なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

尿培養で黄色ブドウ球菌

2018年09月08日 | Weblog

 老年期認知症の90歳男性が誤嚥性肺炎で入院していた。抗菌薬投与で肺炎自体は軽快治癒した。ST介入で嚥下訓練をしていたが、経口摂取は難しいと判断された。

 当院の嚥下訓練は期間が長く、かなり粘って行われている。地域の基幹病院で嚥下は無理を判断された患者さんが回されてきて、当院では経口摂取(嚥下調整色2~3程度だが)ができるようになった患者さんもいる。入院期間を長くとれる病院の利点だと思う。

 90歳ではあるが、手足は力強く動かしている。末梢からの点滴は何人かがかりで下肢から行っていた。上肢からでは手で殴られてしまう危険があった。家族と相談すると、「胃瘻造設は無理だろう、高カロー輸液は下肢からなら可能ではないか」と言われた。どこかの病院の先生から聞いていたようだ。

 下肢からCVカテーテル挿入といっても確実にできるかどうかわからないとお話した。病棟看護師4名で抑え込んで、何とか右大腿静脈から挿入できた。長期に維持できる体制になった。当地には家族が誰もいないので、家族の希望する地域の認知症専門の病院に申し込んで、転院待ちになった。

 2週間後に転院が決まったが、発熱してしまった。明らかな肺炎はなく、おそらくカテーテル関連血流感染と判断された。カテーテルを抜去するしかない。ただ本当にやっと挿入したカテーテルなので、別の場所から再挿入できる保証がない。

 細菌検査室から、血液培養2セットのうち1セットからグラム陽性球菌が出ていると報告がきた。やっぱりそうかと思っていると、同時に提出した尿培養から黄色ブドウ球菌(MSSA)が検出されたとも報告が来た。尿培養から黄色ブドウ球菌が出たということは、血流感染(菌血症)から尿へ混入している。もう抜去するしかない。

 数日末梢からの点滴で頑張れないかと看護師さんに相談したが、「到底無理です、抑えるので別の部位からCVカテーテルを挿入してください」と言われた。右大腿静脈のCVカテーテルを抜去して、また看護師4名で抑え込んで左大腿静脈から再挿入した(部位として好ましくはないが)。抑え込んでも小刻みに身体を動かされたが何とか入った。内頚静脈や鎖骨下徐脈からの挿入は到底無理だ(PICCも無理だろう)。

 カテーテル尖端の培養も提出したが、やはり黄色ブドウ球菌が検出された。血液培養も同じ菌と確定された。正しくは心エコーで心内膜炎のチェックが、腰椎MRIで化膿性脊椎炎のチェックが必要だが、検査は無理だ。

 認知症の超高齢者に無理やりCVカテーテルを挿入するのは日本だけかもしれない。ちなみに息子さんは法曹関係で対応が難しい方だ。転院前から、転院先の病院の悪口を言っていた。

 

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