中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

風評に踊る

2008-06-09 08:10:56 | 身辺雑記
 十和田湖畔の白鳥から強毒性の鳥インフルエンザウイルスが検出されたことが原因で、湖周辺のホテルなどでキャンセルが相次いで、修学旅行などの団体客は大幅に減り、観光シーズンに入った現地では打撃を受けているとのことだ。その上に湖の魚も危ないという風評も広がっているらしい。宿泊客からは鶏肉や魚も怖いと言われ、メニューを変更したというホテルもあるそうだ。土産店も閑古鳥が鳴く有様らしい。

 発見されたビールスは強毒性のH5N1型で、これが人から人へ容易に感染するように変異すると甚大な被害が発生するという見方もあるようだが、魚には感染しないから、湖の魚が危ないと言うのはまったく根拠のないことだ。誰が言い出したのかは知らないが、おそらくはハクチョウは湖にいる、それがインフルエンザビールスに感染したら、そのビールスは湖水に広がって魚も感染するだろうという、もっともらしく粗雑な素人考えが出たのだろう。

 このような風評被害はこれまでにもよく聞くことだ。週刊誌に「中国食品が危ない」と書かれたために、取引を断られて倒産した中国食品という会社があったことは前に書いたことがある。その週刊誌は「中国産食品」と書けばいいところを「中国食品」としたために誤解が生じたのだが、倒産した企業にとってはたまったものではない。その週刊誌の記事は知らないが、よく読めば特定の会社のことを言っているのではないことはすぐに分かるはずだろう。それが中国産の食品の「危険性」が喧伝されている頃でもあって、たちまち浮き足立ってしまうところに愚かしさがある。冷凍餃子事件が起こると、他の何でもない中国製の食品までも忌避し、さらには中国旅行までキャンセルが相次ぐようになるのは、滑稽としか思えないし、このように何かにつけて浮き足立って付和雷同してしまうのは、日本人の性格なのかと悲しく思うこともある。

 この情報過多の時代にあって、情報を正しく受け止め冷静に判断することがなければ、いつまでも愚民の段階に留まるだろう。それはある種の人間や組織にとっては都合のよいことなのかも知れないが、根拠のない風評に踊らされることによって理不尽な被害を蒙る者もあるのだということも考え、軽挙妄動することのないように自戒するべきだろう。