Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

「英訳戯曲集」再開、第一巻刊行

2016-04-14 | Weblog
前年度から、劇作家協会が文化庁の助成を得て、出版事業として「英訳戯曲集」を刊行することになりました。
以前に“HALF A CENTURY OF JAPANESE THEATER”として十年にわたって刊行していた英訳出版事業が復活した形です。

再開第一巻の英訳掲載戯曲は、以下の三本です。

永井愛「歌わせたい男たち」(ボイド眞理子・訳)
坂手洋二「8分間」(オガワアヤ・訳)
前川知大「太陽」(ジェームズ八重樫・訳)

………

以下、劇作家協会会長(当時)として私の記した巻頭文です。翻訳されることが前提なので、かために書いています。



日本劇作家協会が手掛ける英訳戯曲全集は、毎年刊行されていたが、その「第一期」は、10冊を送り出したところで、2008年に完結した。
このたび、私たちは、かねてからの計画通り、英訳集の刊行事業を、再開することになった。
英語による翻訳は、英語圏での流通のみならず、英語を母語としない異言語の社会どうしを繋ぐ役割も多く果たしている。
メディアの国境を越えた広がりや、インターネットの発達により、世界はより狭くなったとされている。
しかし、「島国根性」という言葉があるように、閉鎖的で自己完結しがちな日本社会は、世界の大きな変化に対応しきれているだろうか。
日本国内では、人文学的な教育を軽視する政策の横行、アカデミズムのあからさまな衰退もあり、「翻訳」という事業も、大型・商業的なもの以外は、少しずつ減りつつあるようにも見受けられる。
このたびの英訳集刊行再開は、日本現代演劇と劇作家にとって、たんに作品が紹介されることの意義のみではなく、現代日本演劇が世界に開かれていく生命線とも呼ぶべき太い動脈が息を吹き返す、重要な出来事である。
内外の演劇関係者が、この事業の意味を認め、戯曲集の存在を、おおいに活用してくださることが、私たちの願いである。

………


第1巻の編集委員は、土田英生、平田オリザ、前川知大、ボイド眞理子、小川彩(オガワアヤ)、私、でした。
上演される機会が想定できること、「震災後」の日本について示されていること、などが重要ではないかと、討議されました。

この「英訳戯曲集」の有効な海外贈呈先について、ご推薦・ご紹介の対象がありましたら、坂手ないし劇作家協会(office@jpwa.jp)に伝えていただければと思います。

今年度も事業は継続します。

………

“HALF A CENTURY OF JAPANESE THEATER”のバックナンバーについては、以下を御覧ください。
http://www.jpwa.org/main/books/english
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