昼のガスパール・オカブ日記

閑人オカブの日常、つらつら思ったことなど。語るもせんなき繰り言を俳句を交えて独吟。

年の夜

2018-12-31 22:01:32 | 俳句

大晦日の晩になった。
いつもと変わらず。
1981年カルロス・クライバー指揮バイエルン国立歌劇場ジルベスター公演の『こうもり』のDVDを観て、第九を聴いて、あとはのんべんだらり。
毎日毎日がのんべんだらりだから、大晦日が特別ということはない。
こういう生活態度を小学校の担任が厳しく戒め、その当時は神妙に聞いていたが、大人となり爺となる過程ですっかり忘れてしまった。
もともと豆なほうではなかったが、年とともに益々拍車がかかっていく。
これも仕方がない。
来年の抱負とてない。
ただ老いていくのみである。

年の夜口外せじと打ち明かす   素閑

除夜に入りあらがひがたき時ながる   素閑

年の夜今年はなにをなしたるぞ   素閑

おおひなる人とまみゆる年の夜   素閑

除夜の時年を顧み気を落とし   素閑

年の夜スキー宿にて雑魚寝かな   素閑

年の夜すくふ命のともしびか   素閑

乱れたる肴の皿や年の夜   素閑

年の夜高踏称す作家の死   素閑

年の夜拍子木の音高く鳴り   素閑

年の夜梅の咲けるはいつごろか   素閑

年の夜今年のつひを迎へけり   素閑


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晦日蕎麦

2018-12-31 14:25:42 | 俳句

毎度毎度のことながら変わり映えのしない年末年始。
家に籠りきりで7日ほどの休みを過ごすことになろう。
知人はスキーに行ったり温泉に行ったり海外旅行に行ったり。
いいなあ。
まあ、大袈裟な言葉で言えば、世の中の矛盾と言うやつですね。
蕎麦でも食って、酒でも呑んでと憂さを晴らすしかない。
そこで太子堂の『くら嶋』で蕎麦を手繰って一杯。
我ながらなんとも気楽なものである。

鍬の泥落としてしばし晦日蕎麦   素閑

漫談のテレビつけおく晦日蕎麦   素閑

都ではこう食ふものよと晦日蕎麦   素閑

晦日蕎麦明日の支度は母一人   素閑

工場の灯りまだつく晦日蕎麦   素閑

往来の激しき蕎麦屋晦日かな   素閑

よがらすの声遠く聞き晦日蕎麦   素閑

褒貶の際立つ人や晦日蕎麦   素閑

おけら火をとりて入る店晦日蕎麦   素閑

合評の夜の更けるごと晦日蕎麦   素閑

葱切れる妻の座に置く晦日蕎麦   素閑

骨はなり節は痛むは晦日蕎麦   素閑


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年忘れ

2018-12-30 21:34:07 | 俳句

高校時代の山岳部のOB会があった。
学年をまたいでOBが盆と暮れの年二回集まるというもの。
全く風貌の変わらない奴がいる中で、オカブは髪の毛がまったくなくなった。
まぁ、良しとしよう。
今年はオカブにとって紆余曲折の年であった。
来年は良い年になってもらいたい。
今年の厄を落とす意味で、大いに呑んだ。
こうして管を巻いているうちにも老いていく。
それを思うと、さらに呑まずにはいられなくなる。

浜千鳥なぜになくやら年忘れ   素閑

老害と言われてひさし年忘れ   素閑

佳き年も悪しき年も去り年忘れ   素閑

年忘れ野の闇を見る茶屋の窓   素閑

富みし友貧しき友も年忘れ   素閑

年忘れ業績悪き社長かな   素閑

年忘れ色変わりたる膾かな   素閑

麻雀のかちまけ競う年忘れ   素閑

生き死にの話も出るや年忘れ   素閑

灯台の明かり見る小屋年忘れ   素閑

年忘れ野望の末のうつしみや   素閑

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こつごもり

2018-12-30 10:51:47 | 俳句

今の人にとっては遠い過去の作家だが松本清張と言う小説家がいた。
晩成の作家である。
中卒で大阪朝日新聞の広告部に嘱託の職を得た。
下積みで仕事をこなす一方、こつこつと小説を書き溜めた。
そして『西郷札』で直木賞を得た。
直木賞を得ても新聞社では下積みの生活が続いた。
「みかん事件」というのがある。
昔の朝日は社員と嘱託の隔たりが酷く忘年会も別々にやるありさまだった。
先に忘年会を終えた松本よりも若年で社歴も浅い社員が松本の机にみかんを「ほれ」と投げた。
松本は憤怒のあまりみかんを床に投げつけた。
黄色い果汁が床に散った。
こうした世間の苦汁を舐めた松本だが推理小説『点と線』で大ブレイクする。
それからは大流行作家の路をまい進するのである。
松本を流行作家と言っては失礼であろう。
彼は日本の「バルザック」と言われている。
歴史、推理、犯罪、美術・・・ありとあらゆる分野で超人的な仕事をする。
松本は口述筆記であろうと言われた時期もあった。
しかし松本の描く世界は昏い。
松本の心の闇を映し出しているかのようだ。
これも青年期に辛酸を味わったなにかが影響しているのであろう。
松本の作品は決して爽快な読後感を与えてくれない。
しかし昨今の浮薄な作家と比べると松本はなんと偉大だったことか。
松本はオカブにとって最も好きな作家の一人である。

ここにても細めの雨や小晦日   素閑

色褪せて旗の揺れるや小晦日   素閑

茫漠の原が続くや小晦日   素閑

目覚めけり今日はなんにち小晦日   素閑

凡百が知恵を寄せれど小晦日   素閑

小晦日居酒屋けふで閉めにけり   素閑

新宿の詩集売りなれこつごもり   素閑

こつごもり大荷物持ち電車駅   素閑

小晦日日本海側あれむとす   素閑

まだるき書小晦日にて読みにけり   素閑

こつごもり青空縁なき四畳半   素閑

小晦日書斎にわずか日の射すや   素閑


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年木樵

2018-12-29 17:55:02 | 俳句

今年も今日、明日、明後日三日である。
平成最後の年となるとか、そんな世間の話題はいい。
我が家では激動の年であった。
年の初めから、かーたんの怪我、そして病気と手術、会社の経営・・・・
我ながらよく一年を乗り切ったものと思う。
来年は平穏な年であって欲しい。
そんな願望を込めて、暮の日々を過ごしている。

夜勤より帰りて逢ふ瀬年木樵   素閑

酒瓶と炭積み上げり年木樵   素閑

年木樵みちのくよりの客迎へ   素閑

年木樵尾根を越えたるからすかな   素閑

終わりなき世とのたたかひ年木樵   素閑

いづれまたあへる日も来る年木樵   素閑

汽車の窓前山見ゆる年木樵   素閑

あさ早し山よりかへる年木樵   素閑

年木樵林の中の細道や   素閑

年木樵さくさく踏めり先祖の地   素閑

年木樵平成の世はあれむとす   素閑


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年の暮

2018-12-28 15:51:44 | 俳句

京セラという会社があるのはご存じだろう。
オカブが新卒で就職活動をしていたころ、新興の優良企業でブイブイ言わせていたのを覚えている。
一方で京セラは「優良」と並んでその当時「ブラック」でも有名だった。
京セラなんかに行ったらぶっ倒れるぞ(過労死という言葉はその当時はなかった)とまことしやかに就活生の間で語られていた。
しかし、今では京セラもすっかり普通の会社になって、「優良」というのも「ブラック」というのも聞かなくなった。
京セラ以上の「優良企業」も「ブラック企業」も出そろった観がある。
日本ではぎりぎりまで過重労働しなければ企業は利益を出せない。
しかも、そこまで働いても労働生産性の国際統計では先進国中で最下位である。
何が悪いのだろうか?
「生産性」というくらいだからアウトプットの出ない余計な仕事で追いまくられているのだろうか?
そういえば日本電産グループが何年後かに残業ゼロにすることを目標に掲げているらしい。
こういう時こそ永守さんのような経営者に頑張ってもらうことだろう。
毀誉褒貶はあるが、この人はどんな事案でも確実に結果を出している。

山水に振り向くも無き歳の暮れ   素閑

雀飛ぶ空もむなしや年の暮れ   素閑

の子廊下を拭けり年の暮れ   素閑

年の暮れ小僧の鐘にからす舞ひ   素閑

大屏風仕舞いもせぬや年の暮れ   素閑

故郷に帰らぬ年も暮れにけり   素閑

老松に干し物かかげむ年の暮れ   素閑

泣きそめぬ父のなき家年の暮れ   素閑

雨やみてあしたの日拝み年の暮   素閑

米と酒なけなしあがなふ年の暮   素閑


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年惜しむ

2018-12-27 16:44:38 | 俳句

麦酒は大好きだ。
しかし日本のビールはお米の臭いがしていかん。
さりとて輸入物のビールが美味いとは限らない。
ビールの本場は?と聞かれるとちと迷う。
麦酒の原型は古代エジプトからあったという。
中世にはヨーロッパではビールは広く飲まれていたが、当時はホップがなかったので、大麦を発酵させたものに蜂蜜とクミンをぶち込んで、とても不味いものだったらしい。
その反動で地中海地方で飲まれていた葡萄酒のほうがヨーロッパでは普及した。
近代になってホップが栽培され、ビールを作るのはホップと淡水と麦芽と酵母のみにせよ、との「ビール純粋令」を発したのは時のドイツ、バイエルン公ヴィルヘルム4世。
爾来、ビールはドイツの飲み物という感覚が強くなった。
しかし、現在、一人当たりのビールの消費量がいちばん多い国はチェコ。
麦酒も『ピルスナー・ウルケル』をはじめ貴重で名高い銘柄がそろっている。
そういう訳で、ビールもそれなりの歴史と文化に支えられてきたので、たかがビールごときと言う莫れ。
さて、今日も寒いが冷やしたビールを開けようか?

後の世に残すものなし年惜しむ   素閑

巷では良かれで満ちぬ年惜しむ   素閑

年惜しむしじゅうの娘と六十路妻   素閑

手はこはばり脚はよろつき年惜しむ   素閑

とふ者も無き一人家や年惜しみ   素閑

疾き風に晒すもあはれ年惜しむ   素閑

過ぎたるはむかしの若き惜しむ年   素閑

麦を食い粟つく年を惜しみけれ   素閑

暮れなひや風の姿に年惜しむ   素閑

新聞もテレビもなけれ年惜しむ   素閑

厄ばかりある年なれど惜しみけり   素閑


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掛乞

2018-12-26 17:53:26 | 俳句

「密教」という言葉は諸賢はご存じであろう。
仏教の本道である「顕教」に対して、秘匿の教えとしての密教である。
教外別伝の禅とは違う。
空海と最澄が中国から日本に持ってきた。
空海の持ってきた真言宗の密教を「東密」、最澄の持ってきた天台宗の密教を「台密」と言う。
密教は、なにやら怪しげな秘法の祈祷が特徴だ。
特に密教最高の秘法と言うのが「大元帥の法」(だいげんのそち)で牛乳を煮詰めた蘇と蜜と油を混ぜた蘇蜜油を熱し歓喜天の像にかけて行う秘法で、蘇蜜油の温度が心願の叶う叶わないを決めるという。
なんともおどろおどろしい世界だが、信仰というものは鰯の頭から、国家を挙げてのものまで様々であるが、結局は宗教の教義とドグマによって人々が動かされているようだ。
一人静かに祈り求める信仰があってもよいと思う。キリスト教も含めて・・・

掛乞や明日はあきなひ閉めにけり   素閑

掛乞の小僧に三つ餅もたせ   素閑

つけ取りや身隠す場所もなかりけり   素閑

朋輩につけをせまられ払いたり   素閑

ここかしこ掛乞の店ありにけり   素閑

掛乞に追われ一升買ひにけり   素閑

掛け取りもつけもなしやの無一物   素閑

大音声掛乞の声松こずえ   素閑

サルヴァトレ掛乞の処理オンライン   素閑

川べりや掛け取り終わり宵の路   素閑


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年の市

2018-12-25 16:05:11 | 俳句

ボナール展が12月の初旬までやっていた。
新聞屋からタダ券をもらったので、かーたんと行こうと示し合わせていたのだが、なかなか時間が取れずお流れになった。
ピエール・ボナールはナビ派のなかでも中心をなす作家だが、オカブはどうも好きになれない。
彼なりの様式を確立して、その様式の中の枠でしか制作していない気がする。
そもそもナビ派はアカデミズムに対立して自らの主張をしてきたエコールのはずである。
それが「様式美」に陥っては目も当てられない。
ボナール展は行かなくてよかったのかもしれない。

雑貨屋の角まで続く年の市   素閑

年の市常の蕎麦猪口もとめたり   素閑

年の市勝手口より客一人   素閑

としのいち独りでかけて宵の月   素閑

年の市下駄のあゆみの進まじと   素閑

年の市ほうきを担ぎ銃のごと   素閑

年の市しをせんべいを商ひぬ   素閑

年の市むかしのいひなずけ遭ひぬ  素閑

年の市香華も果てた辻地蔵   素閑

年の市四楽章は疾く過ぎて   素閑

年の市御山のぼれるけむりかな   素閑


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クリスマス

2018-12-24 14:36:02 | 俳句

今日はクリスマス・イヴである。
休日と重なって皆さん楽しい御計画はあるのかな?
キリストの降誕というのはキリスト教的に言うと①救世主が地上に降誕した!(救済)②神が人間となって地上に生まれた(受肉)③貧しい大工の子として汚れた馬小屋で生まれるという決して華々しいデビューではなかった(受難と復活の予告)というところに集約される。
だからクリスマスは本来、壮大なイルミネーションや、豪華な御馳走とは無縁の、ひっそりと慎ましやかに祝うべきものなのである。
しかし、固いことはここではいいです。大いに楽しみましょう。
ところで教会とは丸一年ほどご無沙汰だ。
つくづく自分はへそ曲がりだと思う。
しかし今年のクリスマスイヴは教会に行ってみようかと思っている。
よくは分からないが、言えることはクリスマスには人の心も開かれる、ということか?
それでは皆さん、Merry Christmas!


クリスマス呑むためにぞと生まれたる   素閑

橄欖の路に続くやクリスマス   素閑


移り気の聖誕祭の小娘や   素閑

聖誕祭礼拝の燭消え入りぬ   素閑

暗黒のかそけき星や聖誕祭   素閑

クリスマス厳しくも御堂光あり   素閑

新宿に一人とまりぎ聖夜かな   素閑

降誕の祝いと恵みあまねしや   素閑

降誕祭寝床にくるまり過ごしけり   素閑

あかまみれつちの手合わす降誕祭   素閑

労働に明け暮れ祝う降誕祭   素閑

降誕に竹輪三切れの夕餉かな   素閑

降誕を迎へまた老ひ重ねるや   素閑

北に来て聖誕の村灯はともり   素閑


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