Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

『グレートウォール』に見るアメリカ・中国の親和力

2017-02-24 | Weblog
映画『グレートウォール』には、驚かされた。
まあしかし実は、驚いたのは私の勝手な事情である。
IMAXで試写を見せていただいたが、指定されていた「情報解禁期限」も過ぎたので、感想を記すことにしよう。
チャン・イーモウ監督による中国の歴史上の物語で、「人類史上最大の建造物・万里の長城が造られた目的がついに明かされる」となれば、歴史劇というか、古代中国の国どうしの戦争を描くもので、重厚な人間ドラマということであるのだろうと思うのが自然だ。そのはずだ。
いきなり出てくるマット・デイモンが黒色火薬を求める英語を喋る外人部隊の傭兵、まあその設定も認めたとしよう。
ところが。
開幕五分も過ぎて、ある出来事が描かれて、ざわっと、予感がした。
まさか。
まさかこの中国の「歴史劇」は、そうではなく、「○○映画」のジャンルに位置づけられるのではないか。
そして。
まさしく「○○映画」であることが明らかになっていく。
マジなのか!
やっぱり。
いや、はじめからそう知って観ていればそう呆れることはないのかもしれない。
しかしチャン・イーモウ監督だし、正統的な歴史劇と思い込んだのは、こちらが悪いばかりとは言えまい。
じっさい、後でチラシをひっくり返してみると、その「○○」の存在については、確かに漢字である特定の勢力であるかのように書いてあるが、「○○」とははっきりとは言っていない。
私は必ずしも「○○映画」が好きではないわけではない。
驚かされたが、それはそれでちゃんと観ることはできた。
私と同じ驚きを味わいたい方は、チラシを熟読したり、なるべく関連記事を見ないで、「チャン・イーモウ監督による中国の歴史物語」とだけの情報を知る段階で見ていただきたい。その方が楽しめる。

ところで。
マット・デイモンら、黒色火薬を求める英語を喋る外人部隊の傭兵たちの存在。
まあこの映画は、アメリカ(英語世界)と中国が、大国どうしとして、実はとても互いを認め合っているということが、あらためてよくわかる映画でもある。
その親和力を確認する映画である。
アメリカと中国は結婚はしないが、互いに尊重し合っていくから、そこんとこよろしく、というメッセージで終わる。

もちろんここには日本はいない。
まさか日本があの「○○」のメタファーではないことだけは、そう願いたい。
だが確実に、七十数年前は、歴史上ではそうだった時期があるのだ。

さあ、みごとにネタバレしないで映画の宣伝に貢献したぞ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イタリアが懐かしい

2017-02-24 | Weblog
マレーシアからイルファンが来日。T-PAMの関連らしい。
稽古中の梅ヶ丘BOXを訪ねてきてくれた。『くじらの墓標』再演の稽古を少し覗いていった。
あまり時間がなくたっぷり話ができなかったのが残念だが、今夏は久しぶりにマレーシアを訪ねてみようと思う。
イルファンは2012年、イタリアでのラ・ママ・ウンブリア国際演劇講座で一週間、私が講師を勤めた「〈現代能〉の作り方」講座を受講。
演出家のためのプログラムだったが、全員に演じてもらった。
全員合宿での国際ワークショップは得がたい体験だった。
ラ・ママ・ウンブリアはローマ郊外のウンブリア地方の山上にある。スポレート演劇祭とも連動している。
この講座は川村毅氏も講師をしたことがある。川村氏とはミラノのピッコロ座のフェスティバルに一緒に招かれたことがあるが、彼はイタリアが肌に合うようだ。
こう寒いとイタリアの夏の日々が懐かしいが、イタリアだって今は寒いはずである。

この講座のことは以下の記事を御覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/sakate2008/s/ウンブリア

ラ・ママの拠点はニューヨークである。
1999年、まだお元気だったエレン・スチュアートさんのおかげで、ラ・ママ劇場で『くじらの墓標』を紹介してもらうことができた。
今またその芝居を日本で再演している。
そういえぱマレーシアの隣シンガポールの劇団ネセサリー・ステージも以前に『くじらの墓標』を上演してくれている。
戯曲というものはこうして何度も息を吹き返す。文字による表現媒体としては恵まれていると思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする