現世の父

2009年03月03日 | 雑感 -
今日は、3月3日。 
雛祭りの日。


子どもの頃、本当に幼少の頃・・・
父が、四国の実家で「雛人形」を飾ってくれた。

何段の雛人形かは覚えていないが、五人官女がいたのは覚えている。
赤い布を引いて、その上に飾っていく人形は、かなり大変な作業である。
時間を要するイベントだった。
官女ごとに装いと持ち物が違っていて・・・
私自身は、そのあたりの飾りの手伝いをしたのを、おぼろげに覚えている。


実家の二階には、色のはげた・・・あるいは、ねずみに鼻をかじられた人形が、
木の箱の中で、ひそかに「時」を刻んでいるのだろうか。


小学校にあがって、両親の仕事が忙しくなったりしてくると、
「雛人形」を飾ることはなくなっていった・・・。
私は・・・どうでもいいやぁ~と思っていた反面、恋しいと思う気持ちもあり、
不可思議なイメージが残像のように残っている。



今日は、(私にとって)父のような“あったかさ”を持ちえた存在である人に、
雛祭りを祝ってもらったような感じだった。
その人とは、20年弱にわたるお付き合いである。
仕事で出会ってからは、ず~っと1年に1~2度ご飯を食べる関係だったが、
突然何を思ったか、(10年以上も前になるが・・・)
私の将来を憂い、強制的に「お見合い」をセッティングした張本人でもある。
「だって、そうだろ。ずっと一人でいるつもりなのかぁ~!!」
本当に父親のような存在で、私は大好きな人だ。

数日前に突然メールをもらって、たまたまランチをしたのだが・・・
(それも3時間ものながぁ~いランチをしたのだが・・・)
とにかく会えたし、(そのうえ)ごちそうになったし、
ほんわかした雰囲気をもらったし、いろいろと幅広いお話ができたし、
とてもとても楽しく時間を過ごさせてもらった。
充実した時間だった。
場所は、西麻布の隠れ家的フランス料理――。

菱餅も白酒もない、ゆったりとした桃の節句の日の「和やかな時間」だった。



一緒に帰るバスの中で、唐突に
「もう今年70歳になるんだよ」とぽつりとつぶやくその言葉に、
私はビックリしてしまった。
自分も齢をとるはずだ。

あえて、厳しい質問をしてみた。
「それぐらいの御年になると、もう先はどれぐらいかな~とか思います?」

「そりゃ、そうさ。だから、やりたいことは、やらなくちゃ!っていう想いが
 より強くなるんだよ」

この私でも、そう思うのだから、「きっとそうだろう」とは思ったが・・・
おそらく想いの重さや質感は、個々に、皆それぞれに違うものだろう。

今日のお話では・・・
実際、精力的に活動しているし、新しいアイデアや異文化交流などもふまえ、
これまでにはない熱意をもって、いろいろなことに取り組んでいるようである。
新しく「どうしてもやりたいことがあるんだよ」という話もあった。
齢なんて、関係ないよね、ホント。
人間として、刺激をもらったような気がする。
はじめようと思えば、いつからでも「はじめられる」。

今日は、穏やかな時間の中にでも、お互いの近況を話し合って、
その背景にあるものも、なんとなく感じ取ることができたような気がした。



しかし、何よりも、嬉しいことは・・・
私にとって、「こういう人がいる」ということである。
しみじみと感じた。
時々でいいから、会いたい・・・と。


「ぽっくりと逝かれると哀しいし、淋しいし、
 私が(きっと)すごく後悔するから、時々連絡しなきゃ~ね!」
そうちゃかして本心を言ったら、優しく笑ってくれた。

別れ際の光景を目に焼き付けながら、
次の機会までは、それを脳裏に刻み込もう。

大好きな人とは、やっぱり「会いたいものだから」。
これからも、どんなに忙しくても、会う努力を怠らないようにしたい!