なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「皮膚疾患の診かたと診療のコツ」

2018年04月07日 | Weblog

 医師会の「皮膚疾患の診かたと診療のコツ」に行ってきた。マルホの共催なので、ファムビル・アメナリーフとヒルドイドの宣伝になる。

 帯状疱疹・単純疱疹の治療戦略

 HHVは1から8まであるが、HHV1がHSV-1、HHV2がHSV-2、HHV3がHZVになる。HZVは、初感染が水痘、潜伏感染は知覚神経節、再活性化が帯状疱疹。典型的な皮疹はわかりやすいが、伝染性膿痂疹・毛嚢炎と鑑別しにくいことも。神経の1分節に出るが、2分節で出ることや左右両側に出ることもまれにある。散布疹を伴ったり水痘のように全身に疱疹がある場合はウイルス血症を呈していて重症。基本的には知覚神経障害だが、まれに運動障害もある。

 抗ヘルペスウイルス薬は、ウイルスを死滅させる薬ではなく、ウイルスの増殖を抑制する薬。ゾビラックス・バルトレックス・ファムビルは腎排泄なので、腎機能(CCr)による投与量調整(減量)を要する。尿細管で濃縮されて結晶化する(尿細管障害)。血中濃度上昇によるアシクロビル脳症が起きる。また鎮痛薬としてロキソニンなどのNSAID併用による腎障害も考慮しなければならない。高齢者ではアセトアミノフェンが安全。

 新発売のアメナリーフ錠200mgは初めての肝代謝(糞便に排泄)の薬で、400mgを1日1回7日間投与(適応は帯状疱疹のみ)。脂溶性なので必ず食後に内服。空腹時では吸収が低下。抗ウイルス薬は症状が軽減しても規定の日数はきちんと服用する。

 外来のフォローは3~4日目と7~8日に行っているそうだ。神経痛が続く時は、神経障害性疼痛としてガイドラインに沿ってリリカ・サインバルタ・トリプタノールなどで治療する。抗ウイルス外用薬(アラセナ)は抗ウイルス薬の全身投与があれば不要。

 単純ヘルペスによる口唇ヘルペス・顔面ヘルペスも神経節でのHSVの再活性化が起きており、抗ヘルペス薬の全身投与が必要(軟膏だけはダメ)。

 ワクチンは、50歳以上で水痘ワクチン接種が可能。ワクチンを接種しても約半数で帯状疱疹が発症(高齢者ほど比率が高い)するが、軽度で済む。10年ごとに接種するのが好ましい。もうすぐ新しい帯状疱疹ワクチンが出るそうだ(有効性97.2%)。

 

 皮脂欠乏症の治療戦略

 角質の水分保持は、皮脂・角質細胞間脂質(セラミド)・天然保湿因子(細胞内)からなる。皮脂欠乏症は、皮脂欠乏性湿疹、貨幣状湿疹と悪化していく。指先に乗せた軟膏量1FTU(finger-tip unit)0.5gは、手のひら2枚分以上は伸ばさない(十分量を使用する)。FTUで示すと、頭部が2、上肢が3、手が1、体幹(腹側と背側それぞれ)が7、下肢が8、足が2FTU。塗布部位がてかるくらいが適切。

 皮膚保湿剤としては、ワセリン、尿素製剤、ヘパリン類似物質含有製剤(ヒルドイド)がある。ワセリンは単なる脂で、刺激はない。尿素製剤は保湿剤として十分ではなく、刺激がある。ヘパリン類似物質含有製剤は、吸湿(空気中の水分を)して角質層に水分を付与する。保湿性が持続して、刺激性が低い。保湿剤としてはヘパリン類似物質含有製剤が一番良い

 保険診療では、保湿剤の処方量は1回200gまでで、2週間おきに処方できる。不足分はOTCで補うしかないが、お勧めはKaoのキュレル(セラミド製剤)。

 皮脂欠乏性湿疹は、炎症があり保湿剤だけでは治らないので、ステロイドを加える。very strongのアンテベート・ネリゾナを使用しているそうだが、年齢が若い時や吸収率の良い部位ではステロイドの強度を下げる。

 外用薬の混合の時、保湿剤としてヒルドイドソフト軟膏(水の中に油)を使用する。クリームはダメ(水の中に油)。例として、ヒルドイドソフト軟膏+アンテベートを1:1。混合してもステロイドは弱まらない。むしろ混ぜると皮膚透過性が増す。

 経皮吸収剤のトラブル防止にも保湿剤を使用する。貼付剤の2割で皮膚トラブルのため休薬、中止している。刺激性接触性皮膚炎への対応・予防に保湿剤外用を使用する。EGFR阻害薬による皮膚症状(ざ瘡性皮膚炎、皮膚掻痒症、皮膚乾燥、爪囲炎)にも使用する。

 

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