しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「深い疵」  ネレ・ノイハウス

2015年06月16日 | 読書
「深い疵」  ネレ・ノイハウス   創元推理文庫    
 TIEFE WUNDEN        酒寄進一・訳

2007年4月。
92歳の老人ダーヴィト・ヨーズア・ゴルトベルクが、自宅で殺されているのが発見される。
処刑の形で頭を撃ち抜かれ、血の中には“16145”の数字が書かれていた。
ゴルトベルクはユダヤ人で、戦後アメリカに渡りホワイトハウスで大統領顧問も務める。
たが、7か月前にドイツに戻りフランクフルト郊外に家を買って一人暮らしをしていた。
しかし、解剖の時に刺青が発見され、それはナチス親衛隊である事を示していた。
3日後、ゴルトベルクと同じようなスタイルでヘルマン・シュナイダーが殺害される。
数字の“16145”も残されていた。
シュナイダーの地下室はナチスを崇拝する物で飾られていた。
そして第3の殺人が起こる。
殺人を捜査するのは、ホーフハイム刑事警察署のオリヴァー・フォン・ボーデンシュタイン警部とピア・キルヒホフ警部。
ゴルトベルクとシュナイダーの繋がりから、85歳の女性実業家のヴェーラ・カルテンゼーにたどり着く。









ホロコーストを生き延びたユダヤ人が実はナチスの親衛隊だった。
思いがけない事実が分かり、事件はスタートする。
しかし上からの指示でその捜査は一旦打ち切りにされ、新たな殺人事件が起こる。
興味深く始まるが、その間に挿入される他の人たちの物語でなかなかストレートに物語を辿れない。
その登場人物も多く、少々混乱してこの人はどう言う関係だったかを確かめたり。
ドイツの名前や地名も1度では覚えきれない事もあり、ペースに乗るまで少々時間が掛かった。
しかしそれを過ぎると、その後は加速度的に面白くなる。
色々と意味ありげに、色々書いてあるし、何が重要なのかも気になりながら。
そして最後は一気に、ある人の伝記で真相が分かるのだが。
意外な人物だった。
しかしそれも振り返って読むと、ちゃんと伏線が張られている事が分かる。
どんな人物かも丁寧に書かれていた。
それぞれの人生を考えてしまう。
あまりにも悲惨な真相で、戦争が起こす悲劇というだけでは済まされない。
そして、それに影響された人たちの事も。
復讐したい気持ちが正当に感じられてしまう。

捜査する警察側の人間関係の話題なども、邪魔にならない程度にあり深みが増す。


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