Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

ナショナル・シアター・ライブ 「レオポルトシュタット」は 必見です

2023-01-13 | Weblog

ナショナル・シアター・ライブ2023「レオポルトシュタット」は、必見。

作者トム・ストッパードの親族の過去からの歴史を扱う最終的には自伝的作品ということだが、そうした実感がなければ描ききれない細やかさがある。

プロットの作り方が圧巻で、これは、戯曲を書こうとする者にとっては、とても刺激になる思う。大文字の歴史の物語と家族・個人、社会を覆う不条理と極めて個人的な感情、相対する要素を対峙させ混ぜ合わせる作者の技量のすごみは、どの観客をも震撼させるものだが、戯曲を書く者こそこの仕事に敬意を払い、感じ入るところ大であろう。

上演については、複数の役を同じ俳優が演じるキャスティングの選定が、際立った効果を上げている。これは舞台上演でないとできないリアリティと迫力だ。

舞台であるウィーンは、燐光群が初めて海外公演をした場所。1994年の〈ウィーン芸術週間〉に『神々の国の首都』で招聘された。その「ユダヤ人地区」だった場所を、案内されたことを思い出す。ウィーンでは三度の劇団公演をしている。最後にやったのは『屋根裏』だ。

好評のためか、一週間限定上映の予定が、上演中の劇場では19日まで上映が延長されるという。私という人間を信頼しない方でも、今回ばかりは、騙されたと思って観に行っていただければと思う。

昨年の新国立劇場の日本版は未見だが、ぜひ再演してくださると嬉しい。

映画監督のスピルバーグはトニー・クシュナーら劇作家と多くの仕事をしていて、『太陽の帝国』は、原作が別にあるものの、シナリオを書いたストッパードの、もう一つの「過去」と重なる作品だ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする