しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「チヨ子」  宮部みゆき  

2011年11月11日 | 読書
「チヨ子」  宮部みゆき       光文社文庫

5編からなる短編集。

「雪娘」
6年間一緒だった小学校の同級生4人。
廃校になる前に集まろうということになった。
本当は同級生は5人。
橋田雪子は12歳の時に殺された。
前日の大雪の吹き溜まりで見つかった雪子。
集まる当日にも雪が降る。

「オモチャ」
商店街の角のオモチャさん。
そこのおじいさんがおばあさんを殺したと噂があった。
そのおじいさんは、あまり知られていないがクミコの父親の叔父だった。
何故そんな噂が流れるのか、父が話してくれる。

「チヨ子」
アルバイトで古びたピンクのウサギの着ぐるみを着ることになった、大学生のわたし。
ウサギの頭を被って見ると、そこには、クマの着ぐるみが見えた。

「いしまくら」
公園で殺された女子高生。
悪い噂と同時に、幽霊が出るをいう噂が広がる。
中学2年の麻子のボーイフレンドはその女子高生と幼なじみで、そんな人ではないと言う。
麻子は、汚名を晴らすために関係者にインタビューをして、それを自由研究レポートにまとめたいと父親に相談する。

「聖痕」
12年前、虐待から逃れるため、命の危険を感じたため、柴野和己は母親と同居の男を殺す。
14歳だったので少年Aとして、医療少年院と少年鑑別所に入った和己は8年間そこで過ごす。
和己は自分の事件がどう報道されたのかネットで調べるうち、思わぬサイトにたどり着く。
そこで和己は〈黒い救世主〉になっていた。


解説には、宮部みゆきさんのインタビューも。




超常現象が物語のメインにある物語。
幽霊が登場するのが多い。
実際に見たかどうかは分からないが、噂で見えると言われたら、見える気になるような。
幽霊は恨みを持って登場したり、親しい人に何かを伝えようとしたりする。
見るのは、その人の心理状態が左右する。
「雪娘」では“幽霊を見ることさえできない人間に成り下がった”というのがあった。
感情も殺してしまったから。
幽霊を見るのも、豊な感情が必要ということか。

「チヨ子」はちょっと変わった物語。
ピンクの着ぐるみウサギの目でみたら、自分はきっとたぬきの縫いぐるみに見えるだろう。
もうボロボロだけれども、一応忘れずに側に飾ってある。
子どもの時に大切なものを、大人になったと言う理由で卒業する必要はない。
自分が好きだと思うなら、大事な物がいつまでも大事でいい。
だから、何だか嬉しい物語。

「聖痕」は、解説にもあるように「英雄の書」と同じモチーフ。
神とは、何なのだろう。
結局は人が生きていく上に都合がいいように、作り出すものなのか。
一人で、“自分だけの神”を信じてもいいと思うが。
信じるだけでなく、利益になることを考えるから、変形していく。


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