読書日和

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「回転木馬のデッド・ヒート」村上春樹

2007-06-22 22:46:00 | 小説
今回ご紹介するのは「回転木馬のデッド・ヒート」(著:村上春樹)です。

-----内容-----
現代の奇妙な空間―都会。
そこで暮らす人々の人生をたとえるなら、それはメリー・ゴーラウンド。
人はメリー・ゴーラウンドに乗って、日々デッド・ヒートを繰り広げる。
人生に疲れた人、何かに立ち向かっている人……、さまざまな人間群像を描いたスケッチ・ブックの中に、あなたに似た人はいませんか。

-----感想-----
この本は短編集なのですが、どれも実際にあったことがモデルになっています。
各短編の当事者たちは村上春樹さんとふとしたきっかけで会い、不思議な体験を語っています。
短編の内容は以下のとおりです。

はじめに・回転木馬のデッド・ヒート
レーダーホーゼン
タクシーに乗った男
プールサイド
今は亡き王女のための
嘔吐1979
雨やどり
野球場
ハンティング・ナイフ


「はじめに・回転木馬のデッド・ヒート」には、村上春樹さんのこの本への思いが書かれています。
正直ここを読んでいるとき、最後まで読めるか不安になりました
何やら哲学的な書き方になっていたのです
全編この書き方だったら読むのが大変だな、と思いましたが、そこは村上春樹さんだけあって、いらぬ心配でした。
「レーダーホーゼン」を読み進めていくうちに、村上春樹さん特有の文章のきれいさに引き込まれていきました。
そして特に面白かったのが「プールサイド」です。
冒頭の文をご紹介。

35歳になった春、彼は自分が既に人生の折り返し点を曲がってしまったことを確認した。
いや、これは正確な表現ではない。正確に言うなら、35歳の春にして彼は人生の折りかえし点を曲がろうと決心した、ということになるだろう。


この人は、最初から35歳の誕生日を自分の人生の折り返し点にすると決めていました。
「20歳を過ぎた頃からその<折り返し点>という考え方は自分の人生にとって欠くべからず要素であるように彼は感じつづけてきた。」とあります。
私はこれってすごい考え方だなと思いました。
わずか20歳で、自分の人生は70年で終わると考え、35歳を<折り返し点>と決めてしまうなんて…。
私も過去にそんなようなことを考えたことがあったかなと思い、振り返ってみましたが、人生の折り返し点を何歳にするか考えたことはなかったです。
それとは別に、年を取るのが嫌だなあと思う時期がありました。
16~20歳くらいのときが特にそうだったと思います。
今も思ってはいますが(笑)
やはり、若さは貴重なものだと思います。
年を取るにつれて、だんだん夢がなくなっていくので、せめて若いうちは色々な可能性にすがりたい、という気持ちでしょうか。
私はそんな感じで、「年を取るのが嫌だ」と思うことが多いので、この主人公のように人生の折り返し点を考えたりはしたくないですね。
いずれは考える日がくるのでしょうが…。
少なくとも今は毎日を大切にしていきたいと思います。

そんなわけで、この短編集は読んで正解だったと思います。
どの短編も想像以上に奥の深い話で、面白かったです。
それではまた。

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