海上撮影家が見た上海2

上海で撮影活動をしている海原修平のBlog。「海上」とは上海の逆で、新しい上海という意味。更新は不定期。

GFX50とオールドレンズ

2022-04-13 | GFX+オールドレンズ

Hektor13.5cm f4.5+GFX50R  f8で撮影

 

カメラのレンズの話 ロックダウン中の部屋の中で

 私が上海に来る前に人物を撮影する時の8x10カメラで常用していたレンズは、KodakのCommercial Ektarがメインだった。このコマーシャルエクターはアメリカ製のレンズで、前世紀のプロや作家の御用達のレンズだった。このレンズの描写は、ほどよいシャープネスでコントラストはやや低くトーンの繋がりが良く軟らかい描写で、ピントが合った部分からのボケ足がなだらかなのが特徴だ。ほどよいシャープネスとは、Apoタイプのレンズのように、人物のまつ毛が針の先を向けられたような描写ではなく、しっとりとまつ毛の柔らかさが表現できるという事。このコマーシャルエクターを一言で言うと、収差をほどよく残しコントラストや解像度をバランス良くまとめたレンズ設計と言い切れる。その良さを理解しシャッタースピードの安定しないACMEのNo.3のシャッターを無理矢理使いこなしていた人が多かった。(このレンズは、他のシャッターに交換するとオリジナルの描写は期待出来ないから注意が必要)

そんなコマーシャルエクターのような描写のレンズに近いのが、ちゃんと手入れされたHektor13.5cm f4.5やElmar135mm f4(Tele Elmar135mm f4も含め)だと私は思っている。これらのレンズは焦点距離が長いのでライカのレンズの中でも人気がないが、GFXなどの中判カメラで使うと35mmフルサイズ換算で108mmになるので、35mmフォーマットのデジカメで使うより中判で使う方が使いやすい焦点距離になる。ただ、これらオリジナルのレンズをそのままGFXで使うとケラレが発生するので、前玉をオリジナルの鏡胴から外しVisoアダプター「16464K(OTZFO)と16472(OTSRO)リング」を併用する必要があるが、このアダプターに交換する事で、最短撮影距離が短くなるので物撮りにも使えて万能のレンズになるのだ。

これらレンズに惚れ込むと同じVisoアダプター「16464K(OTZFO)」と共用出来るElmar65mm f3.5とElmarit90mm f2.8(前玉が外せる初期タイプ)が欲しくなる人も多い。この65mmと90mmもヘクトール同様に素晴らしい描写をしてくれるので、私はViso三兄弟と勝手に名前を付けて愛用している。そして、ズミクロン50mmよりエルマー50mmの描写が好きな人にもお勧め3兄弟だ。では、国産のレンズはどうかというと、旧ミノルタのRokkorを筆頭にペンタックスのTakumarも好きだ。また、オールドレンズの雰囲気を残して設計しているコシナのVoightlanderレンズの一部も常用している。フジ純正のGFレンズもたまに使うが、それを使う場合はRAW現像時にシャープネスを落として現像している。

GFXでこれらオールドレンズを使いRAWで撮影しC1で現像しているが、フィルムシュミレーションは動画用のエテルナやプロネガスタンダードなどのネガ系に変換し軟調のデータを作り、PSで微調整をするパターンがほとんど。ただ、雨の日や太陽が何処にあるのかわからないほどの曇りの日は、PROVIAやASTIAなどのボジ系に変換する事もある。また、モノクロの場合はRAW現像時にもっとも軟調なエテルナに変換し、ハイライトとシャドウ部に余裕を持たせたデータ作りが基本でシャープネスはかけない。そして、最後はPSでモノクロ変換した後で微調整する事にしている。

同じ被写体を最新のデジタル用レンズと古いレンズで撮影し両方をプリントして壁に貼って比べて、どちらが長く写真を見ていられるかというと、私は古いレンズの写真の方に軍配を上げる。もし、AI搭載のロボットに現代のデジタルカメラ用レンズと古いHektorの描写を比べて、どちらを評価する?と聞いたら、きっと現代のデジタル用レンズを選ぶだろうな。

☆Viso関連の記事→コレコレ

 

 

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