香が散る

本を読むのが大好き、少し前からノロノロですが走るのも好き
そんな、代わり映えのしない、でも大切な日々を書き綴っています

岸辺の旅

2015-09-28 22:18:13 | 本のこと
湯本香樹実さんの
『岸辺の旅』



きみが三年の間どうしていたか、
話してくれないか----
長い間失踪していた夫・優介が
ある夜ふいに帰ってくる。
ただしその身は遠い水底で
蟹に喰われたという。
彼岸と此岸をたゆたいながら、
瑞希は優介とともに
死後の軌跡をさかのぼる旅に出る。
永久に失われたものへの
愛のつよさに心震える、
魂の再生の物語。


不思議な不可思議な出来事から始まるのに
自然にすっと小説の中に入っていく
生と死が隣り合わせのようで
絶望と希望をいったりきたりする
海の底にいるような静けさの中で
忘れてしまえば楽になるのに
これからも続くひとりの時間を想像して
余韻にひたり、いつまでも小説の世界から
抜けきれず、眠れず、夢をみる時間
苦しいけど、とても好きな小説

映画化されるので、文庫の表紙が主人公たち
映画『岸辺の旅』
浅野忠信さんと深津絵里さんのイメージで読んでしまったけど
きっと、ぴったりなんだなと思う

湯本香樹実さんの小説は
『夏の庭』、『ポプラの秋』、『西日の町』、『春のオルガン』と
全部とても好きな本ばかりだけど、
今回の『岸辺の旅』はいつもよりさらに静かで
胸に残ったものが尾をひくような感じだった