田舎からの電話

2009年02月15日 | 出来事 -

田舎の人から連絡が入った。
両親が仲良くしていたお宅のおばさんだった。
田舎では有名な家で、農業と共に、漬物屋を営んでいる。
年齢は、おそらく70代半ばぐらいだろう。
しっかりとした口ぶりで、半時間ぐらい携帯で話をした。
本当に世間話で、何の中身もない・・・なぜ電話がかかってきたのかと思うぐらいの内容だった。

去年早くにご主人が亡くなられ、それを知らなかった私は、両親の代理として
昨年秋「ご香料」を送った。
それは、私にとって当然のことだったので、全く意に介していなかったが・・・
それが非常に強い印象を残したらしい。
それで、電話がかかってくるようになった。


私が子どもだった頃、きっと何度も会って、かわいがってもらったのだろう。
しかし、大人になってから、お目にかかった記憶は、たった1回しかない。
父が、当地で暮らすようになってからも、田舎を恋しがるので、3ヶ月に一度
帰省をしていたのだが・・・
そのときに「漬物(梅)」などを、その家に買いに行っていた。
父にとっては、それもまた口実で、そのお宅に行きたかったのだろう。
当時、ご主人はベッドで寝たきりになっており、何度行っても会うことなど
決してかなわない状態ではあったが・・・
帰るたびに、名前を出していたお宅ではあった。
おばさんは、入院している病院で、ご主人の看病に追われていた。
だから、いつも縁のない(あまり知らない)お嫁さんが対応してくれた。
何の話もしないで、ただ梅を買うだけだったが、父はいつも満足顔だった。



電話をくれたおばさんが言う。
家族が、たくさんいても、昼間は家で一人ぼっちで・・・
こうしていたり、ああしていたり、近所でつきあっているのは一人しかいない、
私ももう齢だからね、ところで梅でもおくろうか、などと、・・・・・
本当に、いろいろな話をした。
決して「ぼけている」とは思わないが、何度か電話をもらい、同じ話を繰り返す。

「さびしいのかな」
ふっと、そんな印象がして・・・

年齢の全く違う、それも血縁関係の全くない人なのに、
何故か情がわく。
私自身が、さびしいからかもしれないけれど、
言葉の端々に、「何か」を感じてしまう。


誰も彼も人間は、いつか必ず死んでいかなくてはいけないし、
それを思うと、無常観におそわれる。
家族がいても、そういう話は、あからさまに言うわけにもいかず、
おもしろおかしく話したり、さりげなく話したりするものだろう。
齢をとった人間の感情など、若い人には完全に理解することは難しいとも思う。

普遍の摂理には、誰も、はむかうことができない。
ただ、それを受け入れるだけである。


私は時間つぶしのお相手だとしても、おばさんの脳裏には、
私の両親が必ずいるようだ。それだけの長い歴史がある。
今もまだ「私の両親が生きている」ような関係で話している。
だから、情がわいてしまうのだろうなぁ。

昔と変わらない感覚で話してくださるので、そのいたわりの心が有難く、
また、いとおしく聞こえてくるのだろう。
不思議な感覚だな~と思った。


「帰郷したら、必ず顔をみせてね」と言われた。
有難いことだ。
心が、あったかくなった。