このお二人は、マサチューセッツ工科大学(MIT)演劇学科の、 「演劇の翻訳と文化の伝達」Zoomリーディング企画で、拙作『ブラインド・タッチ』をリーディングしてくれた。
Dillon Zhang 、Cherry Wang のお二人である。
お会いしたことも、話したことも、ない。
海外で自分の戯曲が上演されたり、リーディングされるのは、不思議な、得がたい経験である。
アメリカの大学では、十年ちょっと前だろうけれど、ルイジアナ州立大学の劇場〈スウェイン・パレス〉で、演劇学科長に就任したばかりのリアン・イングルスルードが、拙作『みみず』の翻訳『Night Crawler』をリーディング上演してくれたことを思いだす。まあ何しろかなり官能的な部分に加え、コメディであるところもあるので、プロも半数は混じる俳優たちは、きゃあきゃあ言いながら大喜びで演じていた。
演劇は上演が終われば消えてなくなるものだが、戯曲は残る。そして翻訳されれば世界のどこかで、未来のいつかに、どなたかが、そのせりふを体現してくれるときがあるかもしれない。
それはそれでわくわくするし、ありがたいことである。
もともと、よく口にすることだが、戯曲というものは、多くの場合、数十人の人に熟読され、あるいは記憶される。何ヶ月か何年間かにわたって、誰かが常にその言葉の世界に生きる。かくも強力な読者が存在する。書かれた作品はそれに耐えられるものでなければならない。責任重大であり、読み手に心から感謝しなければならない。それが劇作家の仕事である。