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スペインのペドロ・アルモドバル監督の最新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』を観る。
『オール・アバウト・マイ・マザー』のような感情移入を誘うストーリー展開ではないが、シンプルさの強みがある。ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアの二人だけでほぼストーリーが進む、端正な展開だ。
二人が年齢的に、まさに私の世代であるから、身につまされる、ともいえる。若いときに観たらまた違う印象なのだろう。
シネマスコープの横長の画面サイズを見事に使い切り、原色も多用する画面の色彩の鮮やかさ、編集のカッティングの絶妙さにも、目を見張る。職人というか、迷いのない作り方なのだ。さいきん私はあらゆる「劇伴」の音楽にうんざりさせられることが多く、この映画も、ああ、やはり音楽はかかるか、とは思ったが、いつものアルモドバル映画のテイストを補強するが、それ以上ではなく控えめで、邪魔にならない。スペクタクルな動きのない映画だが、だからこそ、映画館で観るべき映画だ。
部分的には紋切り型で、また、せっかく出てきた興味深い事柄があまり深追いされない場合もあるのだが、確かに、あらゆる要素を描くために長くしなければならないというわけではないだろう。
話題作のはずだったが、客席はすいていた。あっという間に一日一回だけの上映になってしまうだろう。早めに御覧になることをお薦めする。
無駄のないまとめ方を褒めておきながら言うのもなんだが、こんなふうに、「ずっと観ていたい」と思わせる映画は、滅多にないのである。
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