散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

千羽鶴

2011-04-02 18:37:00 | 思考錯誤





先週の事。
もうこれ以上震災の情報を見続けると何かが外れてしまいそうになっていた日の夕方、
友人の展覧会のオープニングに顔を出した。
しかし震災の事、原発の話題が始まるので、折角出掛けたものの間もなく帰りたくなっていた。
朦朧とした頭を後ろ手に引きずって、そろそろりと帰ろうとしていたところで、
気がつくと画廊の近所に住んでいるらしい見知らぬ"おじさん”に捕まっていた。
"おじさん”は日本の被災者への支援を何かしたいらしく、折り紙の千羽鶴を折るプロジェクトを立ち上げたいと言う。
地元の学校で子供達に折って貰い、それを配って有志から募金を集めるというのだった。
いづれにせよあやふやな思い付きだったが、実行するにあたって協力を頼まれた。
近所のよしみで何かできることがあれば。。と口をもぐもぐさせていると、
ちょうど居合わせた知人も一緒にずるずると引きずりこまれた。
さて、昨日はその会合で先立ての画廊に集合した。
”おじさん”は年金生活の暇を大いに活用して私たちを振り回そうとたくらんでいる。
私は私のプロジェクトを進めているので貴方の活動を全力援護できないと釘を刺しても、相手は豆腐で出来ているのか釘なぞ刺さりはしない。
そのうえ理論的に物事を取り進めることの出来ない人らしく、一つの質問を投げても答えはきちんと帰ってこない。
ゆがんだピンポン球を壁にぶつけたらこんな感じだろう。
「ちょっと待って!質問に答えてもらってませんよ!」というと
「そんなことはないでしょう?」と目を丸くするので最初から質問を繰り返すと、
やっと思い出すものの、ピンポン球はゆがんでいるので、あっちの方にこっちのほうへと話が飛んで、見えなくなる。
私は結局同じ質問を3回繰り返してやっと答えを貰い、結局話を進めるためのスタンスが違うのに気がついた。
途中デザイナー業を営む男性が加わったが、彼は独自のプロジェクトを進めようとしていたので、やはりなんだか話は上手く流れない。
彼が支援プロジェクトを立ち上げようと思いついたのは9つになる娘のおかげだった。
日本での震災のニュースに子供達は酷く心を痛め、日本の子供達に何かしたいのに何も出来ない無力感を悲しんでいる。
彼は日本の子供達に何かしてあげたい気持ちに加えて、それを思い悩むドイツの子供達が何かできる場を作り、
その気持ちを解決してあげたいという趣旨を語った。
震災は遠い国の事ではあっても、そうやって生活の中に現実感を伴って入り込んできている。
それは兎も角、”おじさん”の頭の中は少々混乱が生じており巻き込まれた回りのものは戸惑いながらも話は進行し、
地元の学校3~4校で子供達が千羽鶴を折ることになり、
地元の広告掲示板に子供達が鶴を飾ることになり、
子供達と市場の広場で鶴とメッセージを道行く人に渡しながら募金を呼びかけることとなり、
そのプロジェクトの呼びかけの為に来週の月曜日にプレスインタヴューをすることになり、
配るチラシに折鶴の写真が欲しいというので私が撮ることになり、
これでいいのかなあ~というほどにきちんと物が決まっていないながらどんどん流れて行く話しに
私はついてゆけるのか不安なのであった。

おじさんは
「私たちの気持ちを乗せて日本に鶴をとばすということだよ。ところで、日本はどっちだっけ」と
空を遠く見上げたりしている。

イニシャティーヴ「飛ぶ鶴」はかろうじて舞い上がる。

まあ、いいか。。。