読書日和

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「月魚」三浦しをん

2007-06-16 19:41:40 | 小説
今日はかなり暑かったです
今年初めてTシャツ1枚で過ごしました。
そんな中、喫茶店で読んだのが「月魚」(著:三浦しをん)です。

-----内容-----
古書店『無窮堂』の若き当主、真志喜とその友人で同じ業界に身を置く瀬名垣。
二人は幼い頃から、密かな罪の意識をずっと共有してきた。
瀬名垣の父親は「せどり屋」とよばれる古書界の嫌われ者だったが、その才能を見抜いた真志喜の祖父に目をかけられたことで、幼い二人は兄弟のように育ったのだ。
しかし、ある夏の午後起きた事件によって、二人の関係は大きく変わっていき…。
透明な硝子の文体に包まれた濃密な感情。
月光の中で一瞬魅せる、魚の跳躍のようなきらめきを映し出した物語。

-----感想-----
「古書店」と聞くと、お客さんから本を買い取り、それを売りさばく、そのくらいのイメージしかありませんでした。
でも本の買取というのが、想像以上に難しいようです。
本の値段の査定には様々な要素があり、優れた目利きになるにはかなりの修行が必要みたいです。

『せどり屋』とは、古本屋で売っている本の中から、少しでも価値のありそうなものを買い、その分野を専門で扱う別の古本屋に売り飛ばす人たちのことです。
また、廃棄場に忍び込み、まだ店頭に並べられる本を掘り起こし、何食わぬ顔をして古本屋に売りにいき、その微々たる上がりで生活する。
業界の人たちからは、ゴミを漁り、後ろ暗い経路で手に入れた本を売る輩と言われ、いい顔はされない。

こういった普段聞きなれない仕事を題材にした小説なので、どんな展開になるのか全く想像もつかず、すごく興味深く読み進めました。
そして意外と本の買取にはお金がかかることがわかりました。
郷土史や民俗学の全集には何十万もの値がつき、場合によっては何百万になることもある…。
この小説では、買取額130万というのがあり、古書なのにそれほどまでの値がつくのがすごいと思います。
世に出回っている部数の少ない本ほど、希少価値が高まり、その本を必要とする人たちは高値で買い取るのです。
「月魚」の物語では、ある幻の本を巡る因縁が話の中心になります。
その本はこの世に1冊しか存在しない「獄記」と呼ばれる本です。
取引額は1億円にもなりました。
しかしこの本が、瀬名垣と真志喜の運命を大きく変えてしまったのです。

瀬名垣のフルネームは瀬名垣太一。
真志喜のフルネームは本田真志喜。
瀬名垣は本田のことを「真志喜」と呼ぶのに対し、本田は瀬名垣のことを「瀬名垣」と苗字で呼ぶ。
かつては「瀬名垣」ではなく「太一」と呼んでいたのに、なぜよそよそしい呼び方になってしまったのか…。
その答えは「獄記」の因縁に隠されているのですが、さすがにそこは言えませんね
ミステリーの要素もあり、すごく面白かったです。
三浦しをんさん、やっぱりすごい作家です
機会を見てもう一度読み返してみたいと思います。
それではまた。

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