午前から劇団の自主稽古ミーティング。……土・日は中央線快速が高円寺に停まらないことを失念、座高円寺リリパットアーミー千秋楽開演に遅れてしまう。パンフレットのわかぎえふ・内藤裕敬往復書簡に自分が登場していて、ありゃりゃ。その後、あおきりみかんは開演午後5時にまにあわず、断念。……時間が経つのが早すぎて困る。やらねばならないことが多いのになかなか進まない。
共同通信によれば、菅首相は就任後初の街頭演説で外交について「国民が多少の代償を払っても国を守り、育てようというのが外交の力だ。国民がどれだけ国の在り方に責任を持とうとしているのかで決まる。外交とは内政だ」と言ったという。米軍普天間飛行場移設問題のことだろう。新提案がない以上、「代償を払い責任を背負わされる」のは沖縄県民・徳之島島民でいいということか。「負担の軽減」などというコトバで誰もごまかされはしない。「国のことは自分で責任を持つという思いの強さがあれば、米国、中国に正面から向き合うことができる。外交を立て直そう」だと。……こんな発言は気が狂っているか、何か誤魔かしているのでない限り、ありえない。米国、中国からすれば、敵愾心を露わにされているように受け取るしかないだろう。そもそもアメリカに「正面から向き合う」なら、「基地は出て行ってくれ」と言う以外、何があるのか。
届いていた税金等請求書類に、めげる。さらに消費税上げようなんて政党に投票したくない。……富良野からいただいたアスパラガスが美味しい。……原稿進めたいが机回り資料整理するうち、早くも夕方。片付け優先のはずがいちいち資料を眺めてしまうせいだ。必要なことなのだが。夜は土田英生『初恋』。土田氏を知る者のお約束としてあんパン三種を差し入れ。島の話なので勝手に徳之島を思い浮かべるが、まあ違う世界。大学劇研の何世代か後輩にあたるはずの今井君が中心の役。出演がMONOメンバーでないことが時々、不思議。奥村氏が出ているから余計そう感じるのかも。……ここしばらくほとんど芝居を観られないでいるが、今までタイミングの合わなかったTRASHMASTERSに出会えたのは収穫。
午前中、届いていたFAXに気づいて、慌てて演出者協会理事会へ。日時は二日前の決定らしいが、出席率高し。みんな演劇界の動向について悩んでいる。日中の太陽は強いが意外に涼しく感じる。午後、小学館で「せりふの時代」最終号、別役実さんと対談。これから編集会議のため定期的にここに来ることもなくなってしまうのだ。夜になってからのほうが暑さを感じる。仕事は溜まっており、少しずつでも消化しないと間に合わない。
沖縄の歴史・社会・言語を見直す出版を重ね沖縄ブーム火付け人とされているボーダーインク新城和博さんと久々に会う。新城宅でいかにも沖縄らしい飲み会に参加したのは十年前。劇団「大地」を解散した照屋京子さんも久しぶりに。空路帰京、その足で北沢タウンホール。保坂展人、伊藤真氏らと座談会。……話題の一つが、東京都青少年健全育成条例改悪案の表現規制問題。宮沢りえ写真集も「少年」時の撮影だから所有さえしていちゃいけなくなるかもっていう、あれである。劇作家協会も他の協会に呼びかけ反対表明しているが、都議会決議が迫っている。与野党伯仲の微妙な票数差、どうにも不安だ。
再びテント村へ寄り、クジラ道の師・小島曠太郎さんと大浦湾を回る。沖縄国際大学へ。米軍ヘリコプター墜落地を見る。ちゃちな報道用ヘリではない、戦車より大きい全長22メートルの「兵器」が火薬や油を満載したまま落ちたのだ。その瞬間、十数メートル離れたところにいた江上幹幸教授の恐怖を聞く。照屋寛之副学長、佐藤学教授の話をたっぷり。わざわざコザから来てくれた藤木勇人さんとも久々の再会。名護ヘリポート反対初代委員長宮城康博さんの刺激的な話を聞くうち宜野湾の夜は更ける。
さっきまでいたという共産党志位委員長と入れ替わりに(?)辺野古の基地反対テント村へ。初めてここに来たときは二十世紀だった。砂浜のキャンプ・シュワブとの境界に立ち「滑走路予定地」を眺める。近すぎる。そのうえ「ヘリパット予定地」が集落側に変更。露骨に集落立ち退きを迫っているのだ。大浦湾沿いの新施設、海の生き物写真展会場に浦島悦子さんを訪ねる。夜は名護に移り、公設市場等で街のいろいろな声を聞く。……テレビのローカルニュースで見た喜納昌吉さんはまるで別人。昔、県庁に乗り込んだとき驚かされた「沖縄なのに革ジャン」的反骨は望めないか。民主党にいながら米軍基地反対を唱えるのが苦しいのは当たり前。
那覇空港から高速バスで中城、普天間基地近くの宜野湾市中央公民館でシンポジウム「沖縄の生物多様性を守るため、未来に繋げるためII: 現状と課題」。満席。ジュゴンだけではない、環境保護と米軍基地問題の密接な繋がり。中心になっている人たちの熱意と集中力、そしてウチナー独特の柔軟さ。ごく自然に研究者と運動家の境界線が溶解している。「これだけの人たちの努力とかけてきた時間が米軍基地問題への対応以外のことに費やされていたら沖縄はもっともっと発展できたのにと思うことがあります」と、若いメンバー。……宿に入り、教育テレビ・井上ひさしさん追悼特集。残された書斎の机上に、主を失った眼鏡と万年筆、新作準備のための琉球語辞典。「井上ひさしを語り継ぐ」もスケッチ程度に出てくるとのことだったが、自分のリーディング場面も流れ、びっくり。
雑事多く、取材旅行の準備も捗らない。「悲劇喜劇」誌最新号届く。井上ひさしさん一色の追悼特集。間違いなくそうなのだが、まだ実感が持てない。……夕方からミーティング、『ザ・パワー・オブ・イエス』打ち上げ。ほんとにお疲れ様でした。
韓国から木村典子さんが来ているので、座高円寺と劇作家協会事務所、リクエストに応え高円寺らしい商店街・路地を案内。夜は座高円寺地下稽古場で新シーズンが始まったばかりの戯曲セミナー講師を務める。終えて受講生三十人と懇親会。今期の受講生は真面目で落ち着いた雰囲気のようだが、じつは強烈キャラが多いかも。旧知の俳優K・Aさんもいる。
帰京。制作会議。夕方から、沖縄・徳之島の人たちをも迎え中野で集会。満席。この場所は、広河隆一さんたちと催し、井上ひさしさんにも発言してもらった六年前の渡辺修孝・安田純平君らのイラク人質事件報告集会以来。期せずして懐かしい顔々。諸先輩たち。新たな若い人たちも多い。新聞に書いてあることだけが真実ではない。このままじゃいけないってことはみんな思っている。結果として、お互い、力づけられもし、励ましあいもする。
準備前に劇団小ミーティング。客席増設。……良い空気で終わったと思う。イギリス以外ではそうそう上演できないはずの芝居を自分たちの演劇にしてゆく過程が貴重だった。途中若干の足踏みはあったものの、どの世代のメンバーも自分の課題を発見できたと思う。……終えて佃典彦東海支部長、あおきりみかん鹿目由紀さんらと劇作家協会緊急地域交流部会議(?)。冗談交ぜつつ二大重要事案に熱中、一時間ちょっとかと思っていたら意外なほど早く時間が過ぎていることに気づき驚く。帰り道すがら思い起こせば、初めて芝居でこの町に来たのは二十八年も前なのである。
無事に開く。満席。テレビ朝日さんが取材に来る。この劇が来週紹介されるはずである。それにしても後ワンステージで終わるのは寂しい。……鳩山は首相を辞めることになるだろうが、頭をすげ替えただけでは解決しないことを誰もが知っている。
ネット上の百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の「坂手洋二」の欄によくわからない表現がある。〈「歌舞伎を救った」と言われる米国人フォービアン・バワーズを指して、歌舞伎に救う価値などないと登場人物に断じさせるなど、日本文化批判を行っている(『天皇と接吻』)。〉ということになっているのだが、なんでこんな書き方をするのか理解に苦しむ。書き換えてほしいのだが、本人が書き込むのもなんだかヘンだし、その箇所は何年もほったらかしになっていて、困ったものである。私は故バワーズ氏とは親交があったし、歌舞伎に対して何の悪意もないし、「日本文化批判」などしたくもないのだ。