので、花も飛ばず拍手もない、冷た~い空気がかなり流れる。
やっと笑顔でお辞儀をすると、そこそこの歓声と花束(プレゼントも、気合入ってる系(?)をかなりもらってた)。でも本田君への歓声の3分の1ですわ。今日は。
キス&クラで「ごめんなさい」とでも言いたげに頭を下げる。アクセル2個入ったとはいえ、3-3も、3-3-2も無い…では苦しい。ジャンプに精彩を欠くとPCSも上がりきれず。でも2位にとどまったのでこれでファイナル決定。ちょっと安堵の表情になる。

★織田くん
つらい気持ちを乗り越えて、地元・織田君を応援しよう。はい。SPよりかなり緊張してる様子。やはり他の選手と比べるとかなり少年っぽい織田くん(中学生に見えた。かわいい)。
アップで計4回は転んでいた冒頭の3アクセル。まったくそのまんま転倒。ジャッジの目の前で転ぶって嫌だろな~。
しかし、すかさず3ルッツ+3トゥ+2ループを鮮やかに跳び、土壇場の精神力の強さを発揮。これで勇気が出たのか、ひるまずコンボを跳ぶ。やはりこの柔らかさは1級品ね。スピンが安定していてポジションを替えてもほとんど速さが衰えない。私は会場のかなり上のほうから見下ろしているので、軸がキッチリしてることが良くわかる。兄貴のバトルにも見劣りしないわ。
後半はやはりスタミナが落ちたのか、2アクセルで大きく「つっかけ」。今日は2人ともつっかけ着氷が多いので、氷の具合かな(あとで解説聞いたら、「なみはや」の氷は硬くて、ポップしやすくなってたんですね?)。
でもこの「座頭市」けっこうハードよ。終盤で2種類のステップシークエンス、3ルッツでしょ。織田君、体力ギリギリだと思うんだけど、そんなことは表面にチラとも出さずに頑張る頑張る。「今は何も(GPFとか・五輪とか)考えず、自分の仕事をやりきる!」という気持ちが持てるのは、失うものは何も無い新人だからかな。真央ちゃんを見てるみたい。プレッシャーがのしかかる先輩たちを尻目に、無欲が功を奏してる、としか言い様がない。
私は「今の織田君のPG(振付)はバトル色が強いので、ちょっとなあ~」と前に書いてしまったけど、ジャンプの柔らかさは大きな「織田印」になるかもしれない。将来、世界1になるか?と言われたら、今はまだ疑問だけど、若い選手が上へ駆け上がっていく時の輝きは一生に一度だから、ある意味今のこの姿は貴重かもしれないよ。

「やっぱり転倒しちゃったな~」という、ある程度サバサバなキスクラの表情。会場も私も、すご~く微妙な空気に包まれている。「勝った」とも言えず、「負けた」でもない。
ライサが優勝かな~でも、TES次第だね…わかんないね…という空気を一変させたTES。「おおー!」とどよめきが起こる。70点越え。PCSもそこそこ出て、自己新記録。ええー!?
ひょっとして、ひょとすると…「1」が出ると、場内ドワーッと湧いてスタオベ。私もビックリ。御本人もびっくり(あの涙を拭いていた黒と黄色のタオル、阪神タイガースグッズ?)。織田君、よく泣くなあ。でもなんだか可愛い(笑)。

ライサチェクの「得点に困惑してる」というお言葉。彼は紳士だから(そう見えるわ)抗議したりしないでしょうけど、アメリカ側としては内心御立腹なのではあるまいか。TAKAHASHIに勝った時点で、もう優勝したと思ってたでしょうね。
織田君のFSは、日本人からしたら「こんだけ頑張ったんだから優勝させよう」と言いたくなるわけだけど、素晴しい滑りではなかった。消化不良。ライサは、SP、FSとも一応ノーミス。FS1位とは言え、結局SPの点差が最後まで響く結果に。
…これを「困惑」と言わずしてなんとしょう。私、頭かかえちゃったわ。いちおう「大」勝利、のつもりで来ましたもので…。は~。

うぐいすのワガママ採点だと「金メダルなし。銀と銅のあいだ(?)ライサ。銅が織田君と大ちゃん」という感じー。
いえいえ。でもまあ、結果は結果。受け止めましょう~。これで男子のGPFメンバーは、ポイント順に言うと、サンデュー、バトル、大ちゃん、織田君、ランビ、ライサですか。ジュベールの意外な落選にがっくり!ジョニーもカナダでせめて2位だったらば…あ、でも届いてないか。

大ちゃんは、その後の場内の様子やインタビューでも、余りしょげてないよーだった。そうだよね。いつも1番ではないからスポーツ。GP2勝って甘くないんですね。やはりアメリカ優勝したことで、自分も周りも「地元、日本でも勝つ」というイメージが出来上がっていて、プレッシャーになっていたみたい。GPアメリカの時は「メダルでなくてもまあいいか」っちゅう、ダークホースでいられたものね。ほんまに人生はうまくいかないわあ~。
でもハイビのインタビューで、しっかり「GPFでは織田君に勝って、五輪は僕が行きます」と言い切りましたね。しかも織田君の隣で。顔前で。
後輩に負けたことで闘争心に火がつくか。
逆に「もう負けられない」状態に追い込まれて萎縮するか。
ファイナルは見ものだ~。思いもかけない展開だ!
私、本番の演技ではもう目をおおってしまうよ。怖くて。誰か助けてくれー。

無欲の勝利、と言うは易し。でも行なうは難し。…んな禅問答みたいな人生の真理を(?)ストレートに感じた、N杯男子の闘いでありました。
コメント (4)
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大困惑

2005-12-05 | 05-06 コンペとショー
寒い寒い一日。リンクの中のほうが暖かい(カイロいらない?)。
「なみはやドーム」は地下鉄門真南駅の目の前で、ガラス張りのエントランスを入ってすぐリンク。
私とお仲間の座る背面側(ジャッジと反対)3階席からは、外の風景とリンクが同時に見える。結構、真ん中よりでいい席だったけど、お隣のマニア的な男性客がずっとブツブツ独り言をつぶやいていて、少々つらかった(?)まあいい。
皆でお菓子をズラっと並べてすっかりピクニック気分。すんません。お気楽で。同行のRさん親子は、カナダの国旗をずっと振って応援するのだった。立派。
…楽しかったのよ。ワイワイと。でもね。でもね。今日は「大感激」のタイトルでこのシリーズを「大団円」にシメる筈が、まあ御覧の通り。まだ録画を見てないので、とにかく覚えてる限りの男子FSの印象を。(選手抜粋)

第1グループ
★リンデマン
まさかのSP最下位発進。今回、リンデとランデブーは実現しなかったので(座席でも見かけなかったな~)彼の「もんちっち度」「オリバー・カーン度」は計りかねました。でも、キスクラは相変わらず少年っぽくて可愛いかったね。
世界銅メダルの実績は、やはり「時の勢い」も大事だったんだな~と実感。今日のリンデマンはウォームアップから転倒・スッポ抜けしていて、不安が一杯。本番はやはり3回転スッポ抜けが続き、スピンも不安定。何かが空回りしていて精彩を欠く。
あ、リンデ君は、エッジが氷を削る音がすごーく「ギギギ」と鳴っていて驚きました。スムースではないということかな。でも滑りのスピードは速かった!巻き返しに期待。
★クリストファー・メイビー
ジュニアから上がってきましたメイビー君。いかにも軽くお洒落な北米的振付が面白く、良く踊ってる。ダグ・リーとも仲良く挨拶してたので、カナダって皆が皆ファミリーみたいだね。滑りもいい、スピンも美しい。音楽の使い方が良く、PG構成の勝利かな。清潔感もあり好感度大。
★フェレイラ
ベテランのベン君ですが、「いつものPG。いつもの構成」という感じで、もう伸び幅がないのかも、と正直思う。でも大きなミスはしない。かといって光る何かがあるでなく(?)。ゴメン。やはり「可もなく不可もなく」
★ディネフ
ディネフ、ベン、セロフ…と続く旧採点法世代と、新採点法世代の溝は深い(?)どうしても古臭く見えてしまうのよ。でも、ディネフは年齢にしては頑張っています。大きなミスはなくまあまあの動き。カモメ眉、健在?(今日は割と笑い顔かな)

ここで、最終グループの6分間ウォームアップ。
それまで黒一色だった衣装が、急にキラキラ度が増した。やはり出世すると衣装もランクアップだ。おお、大ちゃんの紫衣装の横に本田君の背中丸出し(?)衣装が並ぶ。
ケビンは、スケアメの時と違う派手~な衣装。やはりベルギー国民の期待がかかっているね。ところがこのケビン、アップ中の4回転トゥの着氷で失敗したのか、ふと気付くと膝を抱えてうずくまっている。大変!
やっと起き上がって、でも右股関節辺りをさすって目一杯痛そうにしている。1番滑走なのに…棄権か?と一瞬思う。
そのはるか後方、ジャッジの目の前で、織田君が3アクセルを跳ぶも大転倒。続けて、隣で3アクセル跳んだ大ちゃんも仲良く転倒。SP1、2位のユニゾン転倒にしばしどよめきが起こり、大ちゃんも織田君も苦笑してる。
織田君はその後、何度も同じ場所で3アクセルを跳ぶが、最後まで転倒。段々浮かない表情になる。背面側で、大ちゃんが3アクセルのコンボ。3-3のはずが、2個目が低い2トゥで、一瞬私は「いや~な感じ」になるが、練習時間はこんなもんか、とも思い直す。しかし後で考えたら、この予感が的中したことに。

★ケビン(バンデルペレン)
冒頭の4トゥは、回りきってたように思えたけど明らかに2フット。でも、怪我をしても大技に挑戦するケビンのガッツを、私は買いたい。
痛めた足(股関節?)の影響は大だったようで、売り物の3-3-3はあやうい3-3に。3アクセルも2個ともステップアウト。全ての歯車が狂ってしまったようで実に切ない。それでも随所で3回転を決め、ケビンらしいガッツィーな根性を見せてくれました。ケビンは、ヤグみたいな「観客にオープンに心を開く」魅力がある。TVで見るよりナマがいい。PG構成も豪華だし、リンクを所狭しと良く動いてます。キスクラでは怪我が痛くて座れないらしく、コーチと共に立って点数を見てました。けど、私はなんだか前にも増してすっかりケビン贔屓になった?
★ライサチェク
新PGはニコル振付かな(ミラー?)あれれ。カルメンだよ。「闘牛士SP」の延長線上、といった感じで悪くないんだけど…。とにかくライサは薄い!いや細いの。体が。心配になるくらい細い。イーグルやってても、その「薄さ」のせいか風が吹いたらパタンと倒れそう。だから大柄なのに重厚感は余り感じないの(ほんまかいな)。
ジャンプは全てクリーンに決まり、表現も一通り出来てる。でもなんだろ。沸き立つような感動とか、「おおお」と思わせる何かに欠ける。「優等生滑り」で、先ほどのケビンのアウトローっぽい魅力と真逆っつうか。リンクでは特にその平板さが気になりました。「カルメン」では、今のお若い選手にはどうか?古くないか?と思うが(曲の使い方が20年一昔前というか)。でも、この日は本田君に次ぐ花束洪水。キスクラの好青年な印象は変わらずカワイイ。
★ポンセロ
ポスト・ジュベとして期待の大きいヤニック・ポンセロ。
出だしはまあまあ。ところが、2個目の(?)エレメンツのキャメルスピンに入るとき、トウがスッポ抜けたのか大きく転倒。すぐに演技続行せずうつむいていたので、「棄権?」と思わせる程ダメージは大きかった。拍手に支えられて再開するも、その後このアクシデントが最後まで響き、ジャンプもスピンもサンザン。サーキュラーステップなんて、リンクのはしっこの方になってしまったし。
自分でも、何が何やらわかんないままに終わってしまったのでしょう。女性コーチが厳しい表情で見据えてました(この人、ジュベの前のコーチかな~?違うか)。悪夢のようなフリー。でも私、彼は将来性大だと思うよ~。頑張れ、世界Jr.銀メダリスト。
★本田君
SP4位のポンセロが前述の通りだったので、5位の本田君にはチャンスだったはず。序盤のジャンプはまあまあ好調だったのに、後半スタミナ切れか(足首の痛さのため?)2回転が続く。練習では、冒頭の4トゥを成功させてたらしいので、意外な展開に。
でも、「トスカ」の深い感情はヒシヒシ伝わってきました。ここまで若手が続いたので、やはりベテランの「本田滑り」は違う~と。なんつうか「質」が違う?悲愴なまでに懸命に滑る本田君に、観客も熱い視線をそそぐ。
最後のドワーッと盛り上がる所のスピンでなんと転倒。ケビンも、ポンセロも、同じ箇所(私の目の前)で転倒していたので、氷に穴でも開いてたんちゃうか?と皆で言い合ってました。
とにかく、スピンがまるごと抜けてしまった。悲しいですが、私には、精一杯頑張っていた本田君が忘れられない。何位になろうがいいわ。あたたかい歓声と、花束が降る降る。
さよなら。私がナマ本田君を見る機会はこれで最後。
本田君が14歳の頃から見てきた身としては、とても一言で言えないものがある。とにかく拍手また拍手。
(長いので、大ちゃんと織田君は明日につづく~)
コメント (3)
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