散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

隠されたマリア像

2005-08-18 00:23:55 | 思考錯誤
私の相棒は建築関係に携わっており、現在とある学校の大改修工事を担当している。新しい建築基準法に乗っ取って非常階段などを設置するとか、兎に角大掛かりにあちこちの壁をぶち抜くとか、取り付けるとか、そんな話らしい。
そこには素敵な地下道があったり、梁が複雑にめぐらさた屋根裏部屋もあるという。ある日彼は梁に頭をぶつけて額に深い切り傷をこしらえていた。聞けば現場の人間はそこで一人残らずそこで頭をぶつけるといういわく付意地悪な梁らしい。
上に下にと階段、梯子を上り下りするので、その現場に行けば必ず筋肉痛になるという、私の想像では素敵な空間のようだ。
 ある日現場に行くと、古くからそこに勤める年配の主任教師がやって来て 
  「この壁のことなのだけどね。。ひょっとして、この壊す壁のあたりにはモザイクのマリア様が隠れているかもしれませんよ。」と言い出した。 
-何で又マリア様が隠れているのですか?ー 
  その学校はカトリック系であったのだが、後にプロテスタントと共存する事になっった。もともとカトリックなので壁にモザイクのマリア像をあしらうというのは当然なアイディアであったが、しかしプロテスタント派からマリア像に対する抗議がでたのだ。プロテスタントの子供達にそんな偶像を毎日拝ませるわけにはゆかないというわけらしい。
結局論議の結果、モザイク画の手前にもう一枚壁を作ってしまった。部外者から見ればそんなことで何故大騒ぎするのか、そこまですることも無いと思うのだが、難しいものだ。
 ところで、モザイクのマリア像が”隠れているあたりの壁”が取り壊された筈の日の夕方、私が 
  「マリア様現れた?」と聞くと、一瞬怪訝な顔をしてから「ああ、まだだった。来週の月曜あたりだと思う。」という返事だ。ちょっとがっかりしたが、私は月曜日を楽しみに待っていた。 別に学校のマリア様が由緒ある古いいわく付のモザイクというわけではない。
 しかし翌月曜日もまだ壁は壊されていなかったし、今もまだ話が進んでいない。こういう話って、気になるものだ。それにもしも見つかったらどうするのだろうか。多分、簡単に壊してしまうのだろう。
結末が気になるこの話を知りきれトンボで終わるのは上げ底の菓子折りを差し出したようで気まずいのだが、この気になる気分を四方にお裾分けしてしまいたかった。

聖バーフ大聖堂で買ったファン エイクのマリア像が印刷されている蝋燭。ゲントの土産
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一昨日からカトリック教会”世界若者の日”という大規模な催しが8月21日までケルン、ボン、デュッセルドルフの3市で開催されており、世界各国の若い者たちが集合している。
今日18日は、ヴァチカンからベネディクト新法王も挨拶にやってくるので、賑わいと緊張感は頂点に達する事だろう。一昨日のラジオによると、この祭りの間、多数の心理カウンセラーが待機しており、ドイツ自衛軍の医療担当官たちがサッカー場一つほどの仮設医療センターを立ち上げたりして予備している。
ケルンの美術館ではその祭りの一環で”キリストの視点”という展覧会を催しており、興味があるのだが今週末のケルンは若者で大騒ぎのごった返しであろうから、ほとぼり冷めるまで待つことにした。ベネディクト法王は前法王の様にいわゆるポップスター的に持て囃されることを快くは思っていないというが、カトリック教会も”世界のカトリック”としてアピールしなければいけないと気炎を上げているように見える。次回の”祭り”はシドニーで行われる。