上砂理佳のうぐいす日記

やっと秋らしくなりましたが、まだまだ日中は陽ざしがきついです。寒暖差で風邪をひかないように★

全日本男子 その2

2005-12-27 | 05-06 コンペとショー
★本田くん
 日本フィギュア界を10年近くも牽引してきた本田君の最後の全日本を、殆ど
 無視するマスコミ。いいかげんにしなさい。敬意を払う、ということを知らん
 のか。あんだけ「メダル、メダル」と騒いでおいて!
 SPではジャンプの2ミスが響き、7位で迎えたフリー「トスカ」。
 泣かずにはおれません。全身全霊で滑る姿はソルトレイクの「アランフェス」を
 思い起こさせる。苦悩する姿。訴える姿。そして羽ばたく姿。
 ドラマチックで重厚なまさに大人の表現力。冒頭の4回転は惜しくも手をついて
 しまったけど、あの「本田の4回転」だ。もうここで泣けてしまう。
 アクセルが抜け、フリップが…と、ジャンプミスはあれど、N杯よりずっと良い
 出来でした。いやもうジャンプ云々を言うのは意味が無い。
 最後のステップで大拍手。今までの全てが、万感の思いでよみがえる…初優勝
 した14歳の演技、長野の泣き虫フリー、ターニングポイントになった「仮面の
 男」、「アランフェス」、「ワルシャワ」、「ドンキホーテ」…エトセトラ。
 両手を突き上げて「終わった!」と、最後のポーズをとる本田君に万雷の拍手と
 花束が降る。こうやって書いてても泣けてしまうわ。
 ダグ・リーと固く抱き合い、総合5位。すごーく爽やかな表情でした。
 この後、四大陸選手権へ派遣が決まり、これが本当の最後の試合になるのかな。
 応援しますよ。最後に優勝してほしい。そして「引退セレモニー」を、シーズン
 末に是非、やってほしい。
★織田くん
 初優勝もじゅうぶん可能な位置につけ、でもいつもの笑顔でリンクに出ていく。
 この緊迫した状況でやはり肝が据わっているというか。立派です。
 問題になった冒頭の3-3-3ですが、私にはやはり3ループを回っているよう
 に見える(足元で)。結局ここを3-3-2でおりておけば、最後の3ルッツは
 カウントに入り、問題なかったということ(?)
 でも、勝負に出たわけだからここはそのガッツを買いたい。
 大きく転倒してどこか痛めなかったのかしら…という心配をヨソに、めげること
 なくトレードマークの柔らかいジャンプを跳んでいく。「巻き返しの織田・強心
 臓の織田」はすっかり定着しそうだ。あとのジャンプは危なげなく、最後の3ル
 ッツは体力的にも一番苦しいところなのに確実に。
 「攻めて攻めて」いく姿勢は、やはりお客さんにも伝わる。手拍子に支えられ、
 ストレートラインステップを終え、ラストのスピンでバランスを崩すも持ちこた
 える。
 後半のスタミナ切れはやはり気になるけれど、本当に懸命に滑るその姿から気迫
 が伝わってくる。「座等市」は、これ欧米の方から見たら「ジャパニーズ・スパ
 イ」=「ニンジャ」なイメージでしょうな。やはり良く出来たPGだ~。
 演技終了後、やや浮かない表情だったけど、なんか一戦ごとに「大人の競技者」
 になっていく様子がドラマチックですごい。とにかくやるべき事はやって、キス
 クラへ。バーケル氏は微妙な表情。空気が緊迫する。点数が出た!…一転、安堵
 の表情でいつもの笑顔が戻る。この時点でパーソナルベスト点(?)。
 彼の持ち味はじゅうぶんに出ていたフリーでした。歓声の中を満足気に引き上げ
 る織田君。うわー。なんかもう貫禄だ。
★大ちゃん
 SPの痛恨のミスで織田君に5点の差をつけられ、もはや「崖っぷち」。
 全日本2位でも、五輪代表に一番近い位置にはとどまれるけど、やはりチャン
 ピオンとして行かないと、本人も周囲も納得できないだろうと思う。
 そんな状況下でどうするのか。「男」になれるのか、あるいは「ヘタレくん」の
 ままなのか。ある意味、人生のターニングポイントとも言えるこの大事な大事な
 フリー。さあ…。
 名前がコールされると大歓声。ほんま、今年はブレイクしました(?)。
 ゆ~っくりとリンクを半周し、「自分で小さい拍手」をパンパンッとやって出て
 いった。あ!世界Jrの決勝の時とおんなじ仕草だ!つうことはリラックスして
 るから大丈夫なのか。
 冒頭の4回転は、ウォームアップでは綺麗に降りていたらしいのに、惜しくも
 3トゥ認定でステップアウト。でも転倒はしていない。めげるな!
 3アクセル+3トゥ綺麗に降りる。次の3ルッツ+3トゥはセカンドジャンプが
 2回転…で「あれ?」と思えど、失敗した4回転を「3回転」と審判に取られる
 と、ここで3トゥでは「3つ目の同種ジャンプを跳びノーカウント」になると
 思ったのでしょうか。なるほど。こんな事考えなから滑っていくって、新採点法
 ってイヤだなあ。うーん。
 今日はスピン、ステップ、滑り…すべてがキレ良くスピードもある。
 音楽にノッていて、唄ってる、唄ってる、のよ。スケアメの時以上!
 中盤の見せ場、3アクセルが本当に勿体無かったけど、あそこを2アクセルに
 しておけば…くくく。でも「たら」「れば」は無いのよね。勝負には。
 しかし3ループ、も一度3ルッツ、3フリップ…とスピードが落ちない中を、
 高く軽く跳んでいく。最後のジャンプの3サルコウに2トゥをくっつけて意地を
 見せ、さあ得意のステップだ。もう、私はこの時点でずわーんと感極まって涙が
 溢れ出る。
 大拍手の中をステップで進んでいく大ちゃんのストレートラインは、タイプは
 違えど、ヤグディンを彷彿とさせる。
 ラフマニノフの、悲愴なまでに美しい盛り上がりに併せて加速していく、この
 後半が私はゾクゾクするほど好き。気持ちを爆発させて、観客と一体になって
 滑る滑る。やはりここは、大ちゃんの真骨頂!
 去年までもだいぶ出来てたんだけど、今年はパワーがついたことで「グッ」と
 前面に演技が押し出せるようになった。ラストの変形スピンもすごい軸と加速。
 あー。この最高潮のフィニッシュを五輪で見せてくれ。祈るわ。神様に。
 大歓声のスタオベの中、ペコンと頭を片手で叩く。「あー。ミスしちゃった!」
 という意味でしょうか。
 でも今日は素晴しかったよ。入魂よ。「音楽の化身」みたいに滑ってたわ。
 フリー前に長光コーチに「余り考えすぎず、音楽を感じるままに滑ってごらん」
 とアドバイスされたそうですが、まさにまさに。大ちゃんは、突き詰めすぎると
 駄目なのだ。リラックスして「本能のままに」滑ってるのが一番!
 試合だから難しいけど、その辺の気持ちのコントロールが、今後、勝つための
 最大のポイントかも。
 満足気にキス&クラへ。大ちゃんがリンク上がって、花束を託した男性、あれ
 はもしや竹内洋輔くんでしょうか。あれれ。今は役員として活動してるの?それ
 ともコーチ?ヤマト君のコーチ姿といい、OBの姿も嬉しい。
 舞台裏でガッシと腕を組み、モニターを真正面から見てる織田君も映る。
 なんか二人ともリンク外で仲良くじゃれあってる時は「お子ちゃまっぽい~」と
 思ってたのに、すっかり「闘う男」ではないか。しびれるわ。
 電光掲示板が表示されるまで、大ちゃんは余裕が感じられた。
 そりゃこの出来なら「逆転で勝った」と思うのではないだろか。普通。
 ただ2ミスがどの程度響くのか不安…とTESはまあまあ、PCSは高得点。
 が、「順位 2」と出た瞬間、両手で顔を覆ってしまう。
 私は最初この映像を見た時は「負けちゃったんだね」と結果を知ってたので、
 なおさらのこと胸がつまった。3点差…SPで失敗しなければ、の点差。
 FSは1位。でも負けた。負けたのだった。
 長光コーチが「よくやった。頑張ったよ」と、懸命に背中をなでて慰める。
 まだしばし呆然とするも、「先輩」としてここで涙をさらす訳にはいかないの
 だった。ググッとこらえて席を立つ。
 楽屋裏の織田君は歓喜の表情でコーチと抱き合う。
★中庭くん
 最終滑走は「健ちゃん」。
 王子・健ちゃんも24歳。GP大会に出てほしい。寂しいわ。
 振付をD・ウィルソンに変えてからは、ノーマルな滑りからぐっと個性派に
 なった。昨年と同様の「指環」ですがかなり衣装も凝って、マイム(演技力)も
 抜群。ベテランさんの味がある。
 4回転トゥはSPに続き成功。今大会、唯一の「クリーン4回転成功者」として
 讃えられるべきですか。あとのジャンプがいまひとつだったけど、最後まで滑り
 ぬきました。
 四大陸派遣が決まったので、織田君、本田君、と3人でまた「3枠」をお願いし
 ましょう(あ、健ちゃん、短くてスマン)。

…と、男子も存分に見応えが。無視するTV、本当に情けない。特に大ちゃんと織田君の一騎打ちは、昔々の「五十嵐VS松村」の全日本王者争いをホーフツとさせましたわ。いやそれを越えてたか。はるかに。
結局、大ちゃんは五輪へ。織田君は世界選手権へ。それぞれ1枚ずつ切符、ということで、連盟側は丸くおさめようとしてるのだろうか(私にはそう思える)。
采配のバランス的には良いな、と思うけど、そして織田君もこれでまたはりきってくれる、と思うけど。もちろんしこりは残る。女子も男子も素晴しかっただけに。
選手の演技の「キラキラした宝石」を、大事に脳内記憶ビデオに保存して、この腹立ちをおさえるしかないのか…。
コメント (2)
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全日本男子 その1

2005-12-27 | 05-06 コンペとショー
ワイドショーでは相変わらず的外れなフィギュア報道ばかり。「真央ちゃん」と「ミキティ」しか知らないコメンテーターがしたり顔で「オリンピックでは、5回転跳んじゃえば金メダルだよ~。あははー」なんつってる。

男子の採点ミス問題は何故、責任者が辞表を出さないのかも不思議。マスコミ向けの謝罪会見だけで、最終日に会場で選手・観客に説明や謝罪がなかったというのも不思議。CSの男子フリー再放送では、前日の中継放送と全く同じ編集内容を流し、織田君の得点が出る場面以降、「その後、優勝者が入れ替わりました。云々…」というテロップを貼り付けただけ。「テロップ流しときゃいい」という安易な発想。寒くなる。
日本スケ連には、抗議メールが殺到してるらしいけど当たり前だって。とにかく私が欲しいのは「心からのお詫び」だ。

…立ち直って、男子フリーの感想を。
なんたって関西のTVは男子を「まるきり無視」である。本田君が全盛期の頃はまだしも、近年は「全日本」そのものの放映が無かった時も多い。CSも「うーん」な点は多々あれど、とりあえず下位の選手もノーカットで映してくれた所は○。今回、素晴しいな~!と個人的に思った人を。
★小塚くん
 フリー初見参で、私的に楽しみにしていた小塚くん。
 SPは失敗したものの素晴しいFS。とにかく「基礎があるので、きっちり全て
 が“さわやかに”出来る」という印象。
 16歳にしては鮮やかなステップワークや確実なジャンプ。癖の無いスケーティ
 ング。高い3アクセルも2個入って、満面に笑みでした。
 PGが速いピアノ曲で、これに併せてテンションを落とさず滑るのは大変だと
 思う。あとは芸術表現が出来てきたら…いや、この人はまさに「大器」よ。
 サラブレッドとかそんな呼称はいらないわ。世界ジュニアでは、ウスペンとの
 対決が楽しみ。観客も大拍手。
★柴田くん
 「和製ウィアー」の呼名に恥じない、しなやか+柔らかな柴田くん。
 うーん。確かにジョニー的!? タッキーばりの綺麗な瓜実(うりざね)顔と、
 細い体に華やかなコスチューム。ジャンプはループ系が得意みたいだけど、
 やや不調。「マラゲーニャ」なのでもうすこし覇気と速さが欲しい。
 今後、彼は王子様なビジュアルでガンガン売り出していくべきでしょうね。
 華麗なビールマンスピンも素敵。キス&クラでのナイーブな表情も可愛い^^
 柴田ファンが多いのも頷ける~。いや有難う。
★無良くん
 お父さん(元日本代表選手の無良隆志氏)が、ずっとコーチしてるのかと思い
 きや、重松さんなんですか。この端正な紳士は誰かと思ったー!なつかしい。
 でも親子でいつも一緒より、そのほうがいいのかも。
 14歳で全日本出場ですが、背が伸びて着実に成長してる~。そして、本田君の
 滑りに似てる!滑りやジャンプとか全てが・・・お父さんはダイナミックな男気
 系の滑りであったと記憶してますが、御子息は余り似てないかな。表現力もなか
 なか秘めてそうで、良い振付家に今後出会ったら大飛躍しそう。
 この人も基礎があるだけに見てて引き込まれます。キス&クラの無邪気な表情が
 ナントモ可愛らしい~。
★神崎さん
 濱田コーチと新コーチ・ヤマト君が見守る「京大のヨン様」こと神崎さんを
 やっと拝めました。あああ~端正で正確な滑り。しかしこの黒いマントは…オペ
 ラ座の怪人の表現なんだけど、いかがなものか(でも面白い)。
 この日はジャンプ不調でつらかったけど、今後も見たい一人になりました。
 「大人」のプログラムに期待。
★南里くん
 シニアに上がった南里君は、髪にパーマをあてた?イメチェンかしら。柔らかい
 雰囲気。滑りそのものは、少々体が固めでストイコ的なんだけど、この人はもっ
 ともっと出来るような気が。兵隊さんの衣装が堅苦しく思えたるのかな。
 スピードに欠けジャンプもいまひとつ。来季に期待。
★大上くん
 大ちゃんの高校の後輩にあたる(だよね?)倉敷出身の大上くん。確かジュニア
 最後の年ですよね。コーチが以前に宮本さんと組んでたアイスダンス選手の有川
 さんに代わって…とWFSで読んでたけど、抱き合って喜ぶ姿が嬉しい。
 初出場で最終組!総合6位!良い出来でした~いや、あのアブトが五輪で滑って
 たラフマニノフのピアノ協奏曲なんですよ(大ちゃんは2番だけど彼は3番)。
 アブトの感動的なフリー思い出しちゃった~。滑りは大ちゃんに似てる部分も
 あるのかな。音楽的な流麗な身のこなしで、ジャンプも「大丈夫かなー」と
 思えど不思議に(?)おりてしまう。なんかマジカルな人だわ。いや今後も
 期待。
(つづく)
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