新国立劇場シーズンスタートの公演『オテロ』のゲネプロに行った。
一言で言うと、久しぶりに見ごたえのある舞台を鑑賞できた、というところだろうか。
ゲネプロの常として、歌手は8~9割り方の力しか出さないで歌っているという感じだったが、受ける全体的な印象は強烈なものがあった。
特に、バリトンのルチオ・ガッロがイアーゴを好演。デズデーモナのノルマ・ファンティーニは、フル・ヴォイスで歌い上げる場と、か細くささやく狂乱の場のメリハリがいまひとつの感があるが、素晴らしい美しい持ち声で、十分、聴かせてくれた。タイトルロールのステファン・グールドの歌唱ももちろん素晴らしかったのだが、あの程度のテノールは、いまやあまたいるという感じで、いまひとつ印象に残らなかったところが残念。
舞台装置は、実際に水を張った掘割が使われ、それが悲劇の進行に実に効果的な役割を果たしている。そのほかのセットも手抜きが感じられず、新国のこの公演にかける意気込みやよし、というところか。また第一幕に打ち上げ花火が使われるなど、マリオ・マルトーネの演出も凝っていて、見ごたえがある。
衣装は、主に男性陣が19世紀の軍服姿。女性は17~18世紀の服装。ウルスラ・パーツァックはオーソドックスなデザインを前面に押し出した。
東フィルのピットもリハということで完成されていない箇所もあったが、平均的なレベルは高い。
とにかくゲネプロながら、キャスト、スタッフが全力を挙げて取り組んだというところがひしひしと感じ取れて、本番は今年の名舞台のひとつになることを確信した。
悲歌劇の憂いも知らずいわし雲 素閑