本釣亭日乗2

2022.7.22にt-cupブログの閉鎖に伴い2011.4月からの記事をこちらに引っ越してきました。

冒険家たち

2011-06-07 01:24:00 | 
休日を利用して積ん読の山から2冊と書架から1冊を読みました・・・。



「青春を山に賭けて」
  植村直己    文春文庫


 二十ン年前、真夏の屋根の上で読み衝撃を受けた一冊。

 彼が人類初の五大陸最高峰登頂や犬ゾリによる北極点単独行などの偉業を成し遂げ得たのは人柄や運ももちろんあるが、何より夢と信念によるところだったのです。
(大学時代に全くの素人から山を始め、わずか10年後に五大陸最高峰制覇!)

 私のノンフィクシヨン好きもこの辺から始まったと思います。このジャンルは自分自身では決して体験したり触れたりすることのできない世界を疑似体験させてくれる、読書の大きな魅力を感じさせてくれる分野だと思います。


 今回、ほんと~に久しぶりにこの本を開いて、序章「青春の日々」を読んだだけでこの人のメラメラと音を立てるような登山(冒険)への情熱が伝わってきて目頭が熱くなしました・・・(毎回そうだったように思うんですが・・)










「巨魚を釣る」
  醍醐 麻沙夫  講談社 1996年


 著者(職業 作家)が磯からの大物釣りに興味を持ち、その道のエキスパートに随行しやがては自らも日本記録に迫るような大物を釣り上げる。

 この本の凄いところは、ほんと~に魚が釣れないところ!

 磯の大物釣りのありのままを克明に描いていると思います。(まさに苦行のような釣りです!)釣りに全てを捧げてないとホント o(゚Д゚)っ モームリ!

 エキスパートとして登場する大物師「山田 重雄」さんがカッコ良い!(見た目がということではなく、魚に対する姿勢というか考え方がですね。)

 巻末に著者による後書きのなかで、釣り好きで知られる大家の井伏鱒二が師匠の佐藤 垢石から教わった言葉が紹介されています。・・・  日本の釣りは昔は 一、姿 二、心 三、釣技だと。

 著者曰く、「釣技よりも心や姿を上位に置くのは、かつての精神主義のようで、私はそういう考えをいくらか敬遠していた。しかし、釣りという愉しみに奥が深いものがあるとしたら、それは姿や心に現れるものではないか?と、この紀行をしたあとで思うようになった。」と書いています。

 かっこえー釣りしてますか!? ミナサン!!









「最後の冒険家」
  石川 直樹  集英社 2008

 しがない町役場のオッサンが途方もない冒険心を秘めたまさに「冒険家」だったのだ。

 ひょんなことからこのオッサン(神田 道夫さん)に付き合わされる羽目になった息子ほども年の離れた著者が、2004年、手作りの熱気球で太平洋を横断する冒険に旅立つ!

 結果としてこのチャレンジは失敗に終わり、二人は生死の境をさまよう・・・。


 しぶとくリベンジに挑戦しようとするオッサンの冒険に若者はついていけなくなり、オッサンは単独で2008年2月、再チャレンジへ旅立つ・・・。

 オッサンは太平洋上で消息を立ち二度と戻ることはなかった。


 2004年の失敗の際、太平洋上に不時着した2人の乗ったゴンドラ(水道タンクを改造した手作りの操縦容器)は漂流の後パナマ船籍の貨物船に奇跡的に救助された。が、2人が船に乗り移る際ゴンドラは回収できず、そのまま漂流して行方がわからなくなってしまう・・。

 この時のゴンドラが太平洋を4年掛けて1周して2008年の8月に鹿児島県のトカラ列島にある「悪石島」に漂着する。(実は前の「巨魚を釣る」で釣行しているのがこのトカラ列島で悪石島や立神、御岳といった共通する土地がいろいろ出てきてビックリ。すごいシンクロです。)



 植村直己の本を久しぶりに引っ張り出したのも石川・神田両名が「冒険家・植村直己」をリスペクトしている記述があちこちに垣間見られたからだったのです・・・。


 著者はオッサンの最後となった冒険に同行しなかったことについて、そう書いてはいないがどうしても自責の念を持ってしまっているように感じました。
そのせいか、本当に夢を追った冒険家、直感で行動するタイプの最後の冒険家について書かれた当書にはどこか寂しげでもあり、そうせずにはいられなかった男の「性」さがが漂っています・・・。







サラリーマンは世を偲ぶ仮の姿。お父さんは本当の冒険家だったんですよ!