カナダのロンドンで開催された狭いリンクの「ワールド 2013」。
パトリック・チャン選手の三連覇は すごい と感じるけれど、
やはり「デニス・テン選手」 が、新鮮で、素晴らしすぎた。
その存在と演技で、(私の中では) 全部 持っていかれた感じだ。
デニス・テン選手を初めて見たのは、バンクーバー五輪のSP。
ちょうど高橋選手の直前の滑走で、何の情報もないままだったが、
印象的な箇所が二つあった。
ビールマンスピンをしたことと、SPの後半のステップ辺り(?)で
両手をぶんぶん振り回して、高速の振付を音楽ノリノリでやったこと。
その感性が「いいなぁ」と感じたのが、最初の出会いだった。
SPの曲は「シング・シング・シング」 だったと思う。
今から思えば、あの時は 16歳だったのか・・・・と。
彼の黄色いジャケットは今も覚えていて、第一印象が強く残った。
その「両手ぶんまわし高速アクション」 は、音楽との一体感で、
彼の可能性を見た気がした。
バンクーバーオリンピックでは、無表情で、下唇が切れて血が滲み、
「リップクリームを」 と 変に気になったのが、デニス・テン選手だった。
それから、何年か、彼のプログラムをいくつも見てきたが・・・
今回の演技は、過去最高だった。
「アーティスト」 は、音楽で描いていく “素晴らしい映画” だったし、
FSでの曲は、とても気持ちの良い音楽だから、観ていても最高。
映画の世界観を、上手に表わしていたと感じた。
プログラムの細やかな表現と、キャラクターが合致していたと思う。
最近は、たった一年で、スケーターの存在感が がらっと変わる。
また、プログラムの選曲・振付で、大きく影響すると思う。
四回転は必須となってしまい、ジャンプが大きく左右されるように
なったことで、選手の競い合いも 「 ジャンプ重視 」 になった。
たった一年でも、・・・ 一年あれば、的確なジャンプコーチがいたら、
四回転を自分のものにできるスケーターも多い。
ワールドや五輪などは、「メンタル」と「経験」が命だと思うが・・・
精神力の強い選手が出てきたことで、新しい経験値が出来上がる可能性がある。
ソチまで、あと一年。
其々の選手が、精一杯の設計プランを掲げて、進んで行くだろう。
今から、ソチ五輪が、とても楽しみになってきた。
日本は三枠ゲットなので、三選手が参加できることになったので、
何よりである。
頑張ってくれた日本男子三選手に、心から 「ありがとう」 と言いたい。
高橋大輔選手を応援している私としては、今季はいろいろなことを
感じてしまった。 私自身にとっても参考になることが多かった。
彼の最終目標は「ソチ」だから、今回は通過点として考えるとしても・・・
ワールドの高橋選手のスピンは とても良くなったと感じたが、
課題を抱えてしまった最終結果を手にしたのは事実だ。
新しい環境と新体制、ルーティンの練習のあり方、迷子になりやすい3A、
四回転ジャンプの成功率のあげ方、競技会に向けたメンタルコントロール、
コーチングと自主性との折り合いのつけ方・・・・。
何が正解か わからないからこそ、慎重に、全てを設計していく必要がある。
現実をちゃんと正視して、進んで行かないと、ソチでの結果はついてこない。
彼のポテンシャルは、まだまだトップをねらえる位置にあるからこそ、
これからの一年が大切になるだろう。
これらは、今日の 「ワールド」 に向かう高橋選手から、感じたことだ。
ご本人の性格から、「勝ちたい」 と思うのは当然だと思う。
しかし、決して 思いすぎないで (プレッシャーにすることなく)、
ソチの結果にも 過剰に固執せず、ただ 納得できる時間を過ごしてほしい。
「言霊」 というからに・・・ 一般的に (人間の精神構造的には)
公に口に出した途端に、自分自身の潜在意識に深く根付いてしまって・・・
気がつかない部分で、全てを支配されてしまう「潜在意識の強さ」 がある。
意識も、言葉も、強く言い聞かせて、感情と折り合いをつけて、整理して
行動につなげていかないと、影響を阻むことができなくなる・・・。
本来、心の中にあるものと、行動というものに、矛盾が起こることは避けたい。
すべて、無意識の中で影響が出てくることがあるので、極力 ポジティブに
己の意識につなげていくことが好ましい。
本当の意味での自主性!
・・・・・自主的に、且つ、・・・ポジティブに、
80%近い自己の潜在意識をコントロールできるのが、何より大切なのだ。
コーチングの自主性は、コーチの手中にあり、コーチの手のひらの上で
コントロールされていたり、自分以外の何かを潜在的に頼ってしまったり、
ここぞという時に「我」の力量を発揮できないことがある。
その要因は、本当の意味での自主性が基軸になっていない。
自滅する理由の多くがこれだ。
自分独自で、モチベーションを維持していけないパターンでもある。
とにかく、全日本のフリーは圧巻だったけれど・・・
相対的な総括では、あらゆる調整が、微妙に うまくいかず、負荷がかかり、
高橋選手の今季シーズンは、学ぶところが多かったのではないだろうか。
今後、修繕すべき部分は改善し、納得の最終現役シーズンを迎えてほしい。
27歳のバースディから、「ソチへの道」は、はじまった・・・。