読書日和

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「死神の精度」伊坂幸太郎

2008-03-24 21:37:18 | 小説
今回ご紹介するのは「死神の精度」(著:伊坂幸太郎)です。

-----内容-----
①CDショップに入りびたり
②苗字が町や市の名前であり
③受け答えが微妙にずれていて
④素手で他人に触ろうとしない
そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。
一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。
クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。


-----感想-----
この作品、最初はシリアスな内容をイメージしていたのですが、読んでみると軽快なタッチで読みやすかったです。
主人公は千葉という名の「死神」。
この千葉の感性が人間とずれていて、普通に会話をしている場面でギャグのような受け答えをすることがあります。
例えば、「雪男」を「雨男」の同類と勘違いしたり。
ビーフステーキを見て「死んだ牛はうまいのか」と尋ねたり。
人間にとって当たり前のことが、千葉にとってはよくわからないことなのです。
でもこのおかげで、会話がかなり面白くなっています
今回の作品も会話の軽快さは健在でしたね。

千葉は、対象の人間を一週間観察して、死んでもいいと判断した場合は「可」を、今回は見送ろうと判断した場合は「見送り」を、「調査部」に報告します。
調査部というのは、死ぬべき人間をピックアップし、千葉たちに観察させる調査機関のようなものです。
でも「見送り」になるのはごく稀で、ほとんどの場合「可」になります。
「可」になると、八日目に対象者は何らかの要因で死んでしまいます。
死因までは設定できないので、千葉たち死神は、対象者がどのような最後を迎えるのかを見届けます。
ここまでが、死神の仕事です。

この作品は六つの短編で構成されていますが、今回の伊坂作品では短編どうしの絶妙なリンクが面白かったです。
ある短編で登場した人物が、別の短編では年寄りになって登場したりします。
また、ある短編でヴォーカリストの才覚を見出された女性が、別の短編ではすでにCDを出していたり。
その場面に遭遇したとき、「上手い!」と思いました
やっぱり伊坂さんはこういうのが上手いです。
作品の中で時間が経過しているのに、読んでいてそれを全く感じませんでした。
それだけに、そのリンクに遭遇すると時間が経過していることがわかって、ほんとに意表をつかれた気がします。
そして「重力ピエロ」の春君も登場していました。
時間軸は、連続放火事件が起きる少し前のようです。

今回の伊坂作品も面白かったです。
次は「グラスホッパー」か「アヒルと鴨のコインロッカー」を読もうと思います。
それではまた

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