足早に次のアポに向かう私を、会社のデスクが飛びとめた。
「緊急連絡先を教えてほしい」ということだった。
その理由は、
最近、二人が同時期に体調を崩して、倒れてしまったようで、
その時に、「連絡に困った」という説明を受けた。
その少し前には、こんなこともあった。
明らかに「過労死」と思われる一人の契約フリーランサーが、
突然、亡くなったのだ。
徹夜続きの環境を、ずっと課せられ、充分なる心身の休息時間が
与えてもらえなかったら・・・そうなっても不思議ではない。
私のように、自分だけで企画をして、単体独立的に行動して、
採算も自分ひとりでやっているメンバーなど、ほとんどいない。
だいたいがレギュラー的な仕事を抱えて、Project チームを組んで、
仕事を詰め込んで、詰め込んで、・・・スケジュールは過密で、
ギャランティは少ないーという矛盾をかかえた労働体制だ。
突然、亡くなった人は、まだ若い人だった・・・と聞いた。
私は、面識がなかった。
しかし、それに至るまでの流れは、想像することが容易だ。
「緊急連絡先?」
「私は、依頼した契約書も終結してもらえてないフリーですよ」
と、説明をしたら・・・デスクは・・・
「倒れた二人も、フリーの人です。連絡するのに困ったのでー」
連絡先がわからなくて「困った」のは、会社側の問題だ。
きちんと契約書を交わさず、個人情報もきちんと管理していないで、
労働条件もあやふやなまま、過労を課すからだろう・・・と、
私は、反射的に感じたけれど・・・それはデスクのせいではないので、
彼女を責めることになるのはいけないと思い、ぐぐっと、全てを
心の中に押し込めた。
連絡に困ったからーという理由は、会社側の立場だけを優先しての主張だ。
きちんと労働条件を結んだ人間(契約労働者)であれば、自宅も、連絡先も、
把握していて当然のことだろうけれど・・・・
会社の現場で働いているメンバーが倒れて、「連絡に困った」からと言って、
一方的に緊急連絡先を教えてほしいーというのは、なんだか釈然としない。
その前に、「やることがあるだろう」というのが、私の考えだ。
これまで、何度となく、主張してきた根本的なことである。
現況、会社のメンバーは、私のプロフィールも、自宅連絡先も、
何も知らないだろう。
私の企画が通り、スポンサーがついて、仕事が次々に決定するからだ。
大きなバジェットの仕事が決まれば、それでよいという・・・そんな
判断基準で、人を安易に受け入れているからだ。
もちろん私自身についてのことだけれど・・・(笑)。
私が社長だったら、こんな安易な状態で、仕事はしない。
また、メンバーが契約書を要求したら、きちんと応じるのが、
普通だと思うからこそ、弊社は「不誠実で、異常だ」と(いつも)思う。
いつもながら、言いたいことはわかるし、応えたいとも思うが、
それを阻む「何か」が、私の中に確固としてあるのは切ない現実・・・。
ワンクッションおいて、少しばかり 抵抗したくなる自分がいる(笑)。
それだけの企業なのだと、いつも感じる。
この意味は、「この程度の企業だ」というニュアンスだ。
愛情のかけらさえ感じられないのは、本当に哀しいことだ。
「絆」の重要性が叫ばれる昨今に、こんなに(一方的)要望を重ねて、
わがままな体制でやり過ごせると思ってほしくないものだ。
良い若手もいるのに、・・・また、いつものように、
すぐ辞められてしまうのだろうーと、勝手に想像している。