渋谷から東横線、みなとみらい線で、みなとみらい駅まで。横浜美術館は駅から程近いところに在った。さて、展示はフランス絵画の19世紀というテーマだったが、アングル、ダヴィドから始まり、ピサロ、シスレー、モロー、ドガ、シャバンヌ、ルドン、モロー、ドニとなにか非常に雑然とした印象を受けるコレクションだった。新古典派から、印象派、象徴主義、ナビ派まで一堂に集めて、どのようなくくりで説明するのか主催者の弁が聞きたいところ。ただ、新たな時代の革新的旗手である印象派の画家が、アカデミズムの権化たる新古典主義のアトリエに出入りし、彼らのもとで画技を磨きアカデミー・フランセーズ、エコール・ド・ボーザールの影響を受けていたことは興味深い。だから、印象派の連中は新古典主義者に対してそう悪い印象をもっていなかったようだ。しかしここにドラクロワがないのは大きな片手落ちだ。ダヴィドからジェリコー、ドラクロワに続く、古典からロマン主義への、前人の業績を否定しつつ前進していく、この時代の美術史的流れをぶった切ってしまうことは、なんとしてもやりきれない。もとより、オカブはドラクロワを評価していないし、フランス美術のロマン主義を単に形式主義的な「ドラマティック」な意味での「ロマン主義」としてしか捉えていないが、その時代に咲いたあだ花のカリカチュアとしてぜひ展示して欲しかった。もっとも、ロマン派の絵画を持ってくるのはコスト的に割が合わないと主催者側の事情もあるのだろうと、下種の勘繰りをしてしまうわけだが。まあ、展示されたものでは、古典派の精緻な風景画が良かった。フランス風景画の濫觴がドイツロマン派のそれと大いに哲学を異にしていることが見て取れた。
さて、美しい絵画の数々を見て目を肥やしたので、お腹のほうも肥やそうと、中華街に異でも見て、餃子の「王将」にでも入ろうと(これも立派な中華料理)、マジにかーたんと話していて、みなとみらい線で、元町・中華街に向かう。ところが、餃子の「王将」は見当たらないし、軒を狭しと連なる中華料理店に入りたい誘惑に駆られるわで、かねてオカブがネットの口コミで目をつけていた「招福門」の飲茶バイキングに入る。30分ほど待たされて席に案内される。中華料理に疎いオカブは「飲茶」というものがどんなものか具体的イメージがつかめなかったのだが、餃子とか小さな肉まんとか焼売とかのこと。
蒸篭に入れて蒸したものが多い。とにかく小麦粉の皮に包まれているものがほとんどで終わりのほうになると何を食べているのか分からなくなる始末だったが、とにかくお腹一杯まで食べて、もとはとったと思う。ちなみにここのバイキングは、メニューから好きなものを注文すると調理して持ってきてくれるというシステム。蒸すだけだからそんなに手間はかからないのであろう。生中と紹興酒2合、二人前バイキングでお会計締めて6700円也。まあ。こんなものだろう。ちなみに席は背もたれがついていないがこれは客に長居をさせないという、中国6000年の歴史の知恵のなせる業か?
二人ながらよくこれだけ食ったものだと思う。食べたものが喉まで詰まった状態で、冷水を飲んでお腹をだましつつ、席を立つ。留守番をしている、エルさんに月餅のお土産を買う。
お腹を抱えながら、中華街見物。雑貨小物の店を冷やかし、関帝廟などを見て帰途に着く。東横線で渋谷まで。渋谷から井の頭線で下北沢。下北沢のタウンホールで一服休憩をとってから家路に着く。それだけ真夏の強行軍は老体に堪えたということだ。
日盛りに人あまたおり中華街 素閑