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島本理生さんの「夏の裁断」という小説がこの本を最後まで読む力を与えてくれました。
今回ご紹介するのは「ユング心理学入門」(著:河合隼雄)です。
-----内容&感想-----
興味のあったこの本をついに読んでみました。
しかし内容は今まで読んできたユング心理学の本よりも大幅に言葉が難解になりしかも抽象的でさらに文章量も多かったです。
これまでにユング心理学の本は次の4冊を読んでいました。
「ユング名言集」カール・グスタフ・ユング
「面白くてよくわかる! ユング心理学」福島哲夫
「ユング心理学でわかる8つの性格」福島哲夫
「ユング心理学へのいざない」秋山さと子
「面白くてよくわかる! ユング心理学」
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この本は見開き2ページのうち右側に文章、左側にイラストという形を採っていて、ユング心理学初心者にも分かりやすくて読みやすかったです
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「ユング心理学でわかる8つの性格」も同じくイラストが豊富で文章も分かりやすく、楽しく読むことができました。
「ユング心理学へのいざない」
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この本になると文章がやや難解になってきます
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しかしとても丁寧な語り口でイラストや写真も入れて理解をしやすくしてくれていて、ユング心理学の本を3冊読んで基本の考え方を理解していたので無事に最後まで読むことができました。
そして今回の「ユング心理学入門」です。
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なにこれ…と思いました
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カエル_どん引き
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しかしこの本を読むとユング心理学のことをこれまで以上に詳しく知ることができるだろうと思い読んでみました。
最初の第一章はかなり抽象的な書き方になっていて、言葉の意味を理解するのが大変でした。
第一章の中で著者が「二章から読んで、一章は最後に読んだほうが良いかも知れない」と書いていて、たしかにそうだなと思いました。
心理学では、ジークムント・フロイト(精神分析学を創始)、カール・グスタフ・ユング(分析心理学を創始)、アルフレッド・アドラー(個人心理学を創始)の三人が心理学三大巨頭と呼ばれています。
第二章ではフロイトとアドラーが取り上げられていて、両者の違いが書かれていました。
フロイトは一つの症状に対して、その症状について何か思い出すことはないか、あるいは、その症状が初めて起こったときについて何か思い出さないかと患者の過去について尋ねるのに対して、アドラーは、今悩んでいる症状がもしなかったら、何をしたいと思いますか、と未来に関する患者の態度をよく尋ねたとのことです。
これは「嫌われる勇気」(著:岸見一郎 古賀史健)というアドラー心理学の本でも書いていました。
第三章の「タイプ」は私がユング心理学の中でもかなり好きな部分です。
日本でも馴染みのある「外向」と「内向」という言葉はユングが初めて使ったとのことです。
ただし「あの人は外向的だから良い、あの人は内向的だから駄目」というような、日本社会で段々と形成されていった意味とユング心理学での意味には差があることに注意が必要です。
ユング心理学では心のエネルギーが外側に向かうか、それとも自分の内側に向かうかで外向、内向を考えています。
そして学校や企業では外向を良し、内向を悪しとする風潮があるのに対し、ユング心理学ではどちらも個性として認めています。
四つの心理機能(思考、感情、感覚、直観)の考え方はユング心理学の中で最も興味深いです。
「思考、感情、感覚、直観タイプテスト」という記事を書いているので、興味のある方は参考にしてみてください。
四つの心理機能それぞれに外向型と内向型があるので、人間の性格は大きく8つのタイプに分かれることになります。
「外向感情型の女性はパーティに欠かせない」とあり、たしかにそうだなと思いました。
場を盛り上げ楽しい雰囲気にしてくれる貴重な人です。
ただし感情機能のみで突っ走るとまずいことになり、それは他の機能についても同じことが言えます。
例えば思考機能のみで突っ走ると相手の感情を無視して合理性のみを追求することになり猛反発を買います。
また思考型は男性に多く感情型は女性に多い傾向があるとのことです。
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この図は思考、感情、感覚、直観の関係を表した図です。
自分の属する機能が「主機能」で、その両隣は比較的相性の良い「補助機能」であり、対面にある機能が「劣等機能」で最も苦手としている機能です。
私の場合は感覚型なので両隣の思考、感情とは比較的相性が良く、対面にある直観が苦手機能となっています。
「ある個人はその主機能をまず頼りとし、補助機能を助けとしつつ、その開発を通じて、劣等機能をも徐々に発展させてゆく。このような過程を、ユングは個性化の過程と呼んでいる」とのことです。
私も主機能をメインの機能として生かしつつ、補助機能はもとより苦手とする劣等機能も生かせるようになるのが理想だと思います。
コンプレックスという言葉を最初に使ったのはユングとのことです。
内向、外向もユングが最初に使った言葉ですし、心理学用語がごく普通に社会に浸透しているのは、これらの言葉にそれだけ心を捉えるものがあるのだと思います。
フロイトは無意識を単に抑圧されたものと扱ったが、ユングは無意識を肯定的に見ていたとのことです。
これが「原型」の考え方へとつながっていきます。
無意識という言葉も、ユング心理学によって日本でも馴染みのある言葉として使われるようになったようです。
子供を過保護にすると神経症になることがあるというのはかなり興味深かったです。
世話を焼きすぎ、近所の子達と遊ぶことも「危ないから駄目」と言っていたりすると、その子供が自我を成長させる妨げとなり、やがてその抑圧されたものが神経症として現れるとのことです。
ユングは人間の心をまず意識と無意識に分けて考えました。
次に無意識について、個人的無意識と普遍的無意識(集合的無意識)に分けました。
個人的無意識はその人自身の無意識ですが、普遍的無意識は人類全体に共通する無意識のことで、この考え方もかなり興味深いです。
全世界的に太陽を見れば神のイメージを持ち、大地を見れば偉大なる母のイメージを持ったりするのが普遍的無意識です。
例としてギリシャ神話ではアポロンが、日本神話では天照大神(あまてらすおおみかみ)が、太陽の神となっています。
「われわれの自我の制御力が弱まるときに、普段の性格とは逆の性格が現れることがある」とありました。
お酒を飲んだ時に普段とは違う人格になる人が例として挙げられていてなるほどなと思いました。
理想的な自分であろうとし、普段は自我の力で抑え込んでいるものがお酒によって抑え込む力が弱まり、普段とは全然違う性格として姿を現すようです。
夢には「夢物語だ」と否定的なニュアンスと「若いひとに夢を持たさねばならない」と肯定的なニュアンスの、両面性があるとありました。
また夢は相補的に作用し、暗い現実に晒されている時は明るい夢を見たりすることがあるようです。
そして夢は意識と無意識の相互作用で形成され、一見現実で直面したことを夢で見ているような場合にも、よく見ると登場人物が微妙に違っていたりし、そしてそれには自分の無意識が作用していたりします。
「ペルソナの形成に力を入れすぎ、それとの同一視が強くなると、ペルソナはそのひとの全人格をおおってしまって、もはやその硬さと強さを変えることができなくなり、個性的な生き方がむずかしくなる」とありました。
ペルソナは社会で生きていくためには必要ですが、飲み込まれてしまってはいけないなと思います。
教師の人が家に帰っても教師的な発言をしているような場合はペルソナによって本来の人格が覆われてしまっているので注意が必要です。
アニマ(男性の中にある女性的な部分)とアニムス(女性の中にある男性的な部分)についても詳しく書いてありました。
「アニマの特性が他人との協和であるのに対して、アニムスの特性はその鋭い切断の能力にある」とありました。
アニムスを発達させようとする(個性を際立たせる)女性が男性から敬遠される傾向にあるというのはたしかにそうかも知れないと思いました。
そしてアニムスがあまり発達していない女性のほうが男性から愛されたりちやほやされたりするとあり、私はおバカキャラの女性が男性からちやほやされるのはここに由来するのではと思いました。
ユング心理学では「自己(セルフ)」が核心をなしています。
自我が意識の中心であるのに対して、自己は意識と無意識とを含んだ心の全体性の中心とのことです。
西洋人が自我が強いのに対して東洋人は自己が強く、西洋と東洋で明確な差があるとのことです。
なので西洋人であるユングが東洋に来た時、自身が見つけ出した自己(セルフ)の概念を東洋人がごく普通に感覚的に身に付けていることに驚いたとありました。
これは日本から見ると、無理に西洋的な自我の強さを身に付けようとするより、自己(セルフ)に長けているという良さを上手に生かしたほうが良いのではと思います。
この本ではフロイトとアドラーの名前がよく出てきて、特にフロイトの名前はかなりたくさん出てきました。
「フロイトが研究者であり開拓者であるのに対し、アドラーの本質は教育者たることにあった」というのは興味深い言葉でした。
フロイトにも功績があるとあり、島本理生さんの「夏の裁断」という小説の根底にはフロイトの考えが流れていそうなので、フロイトの心理学の本も簡単なものを少し読んでみようかなと思いました。
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