『ローエングリン』の新国立劇場公演ゲネプロを観てきました。
マティアス・フォン・シュテーマンの新演出は斬新。ワーグナーものとしては、すごくモダンなイメージの舞台作り。ただし、大道具や衣装は「最低限」といった印象をぬぐえないのは致し方ないかも。
指揮のペーター・シュナイダーと東フィルの演奏はぴったり息があって、ゲネプロとしてはかなりいい出来。
歌手陣は、ハインリヒ一世のギュンター・グロイスベックがバスを朗々と響かせているのがかなり強烈なイメージ。
タイトル・ロールのクラウス・フロリアン・フォークトは、テノールで本番のために喉を気遣っていたのか、二幕までは、あまり聞かせてくれないような歯がゆさを感じたが、三幕目では、さすがに情感たっぷりに、高らかに白鳥の騎士の哀歌を歌い上げた。三幕目の山『はるかな国に』はエルザに語り聞かせるような演出で、歌いぶりもいささか人間味あふれるローエングリンだった。
エルザのリカルダ・メルベートは、こちらも本番前にフル・ヴォイスで歌うのを控えていたのかもしれないが、いささか声が散れて集中したトーンになっていなかったのが気にかかる。
テルラムント伯爵のゲルト・グロホフスキー、オルトルートのスサネ・レースマークはそこそこの出来。
しかし、今回の演奏の最大の収穫は、合唱の素晴らしさ。合唱指揮の三澤洋史も今回の公演にはかなり気合を込めたと見えて、ほれぼれするレヴェルに仕上がっていた。日本の合唱陣もここまでの力強い、また音楽性に優れた演奏ができる段階まで来たかと思うと頼もしくなる。
あとは、本番の完成に期待。全般としては素晴らしいゲネプロ公演だった。
帰りがけにオペラシティの『HUB』に寄って、エールとフィッシュ・アンド・チップスでオペラの余韻に浸った。
悲歌劇の紅涙醒めし夏の夕 素閑