今回ご紹介するのは「トリガール!」(著:中村航)です。
-----内容-----
「きっと世界で一番、わたしは飛びたいと願っている」
ひょんなことから人力飛行機サークルに入部した大学1年生・ゆきな。
エンジョイ&ラブリィな学生生活を送るはずが、いつしかパイロットとして鳥人間コンテストの出場をめざすことに。
個性豊かな仲間と過ごす日々には、たった1度のフライトにつながる、かけがえのない青春が詰まっていた。
年に1度の大会で、ゆきなが見る景色とは―。
恋愛小説の旗手が贈る、傑作青春小説。
-----感想-----
鳥人間コンテストにすべてを捧げた大学生の輝かしい日々を描く、”空飛ぶ”青春小説。
文庫本の帯に書かれていたこの言葉と、爽やかな表紙に好印象を持ち、読んでみたこの作品。
期待していた以上の、かなりの面白さでした
主人公は鳥山ゆきな。
一年浪人して、女子では珍しく工業大学の機械工学科に入学しました。
ゆきなは同じく機械工学科に入った和美とともに、人力飛行機サークル「T.S.L(チーム・スカイハイ・ラリアット)」の勧誘イベントに参加。
そこでものすごい熱意の勧誘を受け、最初からノリノリだった和美とともに、ゆきなは成り行きで「T.S.L」に入部することになりました。
ゆきなを熱烈に勧誘したのは高橋圭という二年生で(ゆきなは一年浪人しているため、年齢は同じです)、「T.S.L」では実際に人力飛行機に乗るパイロットをやっています。
「T.S.L」にはプロペラ班、翼班、フェアリング班、電装班、フレーム及び駆動システム班、庶務班、パイロット班と、色々な班があります。
人数も100人くらい居るものすごい大所帯のサークルです。
一つの人力飛行機を作るために一年がかりでこんなに大勢の力を結集させているというのは読んでいて驚きでした。
8月1日に滋賀県彦根市の琵琶湖で行われる「鳥人間コンテスト」を目指すにはそれくらい大規模な準備が必要ということを意味しています。
ゆきなは当初エンジョイでラブリィなキャンパスライフを送るつもりだったのですが、圭に勧められてトレーニングを始め、いつの間にか本気でパイロットになろうとしていました。
実際の人力飛行機では足でペダルを漕いで飛ぶので、来る日も来る日も、自転車を漕いだりトレーニングルームでエアロバイクを漕いだりして体力強化、脚力強化に努めていました。
ちなみに、「T.S.L」の人力飛行機は「二人乗り」を伝統としています。
重量のこともあり普通は一人乗りにするらしく、二人乗りの人力飛行機はかなり珍しいとのことです。
パイロット班には圭とゆきなの他にもう一人居て、それが坂場大志という男です。
その人から強靭な脚力と体力が要求されるパイロットは女には無理だと言われ、ゆきなは激怒。
坂場先輩への怒りからより一層トレーニングに励んでいました。
「T.S.L」が出場するのは「人力プロペラ機ディスタンス部門」で、今年製作している人力飛行機の名前は「アルバトロス」。
縦の長さは10m、翼を開いての横の長さは40mもあるかなり本格的な機体です。
8月1日の本番に向けて、パイロットが実際にアルバトロス号に乗ってのテストフライトがあります。
これも荒川の河川敷にある「ホンダエアポート」を借りての本格的なものです。
そこで各種のデータを取って、改良が必要な場所があれば改良し、完成度を上げていくというわけです。
しかしアルバトロス号の最初のテストフライトで事故が発生。
ふわりと浮いた機体に異変が起き、そのままバランスを崩して滑走路に激突。
乗っていた圭が大怪我を負ってしまい、8月1日の「鳥人間コンテスト」への出場が絶望的に…
当初「圭と坂場」がパイロットを務めるはずだったものが、急遽「坂場とゆきな」になります。
しかし坂場は二年前に1stパイロットとして出場した鳥人間コンテストでの大失敗のトラウマがあって、メインのパイロットである1stパイロットはもう絶対やらないと言って、自身がメインパイロットになるのを頑として受け付けません(ゆきなはサポート役の2ndパイロット)。
さらにゆきな自身、坂場のことが大嫌いだったので、こんなギクシャクしたコンビで大丈夫なのかと心配でした。
それでも、ゆきなの「飛ばない先輩は、ただのクソブタ野郎ですよ!」という紅の豚の名言みたいな一言が効いたらしく、坂場もようやく1stパイロットをやる決心をします。
ちなみに以前、二年前の大失敗のショックでしばらくパイロットから離れていた時、圭にも「飛ばない先輩は、ただのブタですよ」と言われてショックを受け、もう一度パイロットとして戻ってきた経緯があり、この紅の豚の名言は結構効き目があるようです(笑)
たった一回のフライトのために、パイロットは血の滲むような努力をしています。
人力飛行機におけるパイロットは「エンジン」であり、どれだけの出力を出せるかが飛行距離に大きく関わってきます。
目標としている出力を出せるようになるために、トレーニング計画を立て、毎日とんでもなくハードなトレーニングの日々です。
鳥人間コンテストはテレビで少し見たことがあるのですが、パイロットはこんなにハードなトレーニングを積んでいたのかと驚きました。
少しでも長く飛ぶために、極限まで努力を重ねています。
そして迎える、滋賀県彦根市、琵琶湖での鳥人間コンテスト。
無駄を削ぎ落とし、空を一度だけ飛ぶために設計された機体は、こんなにも情熱的で、こんなにも力強い。風の結晶を、光の結晶で繋ぎ合わせて生まれた機体は、こんなにも優しくて、美しい。
製作チームが仕上げてくれた渾身の機体を見て、ゆきなも坂場も胸が高鳴ります。
前方に青い空が見えた。こんな日が来るなんて思わなかった。わたしのこれまでは、全部、この日のためにあったんだと心から思えた。限界なんて関係ない。わたしのこれまでは全部、このフライトのためにあったんだ。
みんなの思いが詰まったアルバトロス号で琵琶湖の彼方へと飛んでいくゆきなと坂場のフライト、素晴らしかったです
これぞ青春だと思いました
ちなみに今年2014年の鳥人間コンテストは7月26日、27日にあり、まさにタイムリーな時にこの小説を読みました。
コンテストに出場する方々にはぜひ健闘してほしいと思います
※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
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-----内容-----
「きっと世界で一番、わたしは飛びたいと願っている」
ひょんなことから人力飛行機サークルに入部した大学1年生・ゆきな。
エンジョイ&ラブリィな学生生活を送るはずが、いつしかパイロットとして鳥人間コンテストの出場をめざすことに。
個性豊かな仲間と過ごす日々には、たった1度のフライトにつながる、かけがえのない青春が詰まっていた。
年に1度の大会で、ゆきなが見る景色とは―。
恋愛小説の旗手が贈る、傑作青春小説。
-----感想-----
鳥人間コンテストにすべてを捧げた大学生の輝かしい日々を描く、”空飛ぶ”青春小説。
文庫本の帯に書かれていたこの言葉と、爽やかな表紙に好印象を持ち、読んでみたこの作品。
期待していた以上の、かなりの面白さでした
主人公は鳥山ゆきな。
一年浪人して、女子では珍しく工業大学の機械工学科に入学しました。
ゆきなは同じく機械工学科に入った和美とともに、人力飛行機サークル「T.S.L(チーム・スカイハイ・ラリアット)」の勧誘イベントに参加。
そこでものすごい熱意の勧誘を受け、最初からノリノリだった和美とともに、ゆきなは成り行きで「T.S.L」に入部することになりました。
ゆきなを熱烈に勧誘したのは高橋圭という二年生で(ゆきなは一年浪人しているため、年齢は同じです)、「T.S.L」では実際に人力飛行機に乗るパイロットをやっています。
「T.S.L」にはプロペラ班、翼班、フェアリング班、電装班、フレーム及び駆動システム班、庶務班、パイロット班と、色々な班があります。
人数も100人くらい居るものすごい大所帯のサークルです。
一つの人力飛行機を作るために一年がかりでこんなに大勢の力を結集させているというのは読んでいて驚きでした。
8月1日に滋賀県彦根市の琵琶湖で行われる「鳥人間コンテスト」を目指すにはそれくらい大規模な準備が必要ということを意味しています。
ゆきなは当初エンジョイでラブリィなキャンパスライフを送るつもりだったのですが、圭に勧められてトレーニングを始め、いつの間にか本気でパイロットになろうとしていました。
実際の人力飛行機では足でペダルを漕いで飛ぶので、来る日も来る日も、自転車を漕いだりトレーニングルームでエアロバイクを漕いだりして体力強化、脚力強化に努めていました。
ちなみに、「T.S.L」の人力飛行機は「二人乗り」を伝統としています。
重量のこともあり普通は一人乗りにするらしく、二人乗りの人力飛行機はかなり珍しいとのことです。
パイロット班には圭とゆきなの他にもう一人居て、それが坂場大志という男です。
その人から強靭な脚力と体力が要求されるパイロットは女には無理だと言われ、ゆきなは激怒。
坂場先輩への怒りからより一層トレーニングに励んでいました。
「T.S.L」が出場するのは「人力プロペラ機ディスタンス部門」で、今年製作している人力飛行機の名前は「アルバトロス」。
縦の長さは10m、翼を開いての横の長さは40mもあるかなり本格的な機体です。
8月1日の本番に向けて、パイロットが実際にアルバトロス号に乗ってのテストフライトがあります。
これも荒川の河川敷にある「ホンダエアポート」を借りての本格的なものです。
そこで各種のデータを取って、改良が必要な場所があれば改良し、完成度を上げていくというわけです。
しかしアルバトロス号の最初のテストフライトで事故が発生。
ふわりと浮いた機体に異変が起き、そのままバランスを崩して滑走路に激突。
乗っていた圭が大怪我を負ってしまい、8月1日の「鳥人間コンテスト」への出場が絶望的に…
当初「圭と坂場」がパイロットを務めるはずだったものが、急遽「坂場とゆきな」になります。
しかし坂場は二年前に1stパイロットとして出場した鳥人間コンテストでの大失敗のトラウマがあって、メインのパイロットである1stパイロットはもう絶対やらないと言って、自身がメインパイロットになるのを頑として受け付けません(ゆきなはサポート役の2ndパイロット)。
さらにゆきな自身、坂場のことが大嫌いだったので、こんなギクシャクしたコンビで大丈夫なのかと心配でした。
それでも、ゆきなの「飛ばない先輩は、ただのクソブタ野郎ですよ!」という紅の豚の名言みたいな一言が効いたらしく、坂場もようやく1stパイロットをやる決心をします。
ちなみに以前、二年前の大失敗のショックでしばらくパイロットから離れていた時、圭にも「飛ばない先輩は、ただのブタですよ」と言われてショックを受け、もう一度パイロットとして戻ってきた経緯があり、この紅の豚の名言は結構効き目があるようです(笑)
たった一回のフライトのために、パイロットは血の滲むような努力をしています。
人力飛行機におけるパイロットは「エンジン」であり、どれだけの出力を出せるかが飛行距離に大きく関わってきます。
目標としている出力を出せるようになるために、トレーニング計画を立て、毎日とんでもなくハードなトレーニングの日々です。
鳥人間コンテストはテレビで少し見たことがあるのですが、パイロットはこんなにハードなトレーニングを積んでいたのかと驚きました。
少しでも長く飛ぶために、極限まで努力を重ねています。
そして迎える、滋賀県彦根市、琵琶湖での鳥人間コンテスト。
無駄を削ぎ落とし、空を一度だけ飛ぶために設計された機体は、こんなにも情熱的で、こんなにも力強い。風の結晶を、光の結晶で繋ぎ合わせて生まれた機体は、こんなにも優しくて、美しい。
製作チームが仕上げてくれた渾身の機体を見て、ゆきなも坂場も胸が高鳴ります。
前方に青い空が見えた。こんな日が来るなんて思わなかった。わたしのこれまでは、全部、この日のためにあったんだと心から思えた。限界なんて関係ない。わたしのこれまでは全部、このフライトのためにあったんだ。
みんなの思いが詰まったアルバトロス号で琵琶湖の彼方へと飛んでいくゆきなと坂場のフライト、素晴らしかったです
これぞ青春だと思いました
ちなみに今年2014年の鳥人間コンテストは7月26日、27日にあり、まさにタイムリーな時にこの小説を読みました。
コンテストに出場する方々にはぜひ健闘してほしいと思います
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