Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

「演劇大学 in 石川」、松任で開催。

2015-08-31 | Weblog
これは私が数年間使用していたウエストバッグ。
ファスナー部分がいかれたので破棄処分することにしたが、ここしばらく日中はずっと稽古場か劇場にいたので、新しいものを買いに行く暇がない。
石川県白山市松任のホームセンターでついに新しいものを購入した。さらば「Golden Bear」ブランドのウエストバッグ君。

なぜ松任か。日本演出者協会の「演劇大学 in 石川」の講座のため滞在していたのだ。
金沢ではない。三駅隣の松任である。四日間松任から外に出ていない。二日目こそ昼間の時間帯に少し余裕があって書き物仕事の合間に買い物に行くこともできたが、多い日は一日12時間ぶっ通しの講座で、ただただ石川県の皆さんと演劇を通して交流していた。
十二万とも三十五万人ともいわれる史上最大の国会前デモにも参加できなかった。

講座は四日間にわたって「戯曲+演出」を指導するというもので、二人の「劇作兼演出家」を指導、彼らの短編戯曲を推敲して修正し、作者が演出する発表会上演も面倒を見る、という恐ろしい企画である。演出者協会の企画だが劇作の仕事が多くを占める。
指導する二人のうち一人は、高校生である。上演も、地元の高校生四人のチーム。
もう一人は五十過ぎの地元演劇人、社会派と言われている人らしい。

高校生チームはなかなか台本がまとまらないので三日目の午前から一気に本人と一緒に手を入れ、「君がやりたかったのはこういうことだろう」というやり方で、大なたを振るって直す。と言うか、一から仕組み直す。見事に治療に成功し、もともとの目標より遥か高みに至る。私はほとんどブラックジャックである(川村毅氏の新作は『ドラマドクター』というタイトルだが、きっと演劇版「ブラックジャック」なのだろうと勝手に予想している)。もちろん作者本人の演劇に対する情熱あってのことで、けなげな高二・高三の出演生徒たちの熱演もあって、発表会では、観客ほぼ全員、涙なしではいられない感動ものの出来映えとなる。みんながんばった。
女子高校生たちがオオカミの扮装をするのだが、オオカミ衣裳の下の手足が素肌のみで、一瞬何も着けていないように勘違いする輩もいたという。そういう不純なことではいけない。私が仕組んだみたいではないか。いや、仕組んでいたとしてもだ。うむ。
五十過ぎの社会派氏のほうは、もとのテキストをなるべく少ない修正ですむように意味づけを明確にし、なんとか現場の方向性を打ち出す。イプセン『民衆の敵』のように始まるが、本人は読んだことがないという。ともあれ「喜劇」と考えればいいのだ。
十二年前の私の金沢市民芸術村でのワークショップの受講生で五年ぶりに芝居をするというA君が中心の役を担って熱演、現場も楽しくなってきてもう大丈夫と思っていたら、私が高校生を見ている間の彼らの自主稽古で社会派氏が暴走、改悪を重ねてガラガラと崩壊。呆れつつ発表会寸前に、手直しする。なんとか間に合う。本人も自分のあやまちにすぐに気づく。体験としては無駄ではない。そしてA君との再会は喜ばしい。彼はこれから演劇復帰するだろう。
それにしても現場で演出家の指導をするというのは一体どういう作業なのだろう、と思いつつ、それをやる。

金沢演劇界のリーダー、二十年来お世話になってきている黒田百合さんのお膳立てでもあり、とにかく真面目に仕事する。
自分の本番をすっぽかしての石川行きだったが、この日程しか無理だったのだ。
ほとほと疲れきるが、幸い評判はよかった。がんぱらなければできなかったことをがんばって成し遂げられたのだから、参加した人たちは胸を張っていい。

別な講座を流山児祥氏が担当していたので、毎晩少しは飲みに行くことにはなるが、松任ではノドグロの顔は見ず。こんなに店のない町というのは、すがすがしくて、いい。それにしても五十を過ぎてからよくあることだが、とにかく毎朝早く目がさめてしまって、いけない。

そんなわけでようやく帰京、久しぶりに『バートルビーズ』にご対面となる。
コメント (1)
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