トニー賞の受賞作品が決まった。私は3月にセゾン文化財団のサバティカルで久しぶりにニューヨークにいたので、何本かの受賞作を観ている。
ドラマ部門作品賞は『レオポルトシュタット』だった(写真)。この作品は去年〈ナショナルシアターライブ〉でロンドン版を観て、たいへん感銘を受け、3月にニューヨークでアメリカ版の生の上演も観たのだが、やはり他と比べても堂々とした作品だったのではないか。ヨーロッパのユダヤ人の家族たちの話がアメリカの人たちにどう見えるかというのもわからないが、国境を越えた物語でもあるということだろう。パトリック・マーバーの演出賞、ブランドン・ウラノヴィッツの助演男優賞、ブリジット・ライフェンシュトゥールの衣裳デザイン賞も。
実はミュージカル作品賞を受賞した『キンバリー・アキンボ 』も観ている。脚本賞(デヴィッド・リンゼイ=アベアー)や楽曲賞も受賞している。主演女優賞のヴィクトリア・クラークの「老婆で少女」も、チャーミングだった。印象は良かったけど、小品というイメージもあったのだが、若者たちの芝居でもあるので、いきいきとしていたとは思う。
両作品は、ニューヨークならではの方法で格安チケットを入手して、観ることができた。昔に比べるといろいろなシステムができていた。
ショーン・ヘイズ が主演男優賞を受賞した『グッドナイト、オスカー』は観られなかったが、作者はダグ・ライト。かつてダグがトニー賞を受賞した作品『アイ・アム・マイ・オウン・ワイフ』は、私が燐光群で日本初演し、ダグを日本に招聘した。ダグはディズニー版『リトル・マーメイド』の作者でもある。後にトニー賞を取ることになるリサ・クロンの出世作『2.5ミニットライド』を20年前に日本初演したのも私・燐光群で、その時もリサを日本に招いて講座やワークショップを開いた。他にも紹介しているものは幾つかあり、考えてみると私らは、アメリカ演劇紹介にずいぶん貢献している。というか、そんなふうに、関わった人たちが、のちのち大成していたりするのである。
今年のトニー賞に戻る。照明や美術、音響等で受賞した『ライフ・オブ・パイ』も観た。これ、日本人が演じる日本版を作るのは、結構たいへんなことになるだろう。どういう意味かは、考えてください。
3月に観たブロードウェイでは、私は『人形の家』が面白かったけど、受賞はなく、やはりちと地味だったのかもしれない。
現在稽古中の『ストレイト・ライン・クレイジー』も昨年アメリカで上演されたが、上演会場がオフ・ブロードウェイだったので、ブロードウェイ作品のためのトニー賞の対象にならず、関係はなかった。舞台がニューヨークであるロンドンの劇がニューヨークで上演されるというのも、不思議な感じだったのだろうなと思う。
翻訳家の広田敦郎さんと、そんなニューヨーク演劇の魅力を伝える〈ニューヨーク演劇案内〉みたいなアフタートークを、『ストレイト・ライン・クレイジー』上演中に開催するつもりである。もちろん『ストレイト・ライン・クレイジー』の翻訳家・常田景子さんとのアフタートークも別な日に行う予定です。日時はもう少しお待ち下さい。
『ストレイト・ライン・クレイジー』上演情報。前売り開始しました。
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http://rinkogun.com/Straight_line_crazy.html