なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

うつ病と思われる

2020年05月08日 | Weblog

 連休の終わりに、62歳代前半の男性が様子がおかしいとして救急搬入されていた。一人暮らしで現在仕事はしていない。数日前から、近所の人に様子がおかしいと思われていたそうだ。前日には、無断で近所の人の敷地内に入り込んでいた。

 その日も他所の家の敷地内に入り込んだりしている。橋の近くで長時間ぼおーっとしているのを近所の人が発見して、警察に通報した。受け答えがおかしいというので、救急要請されて、当院に搬入された。

 暑い日で、筋原性酵素の上昇があり、水分も取らずに長時間屋外にいたことから、熱中症として入院になった。頭部MRIで異常は認めなかった。日直は循環器科医で、内科当番の若い先生の担当になった。

 点滴で検査値の異常は軽快して、食事摂取もできた。入院後から不審な動きがあり、日中から夜間も病棟内を歩き回っていた。自分からは発言しない。問いかけても、小声でぼそぼそとしゃべるだけで、会話にはならない。看護師さんに注意されるとそれには従う。前日の夜間は体幹抑制になっていたが、自分ですり抜けていた(高齢者では抑制できるが、この年齢では無理)。

 そして昨日は、主治医と相談するため姉が病室に来ていた。急にモニターのコードで首を吊ろうとした。姉が大声を上げたので、あわてて病棟の看護師さんが行って止めたのだった。

 若い先生から連絡が来て、病室に行ってみた。患者さんは車いすに座ってうなだれていた。話かけると、小声で答えるが、まず「わからない」から始まる。こちらも小声で訊いた(春日武彦流?)。

 「死にたいと思うか」と訊くと、「もっと前に死ねばよかった」と言う。 「いつから調子が悪かったのか」と訊くと、最近ではなく「もっと以前から(昨年か数年前?)」と言う。身体的に困ることはない。(弟もいて、数年前から電話で何度も同じことを繰り返して言うの気にしていたそうだ)

 うつ病で自殺企図なので、精神科救急になる。地域の精神科病院に連絡したが、ここは精神科医が直接は出ない。まず精神保健士さんが出て、病状を聞いたうえで先生に相談してみますという。しばらく待って返事がきた。急性期を診る病室がないので、精神医療センターに相談して下さいということだった。 

 保健所の依頼で新型コロナウイルスのPCR検査が入っていたので、精神医療センターには若い先生に連絡してもらうことにした。今日は入院が立て込んでいて難しいが、翌日なら受け入れ可能、と言われたそうだ。他の精神科を探すのも難しく、一晩当院で経過をみて、翌日の転院搬送とした。

 姉がそのまま個室で付き添ってくれた。前夜に不穏でセレネース1A静注しているので、その日は(前日から使用していた)ベルソムラにデジレルを追加して、就寝前にセレネース1A静注を行った。なんとか一晩過ごして、転院となった。

 患者さんがまだ幼児の時に、母親が自殺している。姉は育児ノイローゼと表現していたが、その姉は母親の虐待で両下肢が不自由なのだった。こちらはうつ病とは違うようだ。

 

コメント
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