今江冬子さんの訃報にうなだれる。
出会いはもっと前だったが、一緒に舞台を作ったのは、〈燐光群スタンドプレイVOL.4〉と銘打った『バードマン 鳥師たちのから騒ぎ』だけである。1995年1月、パナソニック・グローブ座。音楽は大友良英さんがリーダーの生演奏、主演はあがた森魚さん。低予算なのに無理やりな大作の、音楽劇だった。高田恵篤さん、徳田ガンさん、姜昇徹さん、鴨川てんしさんらが、踊り、舞った。
あがた森魚さんと共に、別な立場で、物語を牽引する役だった、今江さんの声が、好きだった。あの声と、余分な力が抜けた感じ、やろうとしていることの明晰さは、彼女がケラさんと出会ってから、くっきりと露出してきたと思う。
雑多な要素、音楽、その中で、彼女の声が、基調を作った、と、思う。あがた森魚さんの声とも、対置されていた。
三〇年近く前だが、あの劇空間の記憶の中に、彼女は、いる。彼女がタッタッタッと舞台上を駆ける、空間を突き抜ける感じも、憶えている。
いつだったか、また何か一緒にやろうよ、と、話したが、ここ二十年余りは子育てに専心されていて、実はそれが闘病生活に変わっていってしまっていたことは、少しだけ聞いていた。
私の劇団も出産子育てで休団中の俳優さんは、いる。また一緒にやろうよ、と話している内に、時間は過ぎるが、必ずその「また」はある、と信じている。
今江冬子さんの眼差しが、今も、浮かぶ。
さようなら。
http://rinkogun.com/1991-1995/entori/1995/1/12_Bird_men_-_Much_Ado_about_Nothing_of_the_Bird_Trainers.html
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます