実家関係の様々な事情もあり、岡山方面に何度も行き来を繰り返している現在だが、先日、一時間か一時間半かに一本しか来ない単線の路線で電車を待つ時間の中で、思いがけず、その駅の地元の、懐かしい「お好み焼き屋」に入ることになった。気取った専門店などでもなく、ごく普通の近辺に住む人たちが「ご飯を食べる場所」である。というか、私が行った日には、経営者のご家族もお好み焼きを食べられていて、なんだかとても親しみやすい店だった。
もともと「お好み焼き」というものは、何でもない駄菓子屋や地元のカウンターだけの食堂みたいなところに小さな鉄板を置いて、というケースも、多かった。で、そういうところが、おいしかったのだ。といっても、私の子ども時代は外食の機会など滅多になくて、数少ない思い出なのだけど。
その、なつかしい感じの「お好み焼き屋」で、岡山流の「お好み焼き」をいただいた。岡山流は、広島同様に、生地と具材は混ぜない。関西の「べた焼き」に似ている。広島と違って、麺はディフォルトとしては、入らない。麺が入れば「モダン焼き」になるところは、関西と似ている。入ったことのない店だが、懐かしい味であった。
つい最近ニューヨークの勘違い「ラーメンライス」の紹介投稿をしたばかりだが、ここのメニューに「そばめし」がある。私の知る限り、「そばめし」は関西のメニューであって、岡山人は滅多に「焼きそば」と「ソースチャーハン」を混ぜるような野蛮なことはしない(はずである)。ここは少し関西に近いところだからかなと思う。
ただ、この店のメニューにも「ちゃんぽん」というのがある。私の時代には「ちゃんぽん」という言葉はなかったが、「焼きそば」と「焼きうどん」を混ぜた料理は、存在した。四十年以上前の上京直後に明大前の広島お好み焼きの「せとうち」という店に、「焼きそば」と「焼きうどん」を混ぜたメニューがあって、しかし私は、それは頼んだことはなかったな。今はなきこの店のことは「日経流通新聞」に書いたことがある。
「岡山のお好み焼き」は特に特徴はないし、いろいろな地方からのやり方が混じっている。
「そばめし」についてどうでもいいことを付け加えると、伊武雅刀さんの出ていたロッポニカのメロドラマで、財津一郎さんが神戸の名物として「そばめし」をふるまう場面があって、いいとか悪いとかではなくて、お洒落に見えないというようなことでもなくて、なぜだかどうにも違和感があったことを思いだしてしまった。