読書日和

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「仏果を得ず」三浦しをん

2008-04-05 22:50:39 | 小説
今回ご紹介するのは、「仏果を得ず」(著:三浦しをん)です。

-----内容&感想-----
「仏果を得ず」は、文楽(ぶんらく)という世界を舞台にしています。
文楽は、簡単にいうと人形劇のことです。
物語を語る大夫(たゆう)、三味線、人形遣いの三つの役で人形劇を構成します。
主人公は30才の大夫・健(たける)。
笹本銀大夫(ささもとぎんたゆう)という人間国宝の弟子です。
この健が、文楽の世界で一人前の大夫を目指し頑張っていきます。

登場人物たちは関西弁で話す人がほとんどでした。
本編中でそれとなく書かれていましたが、文楽はもともと大阪の芸能とのことです。
健は東京の出身なのですが、意識して関西弁を使うようにしています。
でも焦ったりして気持ちが動揺すると、元の東京弁に戻ってしまうようです。
地方から東京に来た人が意識して標準語を話すのはよくありますが、その逆は珍しいなと思います。
健の文楽への情熱がわかるエピソードでした。

健は、師匠に言われ三味線を担当する鷺澤兎一郎(さぎさわといちろう)と組むことになります。
文楽の世界では、大夫と三味線は夫婦のような関係です。
この二人の息が合うか合わないかで、人形劇の出来が決まってしまいます。
でも鷺澤兎一郎は文楽の技芸員たちの間では「実力はあるが変人」と言われ、避けられ気味な存在。。。
そんな兎一郎とうまくやっていけるのか、健は不安に思います。
それでも練習を重ねるうち、少しずつ兎一郎も心を開いていきます。
普段会話らしい会話をしない兎一郎も、健にはある程度会話をしてくれるようになったのですが、実は兎一郎には意外な過去があったのです。
この辺りの人間ドラマは、さすが三浦しをん先生だなあと思います
すごく濃密な人間ドラマでした。
健の師匠・銀大夫も兎一郎の過去に関わっているのが以外でした。
さらに、この二人には驚きの事実があったりして、読んでいてビックリしました。

また、健の恋愛ドラマも面白かったです
ギャグタッチで描かれていて、これがこの作品の雰囲気をだいぶ柔らかくしてくれています。
思わず笑ってしまう場面が何度もありました。

あと、文楽という独特な世界が舞台なので、普段聞かない言葉が多くて新鮮でした。
いくつか例を挙げると、

裃(かみしも)…和服における男子正装の一種。通常は肩衣と袴を共布で作り、小袖の上から着る。
肩衣(かたぎぬ)…裃のうち、上半身の着衣を言う。
衣文掛け(えもんかけ)…衣服を保管する際に、それを掛けておくための道具。ハンガーのようなもの。

こんな感じで、とても和風な作品世界でした。
私は文楽の世界を知らなかったのですが、知らなくてもとても面白く読める作品でした
さすが三浦しをん先生です
興味を持った方はぜひ読んでみてください

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