平成26(行ケ)10204 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成27年3月11日 知的財産高等裁判所
この裁判は某社従業員が単独で発明したにもかかわらず、同僚も発明に参加したということを不服として損害賠償を請求したものです。
会社の命令で研究開発に従事した場合は、職務発明になるので、現在の特許法ではその私用による対価は会社が受けるものですが、誰が発明したかは会社の中での評価にかかわってきます。おそらくそのことで、裁判になったのでしょう。
しかし、たった150万円とは実にしょぼい賠償金です。懲罰的なものを課す項目がないからと言っても、150万円では。慰謝料の請求も棄却しています。
裁判を起こしたことがない人にはわからないでしょうが、1件当たり30万円の着手金(多分特許名義変更の訴えと相手への賠償請求の訴えの2つ以上はあるはず)、1回の期日で弁護士日当5万円(おそらく知財高裁まで20回以上の出廷)、申立書、答弁書を書くのに200時間以上かかっているはずです。本人も休暇を取って出廷しているはずなので、200-300万円の損失が出ているはずです。
この裁判は、実はかなり幅広い影響があるのではないかと思っています。例えば、STAP細胞事件では誰がどの部分を担当したのかが明確になっていたから、他の共著者は難を逃れたところがあります。一方、一般の論文の不正事件では研究室単位で論文を書き、教授が名前を載せます。
本当に教授がかかわったかというと、そうでないケースもかなりあります。准教授が科研やNEDOで大型資金を集め、助教や大学院生に実験をやらせ、出てきたデータを准教授がまとめ、最後に教授がサインして出すということもあります。
また、教授が資金を集め管理を助教に丸投げすることもあります。困るのは後から割り込んできて、名前を載せろというものです。
本件もハラスメントの問題もあるのでしょうか、推測の域を出ませんが。
中村裁判と言い、知的財産権に係るものはひどい扱いを受けているのが現状です。裁判所は法に従い決めるだけですから、裁判所の責任ではないですが・・・
もう少し発明者に敬意を示せるように法改正をしてほしいものです。