引き続き天気も良く散歩がてらにケルンに向った。
ケルン大聖堂の地下駐車場から地表に顔を出すと広場がまぶしい。秋らしい濃い目の色合いに変化した陽光が広場を満たしているなか、いつもながらに賑わう観光客、インラインスケートでアクロバット走行の訓練に励む若者達、だみ声でわめくように歌うパンクの一群、バッハを弾くチェロ弾き、ジャズを聞かせるグループ等が通行人を引き付けている。
今回の散歩はロマネスク教会巡りと目的を絞った。
ケルン中心部には12のロマネスク教会が残っている。まず最初に向ったのは聖チェチリア教会だ。
入り口付近
聖チェチリアは音楽守護聖人である。教会としての役割は既に終了しているが、改修され、今では中世美術館に変身している。小振りで手ごろなサイズという事もあるが、かつては教会であった“場”の持つ静謐さが実に心地よい美術館である。中に私の好きな。観音像かと見まごうような雰囲気を持つマリアと洗礼者ヨハネ像があったり、ほほえましい聖人像が並んでおり、ここでは外の雑踏を忘れさせる静かな一時が得られる事請け合いである。
次に出向いたのは聖十二使徒教会だ。
ドアを潜ると薄くらい中に窓からすっと差し込んだ陽光が、そこに立ちどまり冊子を読みふけっている尼僧を包んでいたのが絵のようで印象的であった。
残念ながら聖障がしまっており、祭壇部まで近寄ることは出来なかったのは残念だ。香煙の香りが暗闇の中にしっとり沈んでいる。
聖十二使徒教会を出て、又しきり歩き始める。
ファン・エイクの古い画集が開かれた古本屋のショウウインドウやアンティック商をひやかしながら歩いてゆくと聖ゲレオン教会に辿り着いた。中に入るとすぐにミケランジェロのピエタを手本に作られた像が1897年に増築された金色のチャペルの中に見える。
教会堂入り口両脇には情けない顔のライオン達が悪を追い払っているらしい。ライオンたちの許しを得て中に入ると、いきなり万華鏡の中に頭を突っ込んだかのような色の饗宴、花火のように華やかなステンドグラスを通して落ちる光が床面や壁に踊っている。
1945年ローマ時代の建築物上に建てられたこの教会の基礎を発掘している最中、礎石から345年代の金貨が出てきたそうだ。なかなか立派な建造物があったらしいことがわかったが、如何なる類の建物かは不明ということだ。
堂内は薄暗くどこか劇場のような華やいだ雰囲気を感じてしまうが、祭壇部は数段高くなっておりそこからは明るくシンプルに作られているように見えた。 ”見えた”と言うのは、残念ながら見学申し込み無しには立ち入れないようになっていたからだ。先日見学したアルテンベルクの清楚なステンドグラスに比べて少々毒々しいくらいに派手な窓はそれほど古いものではないようだが、しかし修復以前の写真を見ればもともとの窓も大体似たり寄ったりの雰囲気を持っていたように見えた。
さて、ライオンに挨拶をして外に出る。
今だ賑やかな街中を大聖堂に向って歩く。相変わらず賑わっている人中を縫うように歩く。そういえば長い事大聖堂をのぞいていない。ケルンにはたびたび友人知人を訪ねてくる機会も多いのにいつも素通りしてしまうこの威圧的なゴシック大聖堂に、ロマネスク巡礼ラインから脱線するが、勢いついて飛び込んだ。
ゴシック様式の建築を代表するかの様な厳しい堂々とした外観は常に工事現場のように修復作業等が行なわれている。この大聖堂が完成する暁には世界は終局を迎えるだろうとも言われているくらいだから完成されないでいる事は世のためかもしれない。
そして入り口を潜るとなんといってもこの大きさには圧倒される。左右前後のステンドグラスも圧巻だ。美しい色の調べに魅せられて首がカクッっと後ろに反ったまま戻らなくなるのではないかと思うほど眺めて歩いた。
実際その所為で未だ肩首が凝っている。
さて次回は何件回れるものか?次のケルン行きはまだ未定であるが、楽しみは少しずつと言うところか。