『スペース・ターミナル・ケア』初通し。稽古はこれまで一度も観ていない。作者登場はやはり現場にプレッシャーを与えてしまうようだ。栗山民也演出は「演出家が戯曲を読みこむ」ということの一つのお手本だろう。今のところ過剰さより抑制の方向性が選択されているようだ。あと六日の間にどれだけより豊かな世界を築いてゆけるか。俳優諸氏の頑張りにかかっている。
野田秀樹『The Diver』。前半はいろいろ感心。丁寧であることの豊かさ。途中から拡散ぎみ。刑事ドラマということもあってか、しきりにつかこうへい『熱海殺人事件』を思い出す。事件を再現し、犯行の瞬間の輝きの体感を求める『熱海』は「現代能」の構造を備えていたか。ちなみに本作は<現代能楽集IV>とあるが、十五年前<現代能楽集>と銘打つシリーズを始めたのは私である。