中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

酔っていたので・・・

2008-06-08 08:27:03 | 身辺雑記
 事件の容疑者が警察の取調べの際に、「酒に酔っていたので覚えていない」と言うことがよくあるようだ。最近起きた事件でもそうだった。

 1つは名古屋市のスケートクラブの56歳のフィギュアスケートコーチが、13歳の教え子の中学生に性的暴行を加えた事件で、この男はそのように言って容疑を否認したという。もう1つは大家に野良猫に餌を与えないようにと注意された69歳の男が、腹を立てて大家を刺殺した事件で、この男もやはり同じような供述をしているとのことである。他にも電車内で痴漢行為を働いて捕まったものが、よくこういう弁解をする。いずれも犯行当時は飲酒した後で、酔っていたことは事実なのだろうが、果たしてやったことを覚えていないということはあるのだろうか。

 私は酒をほとんど飲まない。若い頃は宴席などで少々量をすごしたことはあるが、気分を悪くした程度で泥酔したことはない。だから「酔ったから覚えていない」ということが分からない。本当なのだろうかと酒をよく飲む卒業生に聞いてみたが、彼は否定した。記憶がぽつぽつと途切れることはある。例えば飲んで帰って酔いから醒めた後で、店で飲み代を支払ったかなと思い出せないことはあるけれど、自分の行動をまったく覚えていなかったことはなかったと言った。

 個人差があるから何とも言えないだろうが、記憶がまったくないほど泥酔した者が、性的暴行をしたり、殺人を犯したりできるものだろうか。仮にそのときの記憶が曖昧であったにしても、犯行時にはかなり明確な意志はあったのではないだろうか。裁判の際には弁護人が、犯行当時に容疑者は酔っていたために、心神耗弱状態にあったと主張する余地があるのだろうが、どうも納得できない。

 昔から日本では「酒の上でのこと」を大目に見る傾向があった。酔うとがらりと人格が変わってしまうような例は私も何度か経験したことがある。ある時、楽しく談笑しながら飲んでいた相手の先輩教師が、突然「それは違うんじゃないか」と言い出し、後はねちねちと苛めるような調子で説教じみたことを言い募り、不愉快きわまる思いをしたことがあった。そのようなことが2度ほどあったので、以後はその教師とは酒席で向かい合わないことにした。この教師は酔いが醒めた後で私に絡んだことを覚えていたのかどうか。常々若気の至りの言動のあった私を苦々しく思っていたのが、酔いが深まるとそれが思い出されて、攻撃的な態度をとるようになったのだろう。そう思えば済むことだが、楽しい場が一転して面白くなくなってしまうのは、こちらとしてはたまったものではなく、酔っているのだからと寛容な気持ちにはなれないものだ。

 酒席での絡みくらいならともかく、悪質な犯罪行為を酒に酔っていたのでと言い逃れしたりすることは許してはならない。少女に対する性的暴行にしても殺人にしても、悪質な犯行は被害者のことを思うと、たとえ酔っていたにしても厳しく罰するべきである。