85歳男性は2か月前の6月に、右肺癌疑いで内科クリニックから当院呼吸器科(当院の呼吸器科は非常勤のみ)に紹介された。この患者さんは、4年前にがんセンターで喉頭癌の手術を受けている(永久気管瘻)。今年の4月に受診した際には再発はないとされたそうだ(胸部の画像はとってない?)。当院では胸部CT検査を行っただけで、そのままがんセンターへ紹介になった。
がんセンターの呼吸器内科は受診したが、PSが悪く治療は困難と判断されて経過観察になった。細胞診はclassⅢで確診はついていないが、そこまで検査するまでもないということだろう。
その後、当院の呼吸器内科外来を受診したが、診断を確定させる必要がある、食欲不振は他に原因も疑われるので精査すべき、といわれたそうだ。家族の希望は積極的な検査・治療ではなく、病状が悪化した時に入院させてほしいというものだった。それで内科に話が回ってきた。食事がとれなくなっているというので、特に入院してもらうことに問題はない。もともと痩せているというが、一層るいそうが目立つ。認知症で、点滴を自己抜去しそうだ。
胸部X線・CTを再検すると、2か月の間隔だが、思ったより進行していた。空洞を形成する肺腫瘍で、喫煙者(喉頭癌の手術まで)なので、普通に考えて扁平上皮癌だろう。喀痰細胞診の再検くらいはできそうだ。気になって検査した抗酸菌塗抹は陰性だった。肺真菌症なども鑑別になるのだろうか。
白血球数20400・CRP11.6と上昇していて肺炎も伴っているようだ。喀痰培養を提出して、肺炎に対する抗菌薬と点滴で経過をみることにした。胸腹部CTで明らかな転移巣(癌であれば)はなかった。